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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第555回

RenoirはZen 2コアのまま消費電力を最大75%削減 AMD CPUロードマップ

2020年03月23日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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消費電力を最大75%削減

 Renoirは単にZen 2+Vegaで周辺回路を強化した程度か? というともちろんそんなことはない。最大の特徴は省電力機構にある。

 まずインフィニティー・ファブリックそのものは同じZen 2といっても、Matisseの場合はCPUチップレットとI/Oチップレットが別々のダイになっており、それなりに高い電圧で信号を送らないと減衰してしまい、これが理由で消費電力がやや大きいという欠点があった。

 ところがRenoirの場合は1チップのモノリシック構造なので、そもそもチップ外部にインフィニティー・ファブリックを引き回す必要がない。このため、バス幅を倍増させ、その一方でおそらく伝達速度そのものを半減させたことで、消費電力を最大75%削減できたとする。

 チップ内部だけで良ければ引き回し距離も大幅に減り、電圧も大幅に下げられるわけで、このあたりも効果的だったと思われる。

消費電力を最大75%削減。脚注を見ても「なにと比べて75%削減か」が書いてないのだが、文脈からしてMatisseとの比較ではないかと思われる(Raven Ridge/Picassoではなさそう)

 一方、下の画像はRaven Ridge/Picassoとの比較と思われるのだが、SoC周りの消費電力を大幅に削減できたとする。正確に言えば「SoCに統合されるCPUの電力管理メカニズム」で、インフィニティー・ファブリックのうちコントロール・ファブリックを利用して制御されている部分だ。

より高速にCPUオフ状態に入れるようになったほか、3次キャッシュのClock Gating/Power Gatingをより積極的に行なうことで待機時の消費電力を抑えた

 このCPUの電力管理に関して言えば、ACPI 6.3への対応も新しく追加された。

 通常待機状態になると、CC1(稼働中)→CC6(スリープ)→CPU Off/Vdd Off(シャットダウン)という具合にだんだん深い省電力モードに入るのだが、CC6はともかくCPU Off/Vdd Offまでいくと、そこからの復帰には結構な時間がかかる。そこでACPI 6.3では新たにLPI(Low Power Idle)ステートという値を追加した。

LPIステートそのものは複数定義可能(3つだけではない)が、ACPI 6.3の仕様にある実装サンプルが3つ(LPI1/2/3)で、これに合わせた形になっている

 例えばLPI1ならCC1より下には落ちず、LPI2ではCC6どまり、LP3だとVdd Offまで落ちるといった設定をしておけば、あとはOSが動作状況に応じてどのLPIステートにするかを選択できるというものだ。

 省電力性だけを考えれば常にVdd offまで落ちるのが一番省電力に見えるが、これが煩雑に繰り返されるようならCC6止まりにしておいた方が結果的に省電力という可能性もある。

 もっともこれにはOS側の対応も必要なのは当然で、現状Windows 10でこれがサポートされているかどうかは今回未確認である。別のスライドでは、WindowsのPower slider UIで調整できるかのように書いてはあるのだが、明示的にLPIを制御しているとは明言していないので、確証がない。

 実際にPicasso世代との省電力比較をした結果が下の画像だ。PCMark 10のApp Startup Benchmark実施中の動作周波数の変動とCPUのステートを見たものだが、CPU待機時間もRenoirの方がずっと多いし、CPU/GPU Offのみならず、Vdd Offの時間も圧倒的にReniorの方が長い。結果として、59%もの節電が可能になったとしている。

Picasso世代との省電力比較。もちろんRenoirの方がCPU性能が高い分、より早く処理が終わって待機に入れるという事情は当然あるのだが

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