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TableauなどのBIツールや業務システムと連携が可能に、キャンペーンも展開し「日本列島総DX化」目指す

ヤフーDS、統計データや洞察をAPI提供する「DS.API」提供開始

2020年11月09日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 ヤフー(Yahoo! JAPAN)は2020年11月5日、企業や官公庁/自治体向けのデータ事業「ヤフー・データソリューション(ヤフーDS)」において、外部のBIツールや業務システム、アプリケーションなどとのデータ連携を可能にする新サービス「DS.API」を提供開始した。まず第一弾として、ヤフーの統計ビッグデータを調査/分析できる「DS.INSIGHT」の機能をAPIで提供する「DS.API-INSIGHT」がリリースされている。

 同日の発表会では、昨年10月の事業立ち上げから1年間の取り組みや成果を振り返るとともに、日本の組織にデータ活用を浸透させていくための新キャンペーン開始も発表した。DS.API経由でBIプラットフォーム「Tableau」とデータ連携することから、Tableauユーザーへの無料試用キャンペーンも開始している。

「目標は“日本列島総DX化”」だと語ったヤフー 執行役員 CDO(チーフデータオフィサー) データ統括本部長の佐々木潔氏(右)と、ゲスト出席したTableau Software カントリーマネージャーの佐藤豊氏(左)

ヤフーの持つ統計データとインサイトをAPI経由で取り込み、活用できる

 今回提供が開始されたDS.API-INSIGHTは、昨年から提供してきたDS.INSIGHTの機能をAPI経由で提供するサービスだ。従来のDS.INSIGHTはあらかじめ用意されたWebダッシュボード上での調査/分析にのみ対応していたが、このAPIを利用することで外部システム/ツールとのデータ連携、さらには顧客自身の持つデータとヤフーのビッグデータを組み合わせた分析や活用が可能になる。

ヤフー・データソリューションの提供するサービスの機能を、さまざまな外部ツールやシステムと連携可能にする「DS.API」を発表

 ヤフー CDO(チーフデータオフィサー)の佐々木潔氏は、「これまでDS.INSIGHTはダッシュボードとして提供してきた。だが、顧客がすでにBIツールを持っている、システムがある場合には、両方のツールを見ることになり難しい場合もあった。そこで、ヤフーのデータとそれらをダイレクトにつなぐ手段を準備することに決めた。それがDS.APIだ」と説明する。

 サービス提供開始時点で利用できるAPIは、検索キーワード分析に関連した4つ。具体的には、指定したキーワード(1リクエスト最大2000個)の情報をランキング形式で取得できる「Search Ranking API」、指定キーワードの検索ボリュームを日/週/月/年単位で集計し取得できる「Search Volume API」、指定期間において検索トレンドが上昇しているキーワードリストを取得する「Search Trend API」、指定キーワードのエリア(都道府県別)属性情報を取得できる「Map Metrics API」だ。提供する機能/データは今後さらに拡充していく。

 DS.API-INSIGHTの利用料金(税抜)は、月額基本料が10万円、API使用料が1リクエストあたり1~5円の従量課金制となっている(APIの種類により使用料は異なる)。2021年3月末までは「DS.APIリリースキャンペーン」として、利用料金合計額から毎月5000円を割り引く施策も実施する。

DS.API-INSIGHTの利用価格。月額基本料+使用料(従量課金)の構成で、初期導入費などは必要ない

 DS.APIは、オンラインの専用フォームから必要事項を入力し、API管理画面でアプリケーションIDを発行すれば利用できる。1カ月単位の自動更新で、最低契約期間は6カ月。なおDS.INSIGHTユーザーでも、DS.API-INSIGHTの利用には別途契約が必要となる。

 DS.APIを使うことで、顧客企業が導入しているBIツール/プラットフォームに直接ヤフーのデータを取り込むことも可能になる。今回はその第一弾としてTableauとの連携を発表しており、Tableau用接続コネクターの提供を開始した。今後、対応するBIツールはさらに拡充していく方針だ。

 ゲスト出席したTableau カントリーマネージャーの佐藤豊氏は、ヤフーは2013年からのTableauユーザーであり、現在ではその活用が全社レベルに拡大している「日本を代表するデータカンパニー」だと紹介。また今年4月には、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大防止に向けた2社協力の取り組みとして、ヤフーの持つ都道府県/主要都市間の往来量分析データをTableauでダッシュボード化し、公開したことなども紹介した。

