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鳥居一豊の「コンパクトスピーカーが好き!!」 第1回

B&W「607」と聞き比べ、音の違いも詳しく紹介

英国ブランドのコンパクトスピーカーを聴く、タンノイ「Platinum B6」

2020年05月01日 15時00分更新

文● 鳥居一豊 編集●ASCII

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試聴曲:
「早見沙織/シスターシティーズ」
「ZARD/Forever Best」

 試聴では、主にボーカル曲を中心に聴いた。音楽ジャンルは多岐に渡る。なるべく多くの人が聴いているであろう曲の方がインプレッションがわかりやすいと考えたため。今のところは、人気のある曲から試聴曲を選ぼうと思うが、いくつかの曲は定番の試聴曲として固定することも考えている。

 試聴に使った機器は、再生機器がMac mini+Audirvana Plus、D/AコンバーターがCHORDのHugo2、パワーアンプがアキュフェーズのA-46。D/Aコンバーターとパワーアンプを直結し、音量調整はHugo2のボリュームで行っている。自宅の試聴室のシステムの流用だが、スピーカーに対してやや高価な製品が多く、プレーヤーやアンプ選びの参考になりにくいので、アンプについては次回リファレンスとなるモデルを選定して紹介する予定だ。

B&W 607の試聴イメージ。スピーカーとスタンドの間には、J1プロジェクトのインシュレーター「IDSコンポジットA25R-J/4P」を使用している。

 まず聴いたのは、「早見沙織/シスターシティーズ」。声優としても人気の早見沙織のアルバムで、すべての作詞を早見沙織が担当している。アニメ作品では清楚なお嬢様のような役を担当することが多いが、アルバムを聴くとイメージが大きく違っていて驚いた。澄んだ声質ではあるものの、なかなかに芯の通った力強い歌声で清楚とか華奢な感じではないし、曲のバラエティーも豊かで歌唱力も本格的だ。

[試聴曲1]早見沙織/シスターシティーズ(96kHz/24bit FLAC)
moraなどで配信中

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 ジャズ調のアレンジがされた「yoso」を聴くと、B&W 607は思った以上に低音が出て、リズムの刻みもしっかりとしているし、なにより歌声が力強い。声の強弱、テンポの抑揚がしっかりと出て、グルーブ感豊かな歌い方になる。音の定位の良さは見事なもので、スピーカーの間に鮮やかにボーカルが浮かぶし、音像もくっきりとしている。「ザラメ」での声に付加されたエコーやコーラスの描き分けも鮮明で、微小な情報まできめ細かく再現している。こちらの曲はしっとりとした調子だが、そんな落ち着いた曲は過度にパワフルにすることはない。曲の雰囲気に寄り添い、忠実感のある再生をする。

 今度はタンノイのPlatinum B6。こちらはボーカルの再現の仕方が大きく変わって面白い。声の厚みをしっかりと出しながら、より情感豊かに歌っている印象になる。歌声や歌い方もより豊潤でリッチな感触になる。ベースやドラムのリズムも量感が豊かでリズミカルでありながら落ち着いた感じで、声を中心として中音域が充実したバランスだ。一方で、ボーカルのエコーなどのエフェクト、コーラスの描き分けは607の精密さに比べるとやや曖昧になる。低音も量感のある余裕のある鳴り方だが、最低域の伸びは607の方が優れる。ただし、607は全体に引き締まった低音なのでキビキビとしたリズム感にはなるが、Platinum B6の方が落ち着いて楽しめる心地よさがある。

 大きな違いとして、低音の鳴り方がかなり異なっているとわかったので、聴き慣れた大編成のオーケストラ曲などを聴いてみたが、やはり607の方が低音の伸びはよく、コントラバスの低音の弦楽器のパートを音階まで正確に描く。Platinum B6の方はコントラバスの低音やティンパニのドロドロッと鳴る連続音はやや曖昧さもあるが、コントラバスの胴の鳴りや低音がホール全体に響く感じがよく出て、大編成のオーケストラらしいスケール感がある。

 オーケストラが並んだステージの再現という意味では、一つ一つの楽器まで精密に描く写実的な描写をする607に対し、個々の音をつぶさに描くよりも音楽全体がホールに響く感じで鳴るのがPlatinum B6というイメージだ。あくまで比較なので、単純に607が量感の足りない痩せた音になるわけではないし、Platinum B6が定位の甘い大味な鳴り方というわけではないが、両者を比較するとこうした印象の違いになる。

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