驚いたのが、スペックにも現れている小回りのよさ。今回の試乗コースは「狭い路地」を想定して作ったというが、運転している感覚的には、普段なら絶対に入りたくない、「よく知らない住宅街の細い道」そのものであった。中型のセダンやハッチバック、ミニバンなら、慎重なハンドルの切り返しが求められそうな角の連続だ。
ところが、Honda eならハンドルを普通に切るだけですんなりと通れてしまう。その効き具合も絶妙で、シビアすぎず、ちょうどいい具合に曲がってくれるのだ。
ハンドルの効き具合にはかなりこだわったらしく、当初はもう少し効きやすいハンドルだったものを、後から甘めに調整したとのこと。コンパクトカーでは車種によってハンドルがシビアすぎ、セダンやミニバンからの乗り換え時に不安定感を覚える可能性もあるが、Honda eならその心配はなさそうに思えた。
近接センサーからの情報を常にモニタリングしており、壁や角が車に近づくと、色と音で知らせてくれる。対象物がやや近いときは黄色、さらに近づくと赤がモニターに表示され、警告音が鳴る。狭い路地を通る際に頼もしい機能だ。
モニターは大きく、イメージとしては、フロントウィンドウの下に、もうひとつデジタルのウィンドウがあるようなイメージ。ウィンドウに重なって表示するわけではないが、単なるナビというよりは、フロントウィンドウからのリアルの景色と、デジタルの景色を両方見て運転するという意味で、AR的要素とも言える。
上位モデルのAdvanceでは、サイドミラーだけでなく、バックミラーもカメラに置き換わっている。こちらはむしろミラーより視認性がいいかもしれない。
バック時は、モニターに単純なバックビューと、俯瞰図が同時に表示される。これを見ていればほとんどぶつかることはないと思うが、もし死角に障害物があっても、アラートを鳴らしてくれるので、より安心だ。
新しいのに乗りやすい、次世代コンパクトカー
公道を走ったわけではないので、直線の加速時の挙動や、高速走行時の安定性はレポートできないが、試乗コースを走っている分には、「はじめて乗る新しい車に乗っているのに、運転がしやすい」という不思議な感覚だった。メカ部分の緻密な調整と、デジタルの載せ方のバランスが取れているからだろう。
また、狭い路地でもするりと通れる快適さは、狭い路地の多い日本の交通事情には最適で、搭載されている技術以上にインパクトがあり、「電気自動車時代の普及車」にもなり得るくらい運転しやすいと思った。試乗する機会があれば、ぜひその先進性を体験してほしい。
価格は451万円からと、海外メーカーの高級コンパクト車程度はするのだが、すでに予約は第一期の販売予定台数に達しており、注文は一時停止しているらしい。公道で走っているのを見かける日も近いかもしれない。