誕生日なのにバックアップの人生(涙)
私ごとで恐縮ですが、筆者は11月が誕生日。まぁ、お祝いをしてもらうという年齢ではありませんが、なんと、その日に経理用に使っているiMac(21.5inch 2019)のハードディスク(以下、HDD)の調子が怪しくなりました。経理用ということもあり、すぐにApple Store経由で修理工場行きとなったわけです。
もちろん、iMacの入院前にバックアップを取ったのですが、バックアップ用のHDDもそろそろ限界。というのも、筆者のホームオフィスには「仕事用の写真」「仕事用の動画」「連載やメルマガの原稿」など、iMac4台分のデータが外付けのHDDに保存されています。
「写真データ」はこのHDD、動画はこのHDDと管理して、さらにmacOSのバックアップアプリ「Time Machine」用のHDDに保存していましたが、気がつけば部屋中が外付けHDDだらけ……。最近はHDDの容量単価が2000円/1TBを下回っていることもあり、大容量のHDDを導入することに決めました。
信頼度も重要なバックアップ用HDD
RAID(複数台のハードディスクを組み合わせることで、仮想的な1台のハードディスクとして運用する技術)を組むことも考えましたが、筆者の環境ではデータの復旧に迅速さは必要がないことや、コストなどを考え、今回はRAIDを見送ることに。
RAIDをあきらめたといっても、信頼性も重要なのがバックアップ用HDDです。なにしろ、筆者にとっては、数十年分の仕事の証でもあるからです。
というわけで、新しい外付けHDDは故障率が低いメーカーを条件に候補を絞りました。これはクラウドサービスを提供しているBackblaze社が、自社で使っている約13万台のHDDドライブの年間故障率(AFR)を発表しているので、それを参考にすることに……。
同社によると、2020年の第1四半期では、HGST(旧日立グローバルストレージテクノロジーズ、現在はウエスタンデジタル傘下のストレージ製品メーカー)、Seagate、東芝が故障率ゼロだそう。
さらに、ケースに冷却ファン搭載も条件に加えました。その理由は、HDDは熱に弱く、筆者は夏でも冷房をあまり使わないので、あまり良くない環境でもあるからです。
そんな条件でパッケージ製品を探してみましたが、満足いくものがなかなか見つかりません。そこで、HDDのドライブ+外付けHDDケースの組み合わせにすることにしました。
外付けHDDケースはロジテック「LHR-EJU3F」
冷却ファン付きの外付けHDDケースの種類は少なく、ロジテックの「LHR-EJU3F」を選択(実売価格は3000円前後)。LHR-EJU3Fなら、新しいmacOS Big Surにも対応しています。
ただし、ユーザーレビューには「データ転送時に不安定になることも」とあるので、消費電力が大きいドライブ(高回転のドライブ)は不得意なのかもしれません。そのあたりは、様子をみながら組み合わせてみることにしました。「ダメならケースを替える」という選択ができるのが、パッケージ製品にはないメリットです。
HDDは東芝のヘリウム封入タイプ「MN07ACA12T」
ドライブは、ウエスタンデジタルの耐久性を高めたNAS用の「WD Red」(赤いラベル)と、東芝のNAS向けHDDのMNシリーズとで悩みました。最終的に東芝の「MN07ACA12T」(実売価格は3万円前後)を選んだのは、アクティブ時の消費電力が4.26Wと省電力だったこと。ディスクの回転数が7200rpmと、やや高回転でありながら、この消費電力なのはヘリウム封入タイプだからといえます。
同じMNシリーズの10TBモデル(通常タイプ)が7.15Wなのに対して40%も省電力。ちなみにウエスタンデジタルの赤ラベル12TBモデルのアクティブ時の消費電力は6.3Wです。
LHR-EJU3F+MN07ACA12Tレビュー
ケースがプラスチックということもあり、HDDへのアクセス時の作動音はやや大きめです。ただし冷却ファンの音は、キーボードのすぐ隣に置いているにもかかわらず、ほぼ無音。これは、内部温度が45度以下ではファンを回転させない機能が働いているためでしょう。
動作は安定していて、連続して800GBほどのファイルを書き込んでみましたが、スムーズでした。ケースに触ってみても、室温より少し温かい程度。冷却ファンも稼働しませんでした。
コンピュータのスリープ時には、ちゃんと外付けHDDの電源も20秒ほどでオフになります。
動画を編集するときのアフレコでは、机から伝わるHDDの回転音をマイクが拾うこともあります。これはHDDの設置場所を変えたり、防振ゴムを敷くことで予防できる気がしています。
大容量の外付けHDDをmacOSで使うならSpotlight検索の対象外に
ご存知のように、macOSでは「Spotlight」というファイル検索機能があり、新たなファイルなどのインデックスを常に作成しています。
バックアップ用の外付けHDDのファイルが大容量になり、保存したファイルが増えると、インデックスの作成にも時間がかかるようになります。LHR-EJU3F+MN07ACA12Tという組み合わせでは、HDDへのアクセス時の作動音はやや大きめなのは前述した通りですが、そのアクセス音が気になることも……。さらにインデックス作成時にはCPUの15〜20%を占有し、作業効率も低下することがあるので注意が必要です。
筆者の環境では、保存用ファイルのSpotlight検索は今のところ不要なので、保存用ファイルのフォルダに「.noindex」の拡張子をつけることで、インデックス作成を防いでいます。
バックアップが大事なのは、コンピューターだけではなくマジックでも同じです。「ファイルが完全に消えました」なんてマジックは、誰にも喜ばれませんからね……。
前田知洋(まえだ ともひろ)
東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。
著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。
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