組織体制を刷新、業界トップ企業のパートナー化で中小企業への浸透を狙うなどの新施策も
SAPジャパン、エコシステム拡大など中堅中小企業向け事業戦略を説明
2020年12月07日 07時00分更新
中堅メーカーのS/4 HANA Cloud採用理由は「将来のスマートファクトリー化」
ゲスト出席した古林紙工の古林雅敬氏は、将来的なスマートファクトリーの実現に向けてS/4 HANA Cloudを導入した同社の取り組みを紹介した。
1934年、大阪で創業した古林紙工は、菓子や食品、日用品といった紙パッケージのデザイン、印刷、加工まで一貫して手がけるパッケージ専業メーカーだ。国内/海外合わせ7社でグループを形成しており、グループ全体で従業員はおよそ700名、年商は170億円。東証2部上場の中堅企業である。
古林氏によると、同社では40年ほど前から“増改築”=カスタマイズを繰り返しつつ、独自開発の基幹システムを使ってきたという。しかし、業務プロセスの中では情報伝達手段として紙の書類や伝票が多く発行され、それを手入力するためにどうしてもタイムラグが生じた。「システム上のデータが今のものなのか、昨日や一昨日のものなのかわからず、担当者に確認しなければならない。そんな状況だった」(古林氏)。これでは最新の経営状況もわからない。
これまではバッチ処理的な考えだったものをリアルタイム処理に改めたい。またビジネス価値の源泉は現場で培われた紙工の独自技術にあり、管理面(バックオフィス)の技術は「われわれのビジネスのコアではない」(古林氏)。そう判断し、基幹システムの刷新を検討することになった。
「プロセスの可視化、そしてリアルタイム化という2つの要件があった。迅速な経営判断を行うためには、われわれがいまどういう状態なのかを理解できること、さらに集めたデータを分析し、これからどういう方向に行くのかという未来の予測精度を挙げることが重要な課題だった」(古林氏)
数年間、いくつもの基幹システムを検討したが、同社が求めていたような製品は見つからなかった。当初は「大企業向け、高価」というイメージで検討対象から除外していたS/4 HANAを検討してみたところ、「求めていたものがあった」ため採用することになった。同社では、2020年9月からS/4 HANAを採用している。
特に選択のポイントとなったのが、将来的なスマートファクトリー化への対応だという。単なる従来型のERPではなく、デジタル化に向けたプラットフォームとしての仕組みも網羅している点を高く評価したという。古林氏は、「導入にかかる投資額は他の製品よりも大きなものになるが、それで得られる価値と比較すれば、十分にペイするものと考えている」と語った。
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