咳をしても一人。在宅ワークの孤独を詠んだ自由律の名句である。誰にも会えず、テレビもネットもまじめな話か怖い話ばっかりであり、気持ちは沈む一方だ。もっとぬるい話が見たい。ぬるっぬるの、ぬめっぬめなやつが見たい。
「ぬるい話」で検索すると出てくる「本当にあったぬるい話」という佐賀のプロモーション動画がある。湯温のぬるい佐賀の温泉を紹介するというぬるい動画で、あんまり再生回数も伸びていない。これなのです。こういうの欲しい。
アスキー編集部は基本全員在宅ワークだ。みんな在宅ワークでぬるくてしょうもない失敗とかやってるんじゃないのか。ということで、Slackでみんなの「在宅ワークぬるい話」を聞いてみた。記事内の写真はすべてイメージです。
●「寝たいときは寝るでしょオ」
A 在宅ワークのぬるい話おしえてーー。
B 昼寝してしまうとか?
A 昼寝したことはないけど…
B メリハリのなさが問題で。
C 私、ちゃんとしたデスクとオフィスチェアを導入したら、集中しすぎ→座りっぱなしが増えましたね。時計が「立て!」って知らせてくれるのですが。
B 時計ってApple Watchですね。
C 6〜7月は在宅勤務が終わらず仕事が捗らなくて焦ってて、いま思えばプチ鬱だったのかもしれない。それで8〜9月に意を決してレイアウト変更して、自宅に簡易オフィスブースを作って、仕事環境を整えました。
D 簡易オフィスいいなー。
A これわたしだけかもしれないんですけど、オンラインになったことでむしろ会社の人の目を気にするようになったですね。
B ?
A 取材で外を出歩いてるときは「あいつはいるんだかいないんだか」みたいな空気を出せてたんですけど、在宅ワークは家にいるのがわかるので、なんかつねに見られてる感じがして、緊張するようになったっていうか。
B Aさん、会社の目気にしてたんですか。
C 私も、Bさんと同意見です。
A 在宅だと仕事をさぼるのも気をつかうんですよ。
B 世界がコロナで殺伐としている中、ストレス溜めて病むぐらいなら…と勤務時間中にコーヒー飲みに行ったりはしてましたね。
A 今度その言い訳使っていきます。
C 会社に貢献すべきはPVを取ったり企画を取りつけてくることで、勤務時間や座ってる時間ではないので、精神バランスが壊れないように働いてますね。使ってなかったモンブランの吸引式万年筆を出してきて、発注数などを紙に書くようになりました。
A むちゃくちゃまじめじゃないですか。なんかすいません。
C 会議でQさんが、「気がついたら居間で1時間寝てた」と言ったら、Mさんが「寝たいときは寝るでしょオ」みたいに返して、2人でガバガバ笑ってたことがあって、気持ちが楽になったことはありました。
A 全然まじめじゃない人もいると。
C Qさんも、「Mさんは編集部でも寝てたじゃないですか」みたいな感じで。この編集部は人を責めたりしないので、なんか、居心地はいいですね。
A 私も居心地のよさに貢献していきたい。
●「取材に行くだけで、美術館に行くような楽しみが」
A さぼってるわけじゃないんですけど、前はウェビナー(ウェブセミナー)があるとき、開始15分前までにしっかり準備してたのが、最近は開始時間ギリギリにURLたたくようになってきました。
D 6月に「オンライン遅刻」しました。2分。
A オンライン遅刻!
D 別の原稿やってて、気付いたら時間がかなり経っていて、うっかり始まってしまってたという感じです。
C 私、似たようなことあったかも…
A ウェビナーとかウェブ会議ばっかりだと、たまに取材で外に出るだけでテンション上がりませんか、外だーー!!!!!!って。おまえは洞窟に捕らえられた囚人かってくらいに。
D 外取材に行くだけで、美術館に行く的な楽しみが生まれますね。自粛初期は、会社でのちょっとした雑談に元気をもらってる面があったってこともよく考えてました。
B 自宅勤務を命じられたばっかりの頃、自作PC担当のHさんがさびしくなってみんなに電話かけまくってたのは有名な話。
C ただ、知人に聞くと、広告業界やバイヤーさんはフツーに出勤続けてて…。「在宅鬱なにそれ」な感じですよ。かたや在宅にしない会社に抗議して退社した20代女性も2名いました。
A 在宅やってる会社、たしか3割くらいなんでしたっけ。
D たしかに、友だちと話すと「アスキーの労働環境はすごいしっかりやってるんだね!」みたいな反応が多いです。
C 美術館っていえば、気が向いたときにふらっと出かける場所だと思っていたんですが、事前に計画を練って予約しないといけないのがイヤですね、、
D わかりますねー。
A いろんなことがふらっとできなくなったですね。
D ハードルが上がっちゃってる。
A めし食うのも、遊びいくのも。
D でも、少しのことで嬉しいのは、感情のダイエットというか…喜びを感じるハードルも下がって、それはそれで心地よいかなという気もしてます。
A 日々のハレとケにメリハリがついたのかもしんないですね。
●「鍼灸に通うようになりました」
D 外食70%くらいからほぼ100%自炊に切り替えたら、食べるものに気をつかうようになって、体調よくなってきました。
C わたし、いままで90%自炊だったのですが、自分の味に飽きたのと、仕込む時間が勤務中?みたいになり、ご近所の外食を開拓しました!
A 「仕込む時間が勤務中?」ってわかる、いまホットクックが黒豆煮てますね。
D Cさん逆パターン!
C そうなんですよ、Dくんの逆パターンw 友だちと会食がなくなってお金を使わなくなったのと、ご近所の飲食がガラッガラなので、不便なので通ってます。
B ぼくもCさん派ですね、メリハリがなくなった分料理してると料理しつづけてしまうのでスパッと外食の日が増えた。
C 徒歩2分で行けるカレー屋とかがあってよかったです。
D あと風邪をすごくひきやすかったんですが、うがい、手洗い、マスクを徹底するようになったら、まったく風邪をひかなくなりました。
A 在宅最高では?
D 平常時、その辺が適当だったんだなと感じました…
B ぼくは逆に、鍼灸に通うようになりました。
A なぜ鍼灸…
B コロナと自宅勤務で心がだれてきて、家でずっと座りっぱなしだから、心の安寧と姿勢を正してもらうために鍼灸的な。
A こころの乱れ…鍼が必要な人意外といるかもしれないですね…
●ぬるい話は人類を救う
このあとも「猫飼いたい」とかSlackでぬるい話をしてきて、かなり気持ちがラクになった。在宅ワークだと自分のダメなところが見えやすくなり、気持ちがそこから弱っていく。私のように欠陥だらけの人間には特にしんどいものがあるのだが、ぬるい話やしょーもない話を見ていると、ああ私もこの世界に生きていていいのだという気持ちになれるのだ。ぬるい話は偉大である。これからも肩の力が抜けるようなぬるい話を発信し、人類の平安に貢献していきたい所存です。