第53回
ほかのプレイヤーとつながり、お互いを助け合うシステムが魅力
「DEATH STRANDING」は、人とのつながりを疑似体験できる「人間賛歌=人間参加」型オープンワールドゲームの傑作
配達を妨害する存在と戦うべきか、それとも避けるべきか
もちろんアクション的な要素も用意されてはいる。非殺傷武器から殺傷武器まで、幅広い種類の武器が登場する。敵を殺傷するか、非殺傷するかはプレイヤー次第となっている。
個人的に気に入っているのはサムが常備する「ストランド(縄)」である。武器ではないのだが、サムを妨害する存在を拘束する際に役立つ。人の命を奪うことなく制圧できるため、自称平和主義者の私からすれば"神器"といってもいいぐらいだ。本作に登場する縄は、崖を上り下りする際の移動用ツールのほか、本作のテーマを象徴するメタファーとしても強い印象を与える。実に興味深いツールだ。
武器があるということは、サムを邪魔する存在がいることを表している。最初に紹介する配達依存症を患った集団「ミュール」は、配達中の荷物を奪うべく、サムを襲撃する厄介な存在である。"敵"とみなす人もいるだろうが、彼らの背景を知った途端、敵と呼称しにくくなった。ミュールたちが抱える事情を重く受け止めた私は、平和主義を貫くことにした(メインミッションは除く)。
従来のオープンワールド・アクションと違い、非暴力を貫くプレイが推奨されているように感じた。もし殺傷武器でミュールを倒してしまうと、死体から「BT」が発生するほか、場合によっては"恐ろしい事態"に発展する場合もあるからだ。平和主義を貫くもう1つの理由はここにあった。
配達中、BTがはびこる「座礁地帯」を突破する事態に何度も遭遇するはずだ。そもそもBTとは、あの世の住人的存在、いわば死者の存在である。生者を捕食(接触)することで辺り一帯が消滅する「対消滅(ヴォイド・アウト)」を発生させる。先ほど述べた恐ろしい事態とはこのことだ。
座礁地帯を突破する際、しゃがみ移動で忍びつつ、BTに接近しすぎたら息を止める必要がある(ちなみに、ストーリーを進めていくと対BT兵器を入手できる)。
BTは目に見えないが、「オドラデク」というセンサーがBTの存在を指し示す。これを頼りに座礁地帯を突破しなければならない。見えない脅威が蔓延るエリアを歩くのがあまりに怖く、この一時だけはホラーゲームをプレイしているような気分になった。サムと同じタイミングでこちらも思わず息を止めてしまうことも。
BTやミュールなどの存在に共通する対処法は、戦うか避けるかの二択となっている。戦うことで報酬が得られるが、デスストのストーリーに没入すると、苦労して戦う必要なんてないのではと思ってしまう。自身と相反する存在とどう向き合うか、はたまたどう対処するかはプレイヤー次第である。
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