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キヤリアは食品ロスを防ぐセンサープラットフォームをAWSで構築

進化を続けるAmazon ConnectとIoT クラウドと機械学習はあらゆる業界を刷新する

2020年12月08日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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 AWS re:Invent 2020の目玉の1つでもあるアンディ・ジャシーCEOの基調講演。コンピュート、データストア、機械学習に続いて、業界ごとの再発明というテーマではコンタクトセンターサービスの「Amazon Connect」と産業系向けIoTの新サービスを披露した。

AWSのアンディ・ジャシーCEO

15年前のコールセンターにはクラウドと機械学習がなかった

 ジャシーCEOの講演も後半となり、業界ごとの再発明というテーマに移る。今回、ピックアップしたのは、Amazon Connectがチャレンジするコンタクトセンターの革新だ。ジャシー氏は、「過去20~30年、多くのお客さまはコールセンターのソリューションには不満を募らせていた。高価で、コンサルティングも必要で、導入に時間もかかる。スケールアップ&ダウンも難しいし、システムも複雑だった。なにより、15年前はテクノロジースタックとしてクラウドと機械学習がなかった」と指摘する。

 レガシーなコンタクトセンターの再発明として、2017年からAWSが展開しているAmazon Connectになる。Webブラウザから簡単に利用できるコンタクトセンターサービスで、規模の拡大・縮小も容易で、従量課金制なのでコスト効果も高い。「最初からクラウド上に構築されており、MLも組み込まれている。だから、自動音声応答(IVR)や文字興し、センチメント(感情)分析などを機械学習の知識なしに簡単に活用できる」とジャシー氏は語る。

 Amazon ConnectはAWSのサービスの中で、最速の成長を遂げているサービスのうちの1つで、コロナ禍においてはユーザーが一気に5000社も増えたという。スタッフを集めなくても、コンタクトセンターのサービスのすべてがリモートから実現できるからだ。ジャシー氏は注目度の高いAmazon Connectの新機能について披露した。

 1つめは問い合わせを受けるオペレーターに対して、顧客が求める情報をリアルタイムに提示する「Amazon Connect Wisdom」だ。複数のデータベースから検索した製品やサービスの情報をリポジトリに格納しておくことで、関連情報を即座に提示。機械学習を活用した「Contact Lens for Amazon Connect」によって、会話内容から顧客の問題を自動検出し、次のアクションの推奨コンテンツを探し出すという。さらに必要な情報があれば自然言語で検索すればよい。

 また、顧客の詳細情報を格納し、パーソナライズドされたサービスを提供するための「Amazon Connect Customer Profiles」も発表された。使用中の製品やサービス、顧客の嗜好などを横断検索でき、Amazon Connectの情報と統合して提示する。SalesforceやServiceNow、Zendesk、Marketo向けのコネクターも提供される予定となっている。

 さらに、オペレーターの通話対応をリアルタイムに分析できる「Real Time Contact Lens for Amazon Connect」も発表された。従来は、終話後に分析していたが、Real Time Contact Lens for Amazon Connectでは、キーワードやセンチメント分析を元に、リアルタイムにアラートを発行する。「顧客が怒っていたり、2度と買わないなどのコメントがあれば、スーパーバイザーにアラートが飛ぶので、リアルタイムにコーチングするか、電話を替わることができる。もし電話を交代しても通話内容が書き起こされているので、顧客から問い合わせを繰り返す必要がない」とジャシー氏は語る。

通話対応中にアラートを出す「Real Time Contact Lens for Amazon Connect」

 オペレーターの作業効率を高める「Amazon Connect Task」では終話後に行なうCRMへの入力やフォローアップなどを支援する。空き状況やスキルにあわせて次に行なうべきタスクが表示されるので、抜け漏れが防止される。また、「Amazon Connect Voice ID」では機械学習による音声解析で電話をかけてきた顧客を識別する機能が提供される。ユーザーがオプトインすることで会話の冒頭数秒を解析し、デジタルの声紋データを生成し、次回のコール時に照合結果を利用できる。本人かどうかを口頭で確認しないで済むため、ナチュラルな顧客対応が可能になる。

 2017年に発表されたAmazon Connectだが、3年で既存のコンタクトセンター向けサービスを一気に凌駕するレベルにまで機能を強化してきた。これを実現できたのは、もちろんクラウドと機械学習の成熟度が大きい。「コールセンターは長い間、変わらずに提供されてきた。お客さまは不満を感じながらも使い続けてきた。だから、再発明されるべき領域だった」とジャシー氏。その上で、「すべての業界で再発明が起こる余地があり、今後必ず再発明されるはず」と語る。

