11月16日、NTTによるNTTドコモ株のTOB(公開買い付け)が成立した。これにより、12月1日からドコモはNTTの完全子会社となった。ドコモがNTTの完全子会社になることで、経営基盤が安定し、菅義偉総理からの値下げ要請にも応えられるとされている。また、NTTの澤田純社長が主張するにはドコモを中心としたNTTグループにすることでGAFAと充分、戦える体制を作っていくのだという。
しかし、突然、決まったNTTによるドコモの完全子会社化に対して、通信業界内では反発も出ている。
11月11日には、電気通信業を営むKDDIやソフトバンク、楽天モバイルなど28社が、趣旨に賛同する37社を代表し、武田良太総務大臣に意見書を提出している。過去には「ドコモの完全民営化」や「ドコモに対するNTT持ち株会社の出資比率の低下」が議論されていたにもかかわらず、それとは全く逆となる「完全子会社化」が急転直下で決まってしまったからだ。
今回の完全子会社化に対し、特に異論を唱えているのがKDDIの髙橋誠社長だ。
「基本的に国の競争政策に対して、民間企業の力を使って、ICTにおける国際競争力をICTをつけていくのは大賛成の立場。しかし、もともとはNTTは分離、分割していく方向であったにも関わらず『環境が変化した』という理由だけでまったく逆の方向となる完全子会社、すぐにTOBに走ったのは正直、驚いた。政策議論がないことに問題がある」(KDDI・髙橋誠社長)と困惑する。
ドコモがNTTの完全子会社になると、KDDIやソフトバンク、楽天モバイルにとってはどう都合が悪くなるのか。

この連載の記事
- 第166回 握手の裏で殴り合うKDDIと楽天モバイル
- 第165回 30年以上続いた京セラの携帯電話事業、終焉へ
- 第164回 PayPay、他社カード決済停止で独自カード強化
- 第163回 年利4.15%のアップル預金、日本ではキャリアと連携して
- 第162回 サムスンがアップルを打ち負かすには「パートナー」が重要だ
- 第161回 ナンバーポータビリティのワンストップ化 大混乱が心配だ
- 第160回 NTT、メタバースは「コミュニケーション特化型」で勝負
- 第159回 KDDI髙橋社長、楽天スペースモバイル計画に疑問符
- 第158回 auとソフトバンク、デュアルSIMでドコモからユーザー奪う?
- 第157回 ドコモ「dポイント」楽天ポイント追い出して経済圏拡大?
- 第156回 ソニー・ホンダは「Xperia」のようにクルマを作る
- この連載の一覧へ