あらぬ方向に進んだAvago
HPの祖業を今も守るKeysightと対照的に、まったく違う方向に進んでしまったのがAvago Technologyである。連載556回で書いた通り、AgilentのSemiconductor Products部門がKKRとSilver Lake Partnersという2社のファンドにより26億ドルで買収され、Avago Technologiesとして独立企業になった。
当時AgilentでSemiconductor Produictsを率いていたのはDick M. Chang氏で、Chang氏はそのままAvago TechnologiesのCEOの座に就くことになったが、2006年にChang氏は会長に就任(2010年に退任)、CEOにはHock E. Tan氏が就いた。
Tan氏はもともとICS(Integrated Circuit Systems)というクロックバッファなどを扱っている(その筋では)有名なメーカーのCEOを務めていた。
ICSは2005年にIDTに買収されるが、その際にTan氏はIDTの会長になったものの、実務からは離れる格好になり、その代わりにファンドに招かれて2006年3月からAvagoのCEOに就任した。
ちなみに2005年当時のビジネスはWireless Communications・Wired Infrastructure・Industrial/Automotive Electronics・Computing Peripheralsの4部門に分かれた形で、ディスクリート製品からASICまで幅広く手掛けていた。
ただしここから、Avagoはビジネスのラインナップを一部入れ替え始める。2006年、ストレージ関連製品をPMC-Sierraに売却。またプリンター向けASICはMarvellに売却し、イメージセンサー関連はMicronに売却した。
さらにIR(赤外線)関連製品は2007年に台湾Lite-Onに売却している。その一方で2007年にはPOF(ポリマー光ファイバー)関連製品のビジネスを独Infineonから買収した。
ということで、新規株式公開を行なった2009年までの業績は下表の通り。こうしてみると、Agilentにいた時代から、売上はともかく利益の観点で言えばややお荷物に近い、あまり優良とは言えない業績だったことがわかる。
| 2019年までの業績(単位:ドル) | |||
|---|---|---|---|
| 年度 | 売上 | 営業利益 | 純利益 |
| 2003 | 13億500万 | -1億7500万 | -1億7700万 |
| 2004 | 17億8300万 | 7700万 | 7300万 |
| 2005 | 15億5900万 | 4800万 | 3100万 |
| 2006 | 13億9900万 | 9400万 | -2億2700万 |
| 2007 | 15億2700万 | -1億500万 | -1億5900万 |
| 2008 | 16億9900万 | 1億6000万 | 8300万 |
| 2009 | 14億8400万 | 4800万 | 4400万 |
2009年の新規株式公開では6億4800万ドルを調達したそうで、よくこの業績で新規株式公開が好評に終わったな、という気がするが、兎にも角にもこれでAvagoはファンドの指図を受けずにビジネスを始められる環境が整ったわけだ。
ただ新規株式公開の直後はまだそれほど状況は変わらなかった。2009年、Avagoは日本のネミコンを買収。またInfineonからBAW(バルク弾性波)フィルタービジネスを買収している。
2013年にはRF CMOSを扱っていたJavelin Semiconductorを買収する。2014年5月にはLSI Corporation(旧LSI Logic)を買収し、8月にはPLX Technologyを買収している。
その一方で、LSI Corporationが持っていたストレージコントローラー(SSDのコントローラー)ビジネスはSeagateに、またネットワークビジネス(Axxia Network Processorのビジネス)はインテルにそれぞれ売却している。
こうした若干の入れ替えで、2014年は売上こそ大幅に伸びたものの、買収にともなう経費の増加などもあってか、利益はやや落ち込んでいる。
このあたりまでは、まだAgilentというかHPの時代からの延長として考えられる範疇だった。2010年からは売上が伸びたら、きちんと利益も出せるようになっていたが、これは新規株式公開により自社製品に対しての投資がきちんと行なわれるようになったことが功を奏したからだ。
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事
-
第886回
PC
CFETの足を引っ張るPMOSを救え! imecが提案する新絶縁層と、あえて精度を緩める「Notch Alignment」の妙手 -
第885回
PC
TSMCも次世代「CFET」の全貌を披露! Forksheetスキップの背景と、世界最小6T SRAM実証で見えた2030年への布石 -
第884回
PC
Samsungが次世代CFETの試作に成功! IBMの10万ドル方式に対抗する、量産重視な「一括形成プロセス」のリアリティ -
第883回
PC
TSMCのA16プロセスの詳細が判明! 性能向上の主因はトランジスタではなく裏面電源供給(SPR)にあり? -
第882回
PC
IBMが0.7nmチップの製造に成功! 変態的CFET構造NanoStackの凄みと、あまりに高すぎる製造コストの壁 -
第881回
PC
同一周波数で消費電力18%削減! 進化した「Intel 18A-P」はどこが変わったのか? -
第880回
PC
次世代NVLinkの布石か? TSMCの光電融合技術「COUPE」がもたらすAIサーバーの光接続 -
第879回
PC
なぜAIには「光」が必要なのか? NVIDIAが解説するスケールアップネットワークの低遅延・省電力化戦略 -
第878回
PC
もはや銅配線は限界? 3200Gイーサネット実現に立ちはだかる200GT/秒の壁 -
第877回
PC
「不良品ゼロ」と「水冷NG」の狭間で。ルネサスが明かした車載チップレットSoCのリアル -
第876回
PC
このままではメモリーが燃える! HBM4/5世代に向けた電力供給の限界と、Samsungが示すパッケージ協調設計の解 - この連載の一覧へ












