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最新パーツ性能チェック 第287回

クリエイティブ系ソフトで「Ryzen Threadripper 3990X」の64コア/128スレッドをフルに使えるか検証

2020年03月18日 11時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集●ジサトラ ハッチ/ASCII

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Ryzen Threadripper 3990Xのパワーはクリエイティブ系処理にどう効くか?

 CPUの技術開発の歴史における名場面を語ってくれと言われたとき、貴方はどの時代を熱く語るだろうか? ある人はK5やPentiumあたりの自作PC黎明期の話かもしれないし、Celeon 300AMHzやAthlonでOCを楽しんでいた話も面白いし、1GHzの大台を突破するあたりのAMD対インテルの開発競争話も捨てがたい。しかし、2017年から現在に続く、AMDの“Zen”がもたらしたデスクトップ向けCPUの強烈な進化話も、名場面として今後語り継がれることは間違いない。

 AMDがもたらしたデスクトップ向けCPUの変革の中で、最も強烈な製品といえば、64コア(C)/128スレッド(T)という破格の規模を誇る「Ryzen Threadripper 3990X」だろう。2019年8月(=第2世代EPYCの登場)まで、この規模のCPUをシングルソケットでまかなえるCPUは存在しなかったし、同規模のコアを準備しようと思ったら、数百万のレベルの出費が必要だった。Ryzen Threadripper 3990Xも決して安いとは言えない(税込50万円弱)CPUだが、CPUの並列度が何より必要なユーザーにとっては、革新的なCPUであることは間違いない。

 Ryzen Threadripper 3990XはCINEBENCHのような並列性の高い処理においてはRyzen Threadripper 3970Xを大きく上回ることができる。しかし、その一方で「Media Encoder 2020」のようなエンコード系処理については、3970Xと大差ない、ということはファーストレビュー時に語った。

 Windows環境では1プロセスあたり64スレッドまでしか使えないという“プロセッサーグループの壁”に阻まれることもあるし、さらに言えば64スレッド(以上)に処理を分割して効率を上げられるか、という技術的側面も立ち塞がるため、Ryzen Threadripper 3990Xは「誰が使っても最強最速のメニーコアCPU」とは言えない。

 そこで本稿では、Ryzen Threadripper 3990Xのファーストレビューでは触れられなかったベンチマークを中心に、Ryzen Threadripper 3990Xの実用性についてさらに考察してみたい。

シングルソケットで64C/128T環境を実現できる「Ryzen Threadripper 3990X」。これにスペックで太刀打ちできるx86CPUは、現状AMDのEPYC位しか存在しない

128基もの論理コアがあると、タスクマネージャーのウインドウサイズによってはCPU占有率のヒートマップ表示が一覧表示できず、スクロールが必要になることも……

 前置きはこの辺にして、早速ベンチマーク結果の吟味へ入りたい。だがその前に検証環境を再掲しておこう。ファーストレビュー時の環境と全く同じだ。ビデオカード(TITAN RTX)のドライバーは“Studioドライバー”を使用している。Ryzen Threadripper 3990Xは定格運用時のほかに、BIOSでPBO(Precision Boost Overdrive)を有効化にした“軽めのOC状態”、ならびにSMTを無効化し64C/64Tで運用した状態(=論理コア数は3970Xと同じ)の性能もチェックした。

【検証環境】
CPU AMD Ryzen Threadripper 3990X
(64C/128T、最大4.2GHz)
AMD Ryzen Threadripper 3970X
(ES版、32C/64T、最大4.5GHz)
マザーボード ASRock TRX40 Taichi
(BIOS P1.30)
メモリー G.Skill F4-3200C16D-32GTZRX×2
(DDR4-3200、16GB×4)
グラフィック NVIDIA TITAN RTX
ストレージ GIGABYTE GP-ASM2NE6200TTTD×3
(NVMe M.2 SSD、2TB)
電源ユニット Super Flower Leadex Platinum 2000W
(2000W、80Plus Platinum)
CPUクーラー CRYORIG A80
(簡易水冷、280mmラジエーター)
OS Windows10 Pro 64bit版
(November 2019 Update)

CG系アプリなら128コアフル活用できるは誤り

 前回のレビューで最も印象的だったのは、CGレンダリングの処理性能の高さだ。Windows 10では、1スレッドあたり最大64スレッドまでしか使えないという「プロセッサーグループ」という機能がある。無制限にマルチスレッド化することによるオーバーヘッドの増大を防ぐ機能ともいえるが、「CINEBENCH R20(CINEMA 4D)」を初めとするCG系アプリでは、このプロセッサーグループの壁を越えて128スレッドをフル活用できるアプリが多い。

 そこで手始めとして、「Blender」によるCPUレンダリングの速度を検証してみよう。検証に使ったシーンは「berbarshop_interior_cpu」であり、1フレームのみをレンダリングする時間を計測する。

「Blender」のレンダリング中のCPUの使われ方。128スレッドフルに使ってくれる

「Blender」のレンダリング時間

 CINEBENCH R20だと、Ryzen Threadripper 3970Xの40%程度上のスコアーを3990Xがマークしているが、Blenderにおいては約30%程度時間が短縮されているので、ほぼ同傾向といえるだろう。PBOを有効にすると定格時よりも処理時間は20秒程度短縮されるが、アニメーションとして連続でレンダリング処理をかけた場合はPBOの効きが悪くなる(CPU温度の上昇や消費電力の制限に引っかかる)ため、差が縮まることが推測できる。Ryzen Threadripper 3990Xをしっかり冷やせる本格水冷用の水枕などを準備しない限り、PBOやOC状態での運用は厳しい。

 続いてはレンダラー「V-Ray」をベースにした「V-Ray Next Benchmark」でも試してみよう。CPUのみを使いレンダリングした時の結果(単位はキロサンプル=ksamples)を比較する。

「V-Ray Next Benchmark」も128スレッドをフル活用してくれた

「V-Ray Next Benchmark」の結果

 V-Ray Next Benchmarkの結果は大きいほど高速に処理できるという意味になるため、Blenderのグラフとは逆の意味になる。着順としてはBlenderや前回レビュー時のCINEBENCH R20とほぼ同じ傾向にある。ただRyzen Threadripper 3970Xを1とした時の3990Xの結果は約1.6。「スレッド数2倍だから結果が2倍」とならないのは、TDPを280Wに据え置いた故にクロックが抑えられているためだと考えられる。

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