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鳥居一豊の「コンパクトスピーカーが好き!!」 第4回

カナダ発のブックシェルフ、パラダイム「Premier 200B」の美しさ、忠実性

2020年07月10日 17時00分更新

文● 鳥居一豊 編集●ASCII

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カナダ国立研究機関と提携、高い技術力が特徴

 Premier 200Bの概要と技術的な特徴を紹介していこう。2ウェイブックシェルフ型で、ツィーターはアルミニウム素材で直径25mmのドーム型、ウーファーは高分子系の樹脂素材をつい直径165mmのコーン型だ。エンクロージャーはバスレフ式で、ポートは背面に備わっている。ここまでは、ごくごく一般的な素材を使用し、ユニットの直径なども標準的なものと言える。

 パラダイムというメーカーの特徴は、開発から生産まで一貫して行うほか、カナダの国立研究機関(NRC)と提携し、音響分野の研究開発を担う部門を持っていること。そのため、ほかにはない“独創的な技術”や“特許技術”を数多く保有している。もちろん、そうした技術はPREMIERシリーズにも惜しみなく投入されている。

Premier 200Bの外観。黒一色に見えるかもしれないが、側面が暗めの色の木目になっている。エスプレッソ・グレインと呼ばれる仕上げのほか、グロス・ブラックとグロス・ホワイトの3色がある。

Premier 200Bの前面と背面。ツィーター、ウーファーともにPPAと呼ばれる独特の穴あきレンズが装着されている。これが外観の特徴にもなっている。背面は、上部にバスレフポート、下部にスピーカー端子がある。前面と背面で横幅が異なっていることに注目。

Premier 200Bの側面。エスプレッソ・グレインの仕上げは焦げ茶に近い暗い木目仕上げとなっている。

Premier 200Bの天面。ゆるいカーブを描いた天面パネルが取り付けられている。奥へ行くほど幅を絞った形状になっているのが分かる。

Premier 200Bの底面。底面はフラットな形状だが、付属の樹脂製のインシュレーターを四隅に装着できる。

 外観の写真を見ると気付くのが、ウーファーの前面のカバーに美しい幾何学的な模様があしらわれていること。これがパラダイムの特許技術「PPA」(Perforated Phase-Aligning)。保護だけでなく、指向性や位相特性を改善する“音響レンズ”として機能する。この技術はPERSONAシリーズから受け継いだもので、外観上の大きな特徴でもある。価格は10倍近い差があるが、見た目の印象もかなり近い。同様のカバーはツィーターにも装着されている。

 ウーファー周囲には、これも特許技術の「ARTエッジ」(Active Ridge Technology)を採用。これもPERSONA譲りだ。一般的なエッジとは異なり、波を打ったような形状になっている。これにより、出力を3dB向上、歪みを50%低減しているという。小口径のウーファーで低音の再生能力を高めるには、ロングストローク設計(ウーファーの前後の動きを大きくする)で空気を動かす量を増やすのが一般的だが、歪みも増えやすい。そこで用いられる技術だ。

ウーファー部の拡大。幾何学的な模様に見えるパターンの穴が空いているカバーが「PPA」。音響部品なので、一般的な保護カバーと異なり、着脱はできない。

ツィーター部の拡大。こちらもパターンは異なるものの「PPA」テクノロジーで設計された穴あきレンズが装着されている。また、バッフル面の周囲はホーン状の加工が施されている。

 外観上は分かりにくいが、バッフルは2層構造だ。写真で見える外側のバッフルには、ツィーターとウーファー用のPPAレンズを装着、内側のバッフルはエンクロージャーと同じMDF材でウーファーが装着されている。ウーファーの振動をツィーターに干渉させない工夫だ。また、バッフル面の不要振動が放射されて悪影響を及ぼすのを防ぐ意図もあると思われる。

 天板のゆるいカーブを描いたパネルの装着や、エンクロージャー自体も奥になるほど幅を狭めた形状としているのは、内部の定在波の発生を抑えるデザインだろう。このように、かなり手間のかかる作りになっているのが分かる。このあたりは、ユニットの生産から組み立てまで一貫して自社で行っているメーカーの強みだろう。

 決して高価な素材や高価なパーツを使っているわけではないが、独自の技術を惜しみなく投入して設計・開発されているのだ。

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