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堅調な採用の理由、SAPの新たなビジョン“インテリジェントエンタープライズ”も紹介

ERPのあり方を変えつつある「S/4HANA」、SAPが現状を説明

2018年09月26日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 SAPジャパンは2018年9月25日、ERP製品「SAP S/4HANA」の企業採用状況や最新動向に関する記者説明会を開催した。今年5月の「SAPPHIRE Now」で披露した“インテリジェントエンタープライズ”ビジョンとS/4HANAの関係について解説したほか、S/4HANA最新版で拡充されたAI/機械学習などの新機能群を紹介した。

「インテリジェントエンタープライズ」ビジョンとそれを具現化するSAPソリューション群。上部中央の“デジタルコア”を担うのがS/4HANAだ

SAPジャパン 常務執行役員クラウド事業担当 宮田伸一氏

同 ソリューション統括本部 デジタルアプリケーション マネージャー 上硲(うえさこ)優子氏

同 デジタルエコシステム統括本部ビジネスイノベーション推進部長 服部貴志江氏

グローバルで8900社超が導入、新版ではインテリジェント機能を強化

 SAPでは、インメモリデータベースプラットフォーム「SAP HANA」上に構築されたERPであるS/4HANAを、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現するITソリューション群の中核をなす“デジタルコア”と位置づけている。

 SAPは発表の中で、S/4HANAのセールスについて「業種業態、企業規模、さらに既存/新規を問わない堅調な採用が続いている」と述べている。2015年の初版リリース後、今年6月末までに導入企業数はグローバルで8900社を超え、今年4~6月期には顧客数が前年同期比で41%増になった。同四半期にS/4HANAを契約した顧客数はおよそ600社で、うちおよそ40%がSAPにとっての新規顧客だという。

 SAPジャパン ソリューション統括本部 デジタルアプリケーション マネージャーの上硲優子は、S/4HANAは“真のリアルタイム経営”を支援する新たな特徴群を備えた次世代ERPをコンセプトとして登場した製品であり、このS/4HANAの特徴によって「顧客におけるERPの使い方も変わってきている」と説明する。

 S/4HANAがもたらした次世代のERPコンセプトとは、たとえば従来は分離されていた基幹業務(OLTP)と分析業務(OLAP)との統合だ。この統合によって、業務データの発生から分析、アクションまでを同一基盤上で処理可能になった。そのほかにも、中間テーブルやインデックスの生成を排除した「データモデルのシンプル化」、「データスループットの向上(リアルタイム化)」、ERP周辺機能の取り込みによる「ERPのシンプル化」といったコンセプトも掲げる。

S/4 HANAの開発コンセプト。かねてからSAPが提唱してきた“リアルタイムエンタープライズ”実現のために、旧来のERPが抱えてきた問題の解消を図った

 上硲氏は、S/4HANAが基幹業務と分析業務とを統合したことで「ERPの使い方も変わってきている、というのがSAPの認識だ」と語る。従来の分離環境ではPDCAサイクルの各ステップが別々の環境に分かれていたが、統合によってPDCAサイクル全体が単一基盤上でカバーできるようになった。

既存ERPにはない特徴を持つS/4HANAによって「ERPの使い方」が変わっている、と上硲氏

 「それでは、この次の段階で何が求められるようになるか。PDCAサイクルを回すうえで人手を介して実行していたステップを自動化し、時間を短縮していくという取り組みだ。自動化できるところは自動化したい、機械が判断できるところは任せてしまいたい。そこで求められる機能が、機械学習やAIである」(上硲氏)

 そのためS/4HANAでも、昨年から(S/4HANA 1709リリースから)機械学習などのインテリジェント技術を業務プロセスに取り込んでいく方向性で機能強化を図っている。先週リリースされた最新バージョン(1809リリース)でも、たとえば機械学習を利用した「見積変換率予測」「契約締結が妥当な品目の提案」といった業務機能が追加されている。たとえばこの「見積変換率予測」機能は、顧客からの見積依頼があった際、これまでの受注実績に基づいて機械が受注額を予測分析するものだという。

