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5つのテクノロジートレンドを掲げる「テクノロジービジョン 2020」、コロナ禍を受けアップデート

「企業が『テック・クラッシュ』を乗り切るには」アクセンチュアが提言

2020年08月20日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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「テクノロジーを活用するだけでは不十分」、企業のDNAに組み込むべきものとは

 4つめの「解き放たれるロボット(Robots in the Wild)」では、いまやさまざまな場所/産業にロボットが「解き放たれつつある」なかで、企業の対応範囲と責任を広げていく必要があることを指摘している。

 「トヨタ自動車が静岡県裾野市で計画しているコネクテッドシティ構想や、羽田空港での各種ロボットの活用事例からもわかるように、エコシステムの形成が大切だ。さらに、ロボットの継続的なテストと更新によって信頼を構築していくことも重要である。こうした取り組みを経て、ロボットがさまざまな領域に解き放たれることになる」(山根氏)

 また新型コロナウイルスの影響で、ロボットの導入が加速していることも指摘した。「いまは各業務プロセスにおける人間とロボットの最適な協働のあり方が模索されているが、将来的には個社に閉じるのではなく、企業を横断したデータ共有の仕組みを構築していくことが必要である」と山根氏は指摘する。

自社製品/サービスへの囲い込みではなく、広範なエコシステム形成がロボットを“解き放つ”カギになる

 最後の「イノベーションのDNA(Innovation DNA)」では、継続的なイノベーションエンジンを生み出すための要諦が語られた。山根氏は「ポスト・デジタル時代においては、テクノロジーを使いこなすだけでは不十分」だと指摘する。「サイエンスとテクノロジーを企業のDNAに組み込み、不可分なものにすることが大切」であり、である」とし、自社のテクノロジー成果を広く展開、偏在化させること、サイエンスの進歩を取り込んで業界に破壊的インパクトを与えること、“DARQ”テクノロジー(=分散型台帳技術、人工知能、拡張現実、量子コンピューティング)にいち早くリーチして将来の基盤を想像することなどが重要だと説く。

 DARQの活用事例として、スターバックスが自社のモバイルアプリやロイヤリティプログラム技術をライセンス化して、デリバリー特化型の次世代無店舗レストランモデルを共創する動きや、環境省と京都大学、デンソーが新開発のセルロースナノファイバーを活用して、鋼鉄の5分の1の重量で5倍の強度を持つ素材を開発した取り組みを紹介した。「イノベーションのDNAを実現するには、テクノロジーCEOの存在が必要になる」(山根氏)。

 また新型コロナウイルスの影響については、「パンデミックは、エコシステム全体に対するイノベーションのストレステストと位置づけられる。企業は世界とともに変わらなければ、常に遅れを取ることを意味する」とも語る。

自社テクノロジーを偏在化させること、先進的なDARQテクノロジーをいち早く自社ビジネスに組み込むこと

 アクセンチュアでも、これまではAIやデータサイエンスの専門部門を編成してケーパビリティを提供する体制だったが、こうした専門部隊を全社の中核に取り込み、コンサルティング事業の根幹に置く新体制へと移行したという。これを、イノベーションのDNAを実現している事例のひとつに位置づけた。

アクセンチュアでは先進テクノロジーを「専門部隊」として切り出していた組織から、コンサルティング事業の中核として取り込む組織へと進化させた

 まとめとして山根氏は、「テック・クラッシュを乗り切るには、共創を生み出す仕掛けや仕組みを考え抜くこと、“点”ではなく全体的視野でAIとの協働を前提とすること、失敗を前提としながら顧客価値を損なわないベータ版を提供すること、ロボットは導入に終始せず、実験の場を設けて継続的な成長を促すこと、イノベーションのDNAを創り、育て、文化として浸透させること」が大切なポイントだと総括した。

「5つのテクノロジートレンド」と、新型コロナウイルス対応から得られた示唆

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