 佐藤氏は、ビジネス活用できる豊富かつ整備されたデータをすべての企業が持っているわけではなく、そのために“データディバイド(データ格差)”が生まれる懸念があると指摘。「日本の企業や自治体に活力を与えるには、“データの平等性”を追求しなければならない」と述べ、Tableauプラットフォームだけでは実現できなかった「データの種類とインサイトの強化」を、DS.API-INSIGHTを通じて実現できると説明した。「これは間違いなく日本のすべてのデータリテラシーの向上、データ経済圏の拡張につながると考えている」(佐藤氏)。

 なお今回ヤフーでは、Tableauユーザー向けにDS.APIの2週間無償トライアルキャンペーンを開始することも発表している。

組織内での“データ活用人口”を増やし「日本列島総DX化」を目指す

 ヤフー 佐々木氏は、「データの力で日本を元気に」を旗印に掲げてスタートしたヤフー・データソリューションの、1年間の取り組みと成果を紹介すると同時に、そこで見つかった「課題」と新たな目標についても説明した。

ヤフー 執行役員 CDO データ統括本部長の佐々木潔氏

 昨年10月の事業開始以降、ヤフー・データソリューションは120日間で200社の顧客を獲得した。これは当初目標の2倍にあたるという。同発表会では、DS.INSIGHTおよびDS.ANALYSISのサービス活用事例としてベルメゾン(千趣会)、スカパー、PayPay、さらに官公庁/自治体などが紹介された。

ベルメゾンでは、DS.INSIGHTの検索データを新商品開発に活用。またスカパーではコロナ禍における解約原因の分析と対策方針決定にDS.ANALYSISを利用している

 こうした好調なビジネス成長の一方で、ヤフー・データソリューションではデータ活用による「暮らし」への貢献にも積極的に取り組んできた。前述したTableauとの取り組みだけでなく、官公庁/自治体との連携、メディア報道へのデータ協力、さらに独自の調査レポート発信などだ。なお4月からは、全国の都道府県/政令指定都市に対してDS.INSIGHTの無償提供も行っている。

各自治体における感染症拡大防止の呼びかけにもヤフーの往来量データが活用された

 こうして一定の貢献はできたものの、これまでの方法では「日本全体にデータの力を行き渡らせる」というコンセプトの実現においては難しい部分も見えてきたと、佐々木氏は語る。同社サービスを導入する企業や官公庁/自治体が増えても、その組織内でツールを利用しデータを活用する人は限定されており、「組織内で(データが)共通言語化されない」という課題だ。

サービスを導入する企業や自治体は増えたが、その組織内で実際にツールを利用する人は限定されており、業務やサービスにデータを生かし切れないという課題

 「これまでどおりサービスを導入いただく企業数、自治体数を増やしていくのと同時に、その組織内での利用者数も増やしていくことに取り組んでいきたい。目指すのは『日本列島総DX化』、日本全体、全員でデータを使っていけるようにしていく」(佐々木氏)

 そのための新たな施策として、佐々木氏は「DS.INSIGHT 全員DXキャンペーン」を開始すると発表した。これまでは1ライセンス(1ユーザー)あたり月額10万円という提供プランだったが、これを1組織あたり月額10万円で何ユーザーでも利用できるようにするというものだ。

「日本列島総DX化」を目標に、組織内でのデータ活用の普及と定着、データ文化醸成を促す「全員DXキャンペーン」を開始した

 またヤフー テクノロジーグループデータ統括本部 データソリューション事業本部長の谷口博基氏は、今後のサービスロードマップについて説明した。

ヤフー・データソリューション、今後のサービスロードマップ

 まずDS.APIについては、企業向けシステム/サービスを開発するソリューションパートナー向けのAPIプラン「DS.API-INSIGHT for SP」の提供を検討しているという。DS.API-INSIGHTを使い、ヤフーのデータやインサイトを組み込んだシステム/サービスの構築と提供を可能にするものだ。

 またDS.INSIGHTにおいては、現状の検索データや位置情報(人流)データに加えて、Yahoo! JAPANにおける購買データを追加する方針。加えてPayPay加盟店向けに、機能を簡素化した無償版のDS.INSIGHTも提供する計画だと説明した。

 なおヤフーでは現在、オンラインカンファレンス「Yahoo! JAPAN Data Conference 2020 -online-」を開催している(11月5日、11月10日~12日)。DS.APIについての詳細セッションのほか、ベルメゾン、伊藤忠ファッションシステム、東急不動産、高知県立大学/東京大学/茨城大学、PayPayの各社/各大学が、それぞれの領域におけるデータ活用についての講演を行う。

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