DXをやろうだけでは、始まらない
その今井新社長は「DXという言葉は曖昧だと思っている」と語り、以下のように言い切る。
今井 「CX(カスタマエクスペリエンス)やOX(オペレーションエクスペリエンス)は、エクスペリエンスをXと表現しているが、DXのXは、トランスフォーメーションを意味しているのに、そのなかにXという文字はない。こじつけの言葉であり、それがバズワードになっている」
そして以下のようにも語る。
今井 「DXをやろうという言い方があるが、これは、20年前にERPを入れようといっているのと同じである。ERPを入れて何をしたいのかがわからないと失敗するように、DXをしてなにをしたいのかが明確でないと失敗する。また、デジタルという言葉に引っ張られて新たなテクノロジーやツールを導入しても、なにも変わらないのが実態だ。さらに、コンサルティング会社が、より真剣に、深く考えるほど、複雑化してしまうという課題もある。十分議論して、取り組みを開始したら、実現には2~3年かかってしまうことがわかり、成果がでないということもある」
「だが、DXというバズワードを実際のものにしていかないと、幸せな生活ができないということがわかっている。だからこそDXを成功させたい。これがRidgelinezの想いである。DXは、どうトランスフォームしたいのか、なにをしたいのかを明確にし、これまでとは違った形で、ビジネスモデルの結果を定義しなくてはならない。売上げを前年に比べて5%増やすことを目標とした場合に、それによって競合上のポジションが変わるのか、そこまでいれば利益率が急激に上がるのか。そのように意味のある数字ならば目標にしてもいい。DXは面倒な部分が多い。果実が得られなければ、目標が意味をなさない。DXの意味を、顧客とともにしっかりと考え、合意形成をしていくことが大切である」
DXによって、顧客や従業員などのステイクホルダーに価値を出せるのか、社会に対して価値を出せるのかというところに軸足を置き、なにをやるかを優先順位付けすることが大切だという。
今井 「やりたいことはたくさんある。軸足を置かないと優先順位がつけられない。これが、トランスフォーメーションのスタートラインになる」
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