イヤモニとリスニング向けイヤホンの違い
── ライブではイヤモニを使用されていますよね?
May'n ライブではもちろんイヤモニを使っていますが、あくまでもパフォーマンスをモニターするためのものなので、ボーカルの聞こえを邪魔しない音作りになっています。ただ、私の場合、完全にカットすることはなく、バランスは割と保っているほうだと思いますね。会場の雰囲気もより近くに感じたいので、歓声なども返してもらうようにしています。ただ、ボーカルと重ならないよう、特定の周波数帯のスキマを空けるというか、ボーカルの聞こえに影響するようなスネアドラムなどは絞って返すことが多いですね。
ここはアーティストごとにこだわりがある部分で、人によって「この楽器の音を聴きたい」だったり、「ほかの音は聴きたくない」といった差が出る部分だと思いますね。
── Adonisの音はイヤモニで聴く音とはまた異なるわけですね。
May'n プライベートで使うなら、ボーカル込みですべてがバランスよく配置されているものがいいです。私の楽曲は、ある意味ジャンルレスで、ロックもあるし、R&Bもあるし、ポップスもある。「どの楽曲もバランスよく聞きやすいものにしたいな」という想いはAdonisを試聴し、複数のサンプルから最終的な音を選ぶ際にもお話しさせていただいたことです。
── バランスの良さが選択の理由ということですね。
May'n はい。オールジャンルいける音になっていると思います。ただ、自分自身のこだわりとして、あまり上に行き過ぎず、ちゃんとローがある感じは意識しました。もちろん上もちゃんと聴きたいですが、バランスとしては、完全にフラットというよりは、やや中域より下が強めで、重心がやや下がっている音が好みですね。
もちろん、ハイの部分もきちんと聞こえますが、ここは耳あたりが心地よく、滑らかな高級感ある音になっていると思います。ローも滑らかさを兼ね備えていて、ビートはちゃんと感じたいし、密度感もあるけれど、変に硬い感じにはならないようにしています。スピーカーと違ってイヤホンでは、移動中に長時間着けることも多いですし、あまりローが強すぎると疲れてしまう印象があるので。
May'nの曲を聴くなら、間違いのないイヤホン
── 試聴はやはりご自身の楽曲を使用されたのですか?
May'n 「15Colors」の制作タイミングより前だったのですが、試聴は全部自分の曲でしています。ロック代表としては『graphite/diamond』、あと、『NEW WORLD』の曲はR&B感がありつつポップス感もあるので、そういう楽曲を選んだりしましたね。かなり幅広く自分の曲を聴き込んだと思います。
TDをする際には、真ん中にボーカリストである私がいて、少し離れた位置にバンドがいて、ストリングスもいる。そういうミュージシャンとリスナーの距離感をちゃんと出すことを心がけています。そのうえで、「もっとミュージシャンに近づきたいです」といった要望を出していくわけですが、そういうちょっとした空気感の違いとか、楽器の広がり感とか、現場でこだわった部分がちゃんと聴ける。だけどライブハウスのように重たいロー感はない。本当にちょうどいいバランスになっていると思います。
── 自分で作った曲のこだわった部分が再現できているという意味で、間違いない音のイヤホンと言えるかもしれないですね。