オープンソースプロジェクトでアプリを開発
大きなポイントに見えるのが、Corona-Warn-Appがオープンソースプロジェクトであるという点だ。GitHubでコードを公開しており、誰でも閲覧できる。ここが、国民性を考えるとなかなか重要に思えるのだ(https://github.com/corona-warn-app)。
先ほどドイツはプライバシーに敏感と書いたが、オープンソースが大好きな国でもある。SUSE、LibreOfficeなどドイツ発祥のオープンソースプロジェクトは多い。そういえば、ミュンヘン市は2003年ごろ早期にマイクロソフト脱却を図ったことは話題になった(再び戻るようだが)。Linuxは一般にも普及しており、たとえば、私の知り合いのオルガン職人(ITとはあまり縁がない)もLinuxユーザーだ。理由は「商業主義のマイクロソフトがあまり好きではない」からだ。
Corona-Warn-Appのコードは10万人以上が閲覧しており、プロジェクトに関わった開発者の数は7000人以上。政府向けのオープンソースプロジェクトとしては最大規模なのだそうだ。
実際の声をいくつか聞いてみた。ある友人は「自分のスマートフォンは古すぎて対応していない」とのこと。別の知人は「ダウンロードしたけど信用はしていない。電車で15分も横にいない人からくしゃみが飛んだって感染するだろうし、アプリを全員が持っているわけではないから」と冷静なコメントをくれた。
もう1人の女性は、「政府や非営利団体がちゃんと評価とテストしている点」は大きいとコメントをくれた。周囲はみな使っているとのことだった。IT系のライターは、「監視の第一歩」としてインストールしていないとのことだった。
アプリの効果がどのぐらいあるのかはわからないが、ドイツはイタリアやスペインのように感染者が爆発的に増加しておらず、欧州の中ではコロナ対応に成功している。アプリのダウンロードも他の国よりも高いとなれば、コロナ対策では「優等生」と言える。
なお、アプリが機能して新型コロナの感染を予防できるためには人口の6割がアプリを使う必要があると言われている。これに対し、SAPの開発者らは、他にも様々な感染追跡手法(マニュアルも含め)があることを指摘し、「アプリだけに依存すると不十分だが、助けにはなっている」とコメントしている。
筆者紹介──末岡洋子
フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている
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