●公平な競争環境ゆがめかねない
KDDIやソフトバンク、楽天モバイルは、NTT東日本、西日本から全国に敷設されている光ケーブルや局舎などを借りてサービスを提供している立場だ。実はNTTドコモもNTT東日本や西日本から同じく設備を借りている。
これまで、NTT東日本と西日本が高額なレンタル料金を設定していた場合、KDDIやソフトバンク、楽天モバイルだけでなく、ドコモも「値下げしろ」という交渉の立場に立っていた。なぜなら、ドコモ株の34%は外部の投資家であったため、ドコモにとって利益を損なう「高額なレンタル料」は受け入れがたいものなのだ。
しかし、ドコモ株の所有者が100%、NTTになった場合、レンタル料金を高めても、株主がすべてNTTなので文句は出ない。ドコモと他の通信事業者は赤字でも、NTTグループ全体で見ればレンタル料金が高めなので黒字を達成することが可能だ。
公平な競争環境がゆがみ、NTTグループが強くなりすぎることで、他の通信事業者は衰退していくことになる。結果として、ユーザーに向けたサービスの品質が落ちる可能性も出てくるのだ。
●NTT独占回帰「理解できない」
髙橋社長は「我々は創業時から今に至るまで、競争こそがユーザーに対してのサービスをよくするという姿勢は一貫して変えていない。楽天モバイルにローミングのお手伝いをしているのも、競争を促進することでサービスが良くなることを期待しているからだ」と語る。
NTTでは、ドコモとNTTコミュニケーションズやNTTコムウェアの一体化も視野に入れている。さらに巨大な市場支配力を持つグループが誕生しようとしているのだ。
そもそもNTTが支配力をつけないようにと法律によって規制されていたが、NTTの澤田純社長は「NTT東日本と西日本の連携に対して法規制されているのであってドコモやコミュニケーションズは規制対象外」というスタンスだ。NTTとしては法規制ができたころから「環境が変わった」としてNTTグループを再編。GAFAに対抗できるグループにしたい考えだ。
しかし髙橋社長は、「5G、6Gになると日本全国、光ファイバーだらけのネットワークになる。そこをNTTだけでなく、みんなが公平に使って、産業を活性化させた延長線上に国力の強化がある。NTTが独占回帰して、大きくなったからといって、GAFAに対抗できるというのは、ちょっと理解ができない議論だ」と指摘する。
意見書では「今後のNTTのあり方について慎重に議論すべき」としているが、どんな議論をしていけばいいのか。具体的にNTTの暴走を止めるうえで、KDDIとしての考えはあるのか。

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