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奇をてらったわけではないその仕様に

1筐体に2種類のプレーヤーを収めたAstell&Kern「SE200」、世界初の試みの価値は?

2020年07月13日 15時00分更新

文● 佐々木喜洋 編集●ASCII

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マルチDACは奇をてらった仕様ではない

 あまりにマルチDACの仕様が強烈で、見逃されそうなポイントなのではじめに書いておくけれども、このようにSE200は基本がとても優秀で音楽に入り込ませてくれるデジタルプレーヤーである。つまり奇をてらっただけの製品ではない。

 さて、音質の差については手元にマニュアルを置いてAKM側とESS側を間違えないようにいろいろと聞いてみた。あえてそうしなかったと思うが、できれば端子近くにAとかEとプリントして欲しかったようには思う。端子の確認にはLEDライトの色でも判別ができる。クールなイメージのESSが緑というのはわかりやすいと思う。

 端的にまとめると、AKM側の方が力強く立体的でより先鋭だと思う。ESS側についてはやはりESSらしいドライでシャープな感じもあるが、SE100のようなESSっぽさはわりと控えめだ。むしろ聴きやすさが感じられる。着色感は両方ともに少なく忠実指向である。

 使い分ける具体的な例としては、たとえば銀線でリケーブルした高性能イヤホンとAK4499EQの組み合わせは、クラシックなどの柔らかめの良録音を聴くときは良いが、ときとしてシャープすぎてポップやアニソンなど、硬めの録音の際にはきつさを感じることがあった。こうした場合はESS側にするとより聴きやすくなるように思えた。もちろんこれはフィルター設定でも変わるし、イヤホンやケーブルでも変わる。実のところただの2通りではない。

 また、もっと漠然とした例として、しばらく聞いていて「あれ、この曲はAKM側の方が良さそう」とか「ESS側のあの感じで聞きたい」と思うこともあった。また、それでイヤホンを変えると、そのまた逆の感覚があることもある。これは測定器ではない人の感覚だからそういうものである。

 SE200で思ったのは、別のテイストで聴きたいと思った時にも、その取り替えがとても容易だということだ。

 アンプやDACモジュール交換式のプレーヤーでも似たようなことができるかもしれないが、外に持ち出すたびに、複数のイヤホンやモジュールを持ち運んで、この曲にはこの組み合わせを選ぶというのは現実的ではない。もしかするとそのうちに交換自体が面倒になってしまうかもしれない。だがイヤホンを隣の端子に差し替えるのが面倒な人はあまりいないだろう。

 SE200については、発表を見たときには多少戸惑いもあった。しかし実際に使ってみるとその音のチューニングの良さや基本的な音性能の高さ、そしてAKM側とESS側の取り替えの容易さなど、触ってみてよくわかることもあった。積極的に自分のサウンドを試行錯誤しながら追求していきたい人にぜひ聴いてもらいたいと思う。

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