食品ロスや医薬品の安全な輸送のためのキヤリアのチャレンジ

 再発明する業界の例として、ジャシー氏は自動車、ヘルスケア、メディア業界などを列挙。幅広いユーザーがAWSを利用しているとアピールした。そして、変遷著しい製造業の事例として、キヤリア(Carrier)のデビッド・ギトリンCEOが登壇する。

キヤリアのデビッド・ギトリンCEO

 空調設備メーカーの老舗であるキヤリアの創業は1902年で、先頃ユナイテッド・テクノロジーズからスピンオフして上場している。今回テーマにしたのは「コールドチェーン」と呼ばれる低温物流ソリューションだ。

 食品や医薬品の鮮度を落とさずにコンシューマーに届けるためには、エンドツーエンドでの適切な温度管理が重要になる。たとえば、エクアドルからアメリカにバナナを運ぶ場合、船やトラック、食品工場、倉庫などを経由するが、そのハンドオーバー(載せ替え)では必ず外気に触れることになる。「たとえばバナナは温度に敏感だ。1℃変わるだけですぐにダメージが来る」とギトリンCEOは語る。しかし、現状はエンドツーエンドでの温度管理が適切に行なわれていないため、食品の約1/3は食べられないまま廃棄される事態となっている。こうした食品ロスは世界経済に1兆ドルのダメージを与えており、廃棄で生じる温暖化ガスも全体の1/3を占めているとのこと。「なにより食品ロスが解決できれば、飢餓に苦しんでいる9億8000万の人たちに食料を与えることができる」とギトリン氏は語る。

 コンテナやトレーラー、倉庫に至るまで幅広い冷却システムを提供しているキヤリアは、AWS IoTやMLサービスを活用し、コールドチェーンを包括するセンサープラットフォームを構築した。たとえば、トラックのドアが長時間開け放たれないよう、コンテナ内の温度が変わらないよう、センサーでチェックすることができるほか、天気や交通データを見てトラックが到着するタイミングをあらかじめスーパーに知らせることも可能になる。もちろん、センサーを使えば、冷却システムの遠隔保守も可能になり、故障や障害を事前に検知することも可能になる。

 エンドツーエンドでのきめ細かい温度管理をコールドチェーンにおいて実現できればが、食品ロスの解消のみならず、コロナ禍で重要な医薬品の安全な輸送にも貢献する。ギトリン氏は、「これまでデータはサイロ化されていたが、すべてデータレイクに集約している。バナナが収穫されてからスーパーに至るまで、AWSのパワーを使うことでコールドチェーンをよりよく管理していく」と語る。

機械学習を組み込んだ産業向けソリューションが続々登場

 ここからジャシー氏は、工場や製造業の再発明につながる産業向けサービスをまとめて発表した。データ収集のみならず、マシンデータとコンピュータービジョンの領域において機械学習を組み込んだサービスとして提供する点が新しい。

マシンデータとコンピュータービジョン領域で新サービス

 「Amazon Monitron」はセンサー、ゲートウェイ、機械学習サービスから構成されるモニタリングソリューションで、メンテナンスを必要とする機器の異常を検知することができる。軸受けやモーター、ポンプ、ベルトコンベアなど幅広い回転装置で利用ができ、振動や温度の異常を検知。メンテナンスが必要かどうかを顧客に通知する。保守を担当するユーザー向けのモバイルアプリまで提供されるため、アラートの精度にフィードバックを与えることで、継続的な改善を行なえる。

 また、既存のセンサーやデータ収集サービスを使っているユーザー向けには、機器の異常を検出する「Amazon Lookout for Equipment」も発表された。圧力、回転数、流量、温度、電力などさまざまなセンサーデータをAWSに送ることで、モデルを構築し、予測結果を返すことができる。また、既存のセンサーデータをAWSに持ち込むことで、機械学習のモデルをカスタマイズすることもできる。

 さらに産業向けコンピュータービジョン関連も新製品が投入された。まずは既存のカメラを用いたエッジ向けアプライアンスの「AWS Panorama Appliance」と既存メーカーがカメラにコンピュータービジョンを埋め込むための「AWS Panorama SDK」を発表。また、AWSのコンピュータービジョンモデルを元に、製品やプロセスの異常や欠陥を検出する「Amazon Lookout for Vision」も発表された。「よい状態」の画像を30枚提供することで機械部品や製造製品を一貫して評価できるため、評価工場などでの目視検査の自動化・省力化を低コストで迅速に実現するという。IoTにおいても、インフラや基盤技術から、いよいよアプリケーション領域に軸足を移してきた印象だ。

 アスキーではAWS re:Invent 2020を引き続きレポートする。

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