S/4HANAの初版(1511)から最新版(1809)までの主な機能強化。特に現在は機械学習の適用など「インテリジェント化」に務めている

“インテリジェントエンタープライズ”はなぜ日本企業に必要なのか

 SAPは、今年5月に米国で開催した「SAPPHIRE Now」において新ビジョンであるインテリジェントエンタープライズを打ち出した。このインテリジェントエンタープライズとは何か、なぜいま必要なのか、また日本企業にどう影響するのかについて、SAPジャパン 常務執行役員クラウド事業担当 宮田伸一氏が説明した。

 インテリジェントエンタープライズは、「C/4HANA」「SAP Ariba」「SAP SuccessFactors」「SAP Fieldglass」「SAP Concur」など、デジタルコアであるS/4HANAを中核として連携する業務アプリケーション群(Intelligent Suite)と、社内外ビッグデータの統合基盤や外部IoTデバイスとの接点(Digital Platform)、そして両者の間でインテリジェンスを提供し自動化を加速させる「SAP Leonardo」など(Intelligent Technology)により構成される。

 図の中央にIntelligent Technologyが描かれていることについて、宮田氏は「SAPではインテリジェンスは後から付け加えるものではなく、最初から業務システムに組み込まれるべきものだと考えているからだ」と説明した。

インテリジェントエンタープライズのコンセプトと構成要素

 なぜいまインテリジェントエンタープライズが必要なのか。宮田氏は、「外部環境」「技術進展」「内部環境」の各領域において、それぞれ数十年ぶりの大きな変化が起きていることを指摘する。外部環境としては世界経済の多極化と複雑化、技術進展では機械学習/AIといったインテリジェント技術の業務適用、内部環境としては“企業生き残り”をかけた機動的経営の要請といったものが挙げられる。

 「外部環境としては変化のスピードが加速しており、市場の多様化/複雑化に伴ってきめ細かなデータ基盤が求められている。そして(機械学習/AI、IoT、ブロックチェーンなどの)技術の進展が企業ITに変革をもたらしつつある。また内部環境を見ると、特に日本企業では『スピード経営』実現に向けてAIへの期待が高く、業務効率化は待ったなしの段階になっている。これが、わたしたちがインテリジェントエンタープライズを世に出そうとしている理由だ」(宮田氏)

インテリジェントエンタープライズがいま必要な理由として、宮田氏は企業を取り巻く3つの領域それぞれで大きな変化が起きていることを指摘した

 インテリジェントエンタープライズ化が進むことで、多くの既存業務は自動化されていく。ただしそれによって業務が減るのではなく、それと同じ程度の「高付加価値な業務が新たに創出される」。したがって、早期にその取り組みに着手した企業は、市場における優位性を手に入れることができる。「これがインテリジェントエンタープライズの本質だと考えている」と、宮田氏は語った。

インテリジェントエンタープライズ化が進展することで、より「高付加価値な業務」へとシフトしていく

 なお同説明会では、SAPのパートナーエコシステムに関する新たな取り組みも紹介された。デジタルエコシステム統括本部ビジネスイノベーション推進部長の服部貴志江氏は、S/4HANAのニーズが高まる中で、市場では「SAPコンサルタント不足」が起きていると指摘。その対応として、この1年間で50社以上の新規パートナーを獲得したほか、国内プロジェクトへのグローバルパートナーの招致、さらに既存パートナーにおける要員開発支援といった取り組みを展開していると語った。

 またゲストとして、S/4HANA導入企業であるテルモのグローバルCIO、竹内克也氏が登壇した。竹内氏は2015年度から、S/4HANA CloudによるグローバルERP統合プロジェクトを率いており、その第一段階となるアジア地域での物流システムのS/4HANA移行を今年2月に完了したことを紹介した。今後、北南米や欧州のERPも段階的に統合を進めていく計画。

テルモ 執行役員 CIOの竹内克也氏

テルモのグローバルERP統合プロジェクト

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