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前田知洋の“マジックとスペックのある人生” 第117回

アフターコロナがどうなるか、マジシャンがシカケなしで予測した

2020年06月02日 16時00分更新

文● 前田知洋 編集●ASCII

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 マジックには「予言」というジャンルがあります。「どのトランプが観客に選ばれるか」を封筒の中に書いておいたり、競馬のレース結果を的中させたりなど、古くからいろいろなものがあります。

 もちろん、マジックだけでなく、占いから経済予測まで、人気のある分野なわけです。マジックの場合、タネやシカケがあるのですが……、今回のコラムでは、できるかぎり誠実に、インチキなしで書きますので、最後までお付き合いいただけたらと願っています。

 最後に予言トリックのタネあかしもありますので、お楽しみに……。

アフターコロナの2つのパターン

外出を避けるようになり、人通りが少なくなったニューヨークのタイムズ・スクエア

 今回の新型コロナウイルスの流行について、ひとつ断言できることがあるとしたら、感染や騒動の収束が早いパターンと、長引くパターンがあることです。もちろん、そこには政府や自治体の対応の柔軟性や早さも含みます。

 収束が早ければ、社会変化も少なく、影響も少なくなる。一方で、長引けば変化も大きく、さらに変化が新たな変化を生み、別の問題が発生することも……。

 それでは、とにかく収束が早ければすべて良いのかというと、社会変革としてはそうとも言えません。時代に合わずに淘汰されるべき慣習を見直す時間も取れず、変革が起きずに全体の競争力が鈍化するおそれがあるなど、弊害もあります。

 もちろん、筆者としても、早く収束することを願っていますが……。

 たとえば、早く収束した場合、変化の遅延が予測されるのは「紙問題」です。テレワークやリモートワークにようやく慣れたかと思ったら、デジタル化できない書類を閲覧するためにオフィスに行かなければならなかったり、捺印などが必要になったり……。

 実例をあげるなら、(ひとり10万円が受給できる)特別定額給付金のオンライン申し込みにおいて、マイナンバーカードの暗証番号の取得や変更などのために、役所の窓口に長蛇の列ができる……。そんなケースです。

いずれにしても変化が予測される4つのこと

テレワークの普及が叫ばれている中、筆者はビデオチャットの背景に、ホームユースのホワイトボードを利用

 収束が早くても長期化しても、起こるであろう4つの変化と、その根拠を列記していきます。

●影響が大きいマーケットがある

 人が密集するタイプの経済活動、たとえばスポーツクラブや娯楽施設などは大きな影響が出るでしょう。

 先日、東京都が発表した「休業要請緩和のロードマップ」(5月22日)でも、劇場や100人以上のイベントの開催はステップ3に分類されるほど後回しにされています(編注:6月1日から、ロードマップのステップ2に移行)。もちろん、旅行もそれに分類されます。

 集中して集客することで収益が上がるタイプの産業は少なからず影響を受けるはず。筆者の仕事のマジックもそのジャンルなので、かなり心配しています。

 コンテンツでいえば、劇場、イベント型からNetflixやAmazonプライムなど、オンデマンドタイプに消費へのシフトがさらに加速することが予測されます。

●今回の成功体験で現金保有率が高まる

 今回の騒動で「やっぱり、貯金をしておいて良かった」と実感した人も多いのではないでしょうか。その経験が成功体験となり、さらに消費行動が停滞することが予測されます。これはデジタルキャッシュも含みます。

 都内に広いオフィスを持つ企業であれば、オフィス面積の見直しが加速するでしょう。騒動後も、テレワークやリモートワークにシフトしたことによる合理化は継続されることが予測されます。

●個人の実力や評価が明確化する

 今回のテレワークやリモートワークの変化では、どうしても働く側の変化が注目されがちです。しかし、企業側にとってもテレワークによって、従業員の成果やアウトプットなどが視覚化できるようになりました。

 いままで、オフィスであれば「仕事ができそう」とか「プレゼンが上手いらしい」といった体感的なスキルがより高く評価されてきましたが、そうしたことに惑わされにくくなると予測しています。

 具体的には、「人から人」へのスキル評価から、文章力や写真、映像編集など「人→モノ→人」のスキルが評価されるようになるはず。さらに踏み込んでいくなら、「(クライアントや消費者に)成果があらわれる表現」が重要視される環境に変わるでしょうか。筆者としては、これは良い変化だと妄想しています。

●動くという習慣は根強く残る

 自粛に疲れ、気分転換に散歩や買い物に出るといった人間の行動は簡単には変わりません。それは、自粛解除が行われた途端、繁華街が賑わう事例でも明らかです。変化が起きるのは、習慣そのものではなく、行く場所の変化だと推測しています。

 気分転換に行く場所がショッピングセンターやテーマパークから、自然公園などに分散化されることで、人の集中が均一化する。そんな動線の変化が予想されます。

最後に予言トリックのタネあかしを……

 予言トリックのなかには、「マルチプルアウト」と呼ばれるメソッドがあります。これは結末を多く用意しておき、起きた結果にあわせて予言が的中したかのように見せる方法です。

 たとえば、「明日の株価が上がるか?下がるか?」を5回連続して的中させるトリックがあります。すぐ下にタネを説明しますので、ご自分で推理したい方は考えてみてください。

 タネをあかせば簡単なことですが、まず32人に電話をして、16人には「明日の株価は上がる」といい、残りの16人には「下がる」と予言しておきます。

 次の日、予測が的中した16人だけにもう一度電話をして、半数の8人には「上がる」、残りの8人には「下がる」とさらに予言します。それを繰り返すと5日後には、5回連続で的中した予言を伝えた、たった一人が残るはず。その人からすると、あなたは株の天才に見えるはずです。

 このトリックのポイントはperson-to-personのコミニュケーションです。電話なので、予言がはずれた人どうしの連絡がとりにくいところを利用しています。現代なら、SNSなどもあるので情報が拡散して通用しないかもしれませんが……。

 昔は詐欺にも使われたトリックで、株や投資にまつわる犯罪は重罪なので、絶対に悪用はしないでくださいね。

前田知洋(まえだ ともひろ)

 東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。

 著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。

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