異なるネットワークで同一のAPIが使える
フレームワーク
もう1つAI周りで重要なのは、フレームワークの存在である。フレームワークとは「ネットワークをメモリー中に格納し、そこに入力画像を与えて畳み込み→全結合の一連の過程を全部計算させ、最終的に結果を出力させるためのもの」になる。
世の中には実際にはたくさんのネットワークが存在する。下の画像はそのうちほんの一例だ。
ネットワークごとにメモリーへの格納の仕方や動かし方が異なると、「少しネットワークを変更して動きを確認する」のも大変だし、アプリケーションの側もネットワークごとにプログラミングを変更する必要があるのはいろいろしんどい。
そこで生まれたのがフレームワークというもので、異なるネットワークであっても同一のAPIで扱うことが可能になっている。このフレームワークもいろあるが、有名どころとして、下表あたりは名前を覚えておいても損はない。
有名なフレームワークの一覧 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
名称 | 概要 | |||||
Theano | フレームワークの元祖。さすがに最近は少し使われなくなってきた。 | |||||
TensorFlow | Googleの提供するフレームワーク。広く利用されている。最近はこの軽量版であるTensorFlow Liteや、さらにそれをマイコン向けに超軽量化したTensor Flow Lite for Microcontrollerなども使われている。 | |||||
Caffe | BVLC(Berkeley Vision and Learning Center)の開発したフレームワーク。こちらも広く使われている。この後継としてCaffe2というフレームワークがFacebookによって開発されていたが、これはPyTorchに一本化されてしまった。 | |||||
Chainer | 日本のPreferred Networksが提供するフレームワーク。国内では広く使われていたが、Preferred Networks自身が自社で利用するフレームワークをChainerからPyTorchに移行することを宣言、Chainerは新規開発を終わりメンテナンスフェーズに入っている。 | |||||
PyTouch | Facebookによって開発されたフレームワーク。こちらも広く使われている。 |
ほかに、インテルはOpenVINOと呼ばれる独自フレームワークを提供しており、インテルのCPU/VPU/FPGA上で動作するとか、マイクロソフトもCNTK(Microsoft Cognitive Toolkit)と呼ばれるツールキットを提供しているなど、けっこういろいろなフレームワークが世の中には存在する。
こうしたフレームワークをどこまでサポートするのか、というのもAIプロセッサーの差別化要因の1つとなっているのが現状だ。
ということで3回にわたって基礎的な説明をしたところで、次回からさまざまなAIプロセッサーを紹介していく。
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