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5つのテクノロジートレンドを掲げる「テクノロジービジョン 2020」、コロナ禍を受けアップデート

「企業が『テック・クラッシュ』を乗り切るには」アクセンチュアが提言

2020年08月20日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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“永遠のベータ版”スマートプロダクトはビジネス上のジレンマも生む

 人間とAIの協働を通じて、ビジネスのあり方を再創造する「AIと私(AI and Me)」では、79%の企業が「AIとの協働が不可欠である」としながらも、協働を前提としたAIありきの仕組みづくりを準備している企業は23%に留まっていることを指摘した。

 AIとの協働に取り組む先進的な事例も紹介した。たとえばボッシュでは、2025年までにすべての製品にAIを搭載する計画だが、同時にAIの意思決定を人間の支配下におき、説明可能性も担保する方針を明示している。またグーグルでは、文脈までを理解する自然言語処理技術をオープンソース化した「BERT」を提供している。

 フォルクスワーゲンとオートデスクでは、人間が決めた設計要件を制約条件としてAIがアイデアを提示し、設計デザインを進めるコラボレーションを実現している。アクセンチュア自身も、全社員にRPAのライセンスを配布し、ロボットと社員が連携しながら仕事を行うのが当たり前となる環境構築を始めているという。

 「新型コロナウイルスがチェンジメーカーとなり、社会におけるAIの受け入れを加速することになった。医療分野においては、医療従事者や研究者をAIが補強し、支援する利用例が増加している。今後は、高まるAIへの信頼を追い風として『人間中心のデザイン』がAI浸透の鍵になる」(山根氏)

フォルクスワーゲンとオートデスクでは、製品開発にジェネレーティブデザイン技術を取り入れ「AIと人間のコラボレーション」を実現している

 アクセンチュアによると、新型コロナウイルス感染拡大よりも前の調査では、人間中心のデザイン原則を導入している企業は37%にとどまっていた。しかし、パンデミックへの対応を通じて、その動きは増加するものと予測している。

 「Smart Thingsのジレンマ(The Dilemma of Smart Things)」では、スマート家電などのスマートプロダクトが“永遠のベータ版”になっていることを課題として挙げた。ソフトウェアアップデートによって製品購入後も機能追加ができる点は魅力的だが、企業にとっては永遠に完成しないベータ版製品をリリースし続けることでもあるというジレンマがある。

 「企業が“ベータ版”製品をリリースし続け、ユーザーの期待に応え続けることは、ビジネスの足かせにもなりうることもある。また、ベータ版に対する顧客の期待と不安を充足させるためには、一貫した製品体験に基づく信頼関係を構築すべきである」(山根氏)

 アップルやグーグルといった先進企業においても、この“永遠のベータ版”モデルがビジネスの足かせになっていると山根氏は説明する。アップルの場合、顧客体験やパフォーマンスの向上を目的にiOSのアップデートを実施したところ、旧機種でパフォーマンスが低下してユーザー訴訟が発生、和解金を支払うことになった。またグーグルでは、スマートデバイスの管理アプリを廃止して別のアプリに統合したところ、再登録が完了するまで製品が利用できない状態となりユーザーが反発。当該アプリの廃止を撤回する事態となった。

スマートプロダクトの“永遠のベータ版”モデルが、企業ビジネスの足かせになる事例も発生している

 もちろんスマートプロダクトの成功例もある。ロボット掃除機「ルンバ」を製造するアイロボットでは、製品のサブスクリプション化によって、顧客の「掃除品質に対する懸念」や「初期導入費用の高さ」といったハードルをクリアしている。

 山根氏は、新型コロナウイルスへの対策ツールとしても、症状の特定や患者の監視、研究活動や政府の対策に役立つ貴重なデータを収集できるスマートシングス/スマートプロダクトは活用されていると述べ、次のように指摘した。

 「こうしたプロダクトでは、短期的にはベータ版の足かせよりもパンデミックとの戦いが優先され、特例的に受容されている。ただし将来的には、ベータ版の足かせがより強くなるため、将来的な顧客の反発に留意する必要がある。スムーズに機能を導入するための検討が必要だ」(山根氏)

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