業務を変えるkintoneユーザー事例 第95回
各地のkintone hiveで勝ち残った6社が集結 熱い事例が満載
会社の課題をkintoneで解決した6社のプレゼンイベント「kintone AWARD 2020」レポート
2020年12月01日 09時00分更新
一緒に取り組んでくれるプロの力を活用して大きな業務効率化を実現
4番手は関東地区代表の東京ドーム 興行企画部 望月秀吉氏が登壇した。同社は東京ドームをはじめ様々な施設を運営しており、望月氏はそこで行われるイベント業務を手がけている。
今回は、kintoneを導入して1年ちょっとの営業部署の担当者の事例として、kintoneビギナーだからこその工夫について紹介してくれた。
「イベントの仕事は業務内容が多岐に渡っているので、残業や休日勤務などで長時間労働が課題になっています。大きなイベントでは1000社出店され、申し込みや申請の作業があるのですが、郵便とFAXだらけでした」(望月氏)
手書きの紙をFAXを受け取って、社員2名と数人のアルバイトが入力しているという、業務課題あるあるだが、望月氏はなんとかしたいと考えた。いろいろ試している中、2018年のサイボウズデイズに来たという。
「いろんな人たちがいろんな風にkintoneを活用しているのを見て、求めていたのはこれなんじゃないかと思いました。しかし、簡単とは言え、すぐにできるわけでもありません。私たちには時間もなかったのでプロにお願いしました。その際、外注先を探すのではなく、一緒に業務改善をするパートナーを探しました」(望月氏)
早い段階でプロに依頼すると、アプリの作り方のノウハウやポイントを見ることができるというメリットがある。続いて決めたのが「すべてkintoneでできなくてもいい」ということ。使うのはkintoneの初心者なのでカスタマイズしてもメンテナンスできない。そこで、標準機能とプラグインで作ることにしたのだ。たとえば、図面を描くのはkintoneでは無理なので、紙を残そうと最初に決めたそう。
プラグインはトヨクモの「kViewer」で出店者の申請ページを作り、「FormBridge」で作ったフォームに入力してもらうことにしたい。出店者受付申請アプリに情報を登録し、申請書類はソウルウェアの「Repotone U」で帳票出力できるようにした。
「ただ、田舎のおじいちゃんおばあちゃんもいますので、どうしても使えない人はいます。できない人に無理にやらせる必要はないんです。紙に書いてもらって、我々が入力すればいい。これだけでも十分な業務改善ができました」
その結果、イベントにもよるが6~9割もの紙を削減することに成功したそう。
アプリを作る際、スタッフから意見が出ることもあったそう。例えば、落とし物業務では、紛失物届と拾得物届けという似たような紙を使っていた。kintoneアプリ化する際には、拾得物届けは青く、紛失物届は赤く表示するようにした。この色分けは現場スタッフからの意見だった。
新型コロナウイルスの影響で緊急事態宣言が出ると、東京ドームでもイベントができなくなった。出店者も催事がなくなり困ってしまった。そこで、望月氏は出店者と一緒にECサイトを立ち上げた。フルリモート業務だが、数週間でオープンにこぎつけたのだ。
しかし、ECサイトから情報を引き出して、各出店者ごとに分けて注文情報や入金情報を渡し、注文確認や発送情報を受け取るという作業に、初日は3人で6時間作業する必要があった。
「徐々に改善していけばいいなんで言っている場合ではありませんでした。私たちはプロの力を最初に借りていたので、そこそこアプリを作れるようになっていました。もし、困ったら相談できる方々もいたので、できるところから対応しました」(望月氏)
アプリの改善を進めるうちに、2日目は二人で2時間、3日目は一人で2時間、4日目には一人で1.5時間で済むようになり、1週間後には一人で1時間かからないくらいになったという。
「業務改善とは、情報の流れを最適にすることです。kintoneは選択肢が多いので最適な方法を選択できます。出店者さんや拾得物の情報を出す人など、相手が必ずいるので、その相手にとって最適な方法を選択してあげることが本当の業務改善だと思います」(望月氏)
自治体でも本気の担当者が入れば4ヶ月でIT武装を整えられる
5番手は関西地区代表の神戸市西区役所 総務部総務課 KOBE Tech Leaders 藤原慎之輔氏。「公務員だって自力で改革したい! ~そんな武器で戦えますか?~」というテーマでプレゼンしてくれた。
藤原氏が5月にkintone hiveに登壇した時には、建設局西武建設事務所で働いており、主に道路や公園、河川の管理をしていたそう。そこでは、黄色いカラーが目を引く道路維持作業車を約30台所有している。
「そこで課題になったのが、運転する際の日報や車検証を紙で管理しているのですが、その枚数が多かったのです。日報は毎月紙の束が出て、毎年5000枚以上の紙を使用していました」(藤原氏)
Excelの台帳も作っていたが、車の点検日が来る度に紙を印刷し、ホワイトボードに貼り直していたという。これでは、結局紙での運用と変わらず、非効率だった。
もう一つの課題が、車検時期の管理。自治体が車検時期を忘れて過ぎてしまうと、行政処分や刑事処分が科せられる上、不祥事として報道されて処分されることになる。
「この状況をRPG風に例えると、Excelの棍棒と紙の腹巻きだけで戦っていたようなものです。市役所の情報システム部門がkintoneの勉強会をするから、職員の人に案内を出しました。私は面白そうだな、と感じて勉強会に参加し、漠然とこれは何かに使えるのではないかと思いました」(藤原氏)
kintoneのアカウントをもらった藤原氏は、早速Excelで管理していたものをkintoneアプリに取り込んでみた。車検証や自賠責の書類をPDFでアップデートし、車検前にはメールで通知が出るようにした。これで、紙の問題と車検時期の問題を解決できた。これで、剣と盾を装備できた、と藤原氏は語る。
紙の運転日報では様々な雑務が発生していた。日報には担当者と上長の確認印が必要で、回収した日報はまとめて決済し、Excelにその内容を手打ちで集計しなければならないのだ。さらに、日報を挟んだファイルは毎月末尾に入れ替える必要があり、そして日報の紙は毎年段ボール2箱分発生する。
藤原氏はトヨクモ社のプラグインを3つ導入して解決した。「FormBridge」で職員が運転日報を入力するとkintoneにデータが記録される。車番ごとの走行距離を算出して「kViewer」で確認できるようにし、kViewerルックアップ機能で直近の走行距離を職員の入力フォームに自動入力するようにした。職員の作業をなるべく減らすための工夫だ。そして、kintoneのデータを「プリントクリエイター」で帳票化し、電子決済するようにしたのだ。これで、兜とマントも装備できた、と藤原氏はRPG風に例える。
紙と気休め程度のExcelでの運用から、kintoneの単体運用、プラグインの活用までたった4ヶ月で進化したそう。
「公務員でもこの期間でここまでできます。この取り組みが市役所で行われている業務改善の表彰制度で大賞に選ばれました。今では、市長の公用車も含めて、市役所内30以上の部署に展開することになりました」(藤原氏)
藤原氏は5月に異動してからも、5年に1度行われる国勢調査にもkintoneを導入した。1万3000件を超える回答を得て、電話の問い合わせを減らすことに成功した。
「役所に対して堅いイメージを持っている方がいらっしゃると思いますが、それでも担当者のやる気次第で業務は変えられます。もっと自分のやりたいことを前面に出していかないと状況は変わりません。自分の考えを表に出すことが大事だと思っています」(藤原氏)
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