リモートワークの課題をkintoneで乗り越える安藤さん
最後はビットリバーの安藤光昭さん。4回目にして初の本選登壇となった安藤さんは、「kintoneで感じる同僚の空気」というタイトルで、リモートワークが抱える課題をkintoneで解決する話を披露した。
2016年にkintoneに出会った安藤さんは、kintoneの魅力にとりつかれ、全国のkintoneのイベントに自腹で参加。さらに地元の広島ではkintoneのコミュニティであるkintone cafeを自ら運営し、kintone大好きを言い続けて研鑽を重ねた結果、昨年晴れてkintoneエバンジェリストに任命されたという。
安藤さんのビットリバーは、kintoneの拡張サービス「キントバ」を展開している広島のIT企業で、2016年の創業以来フルリモートで業務を行なっている。「オンラインでのつながりが会社の生命線」と安藤さんは語る。しかし、リモートワークは自宅で一人孤独に陥ることもあるし、オフィスのような雑談や空気感もないし、他のメンバーの存在感も感じられない。ビットリバーではこうした課題解消のためにSlackを使っているが、kintoneでこの課題を解決したいと考えたのが今回のハックだ。
安藤さんが注目したのは、kintoneのメニューが並ぶバーの空白部分。なんとここにティッカーのような通知が表示される。たとえば、自らがログインすると「おかえりなさい」、他のユーザーがログインすると「ログインしました」と表示される。その他、アプリを開いたり、テーブル更新・保存。コメントの追加といったイベントに対しても、きちんと通知が表示される。コメント欄でレスが盛り上がったら、テキストが赤くなるという機能が、メンバー間では一番いい反応だったという。
システム的にはkintoneのイベントをリアルタイムに同期するSDKを用いて、FirebaseでIDごとに動作をモニタしている。利用できる公式APIがないため、データを取得して、非公式のAPIを用いて実現した例もあるという。安藤さんは「リモートワークで空気を感じながら仕事していきたい」と締めた。星野さんやナガヤジャパンと同じく、標準機能として実装してほしい実用的なカスタマイズだった。
優勝はチームの強みを活かしたナガヤジャパン
セッション中は参加者のサイリウムの数を集計し、順位を競っていたが、長らくトップだったくーらを抜いたのは、5番手のナガヤジャパン。そして6番手の安藤さんがナガヤジャパンの得票を超えなかったことで、ナガヤジャパンの優勝が確定する。チーム戦の解禁後初めてのkintone hack NIGHTはチームが一位に輝いた。
振り返ってみれば、ナガヤジャパンの所属するウィルビジョンは若手の住田知基さんが過去にも優れたkintoneハックを何度も披露しており、アイデアという点ではチャンピオンになる目は十分にあった。今回は住田さんのようなエンジニアが作り手に回り、プレゼンテーションを別の面々が手がけるという役割分担と総合力が勝利を呼び込んだと思われる。どれも素晴らしかったが、個人的には納得の優勝だった。
毎年に楽しみにしているkintone hackだが、今年も本当に刺激的だった。不可能を可能にし、ないものを作り出せるエンジニアのすごさには頭が下がる。しかし、いくら技術があっても、価値が伝わらなければ「爪痕」は残せない。その点、kintone hiveもアイデアや技術力だけではなく、いわゆる「映え」の部分も必要になり、チーム戦の時代に入ってきた予感がする。来年も楽しみだ。