Xeroxが敵対的買収を仕掛ける
さてそのHP Inc.であるが、2019年8月にWeisler氏が家庭の事情によりCEOを辞任、後任にはPriting部門のトップだったEnrique Lores氏が就くことが発表された。
画像の出典は、HP Inc.の“Board of Directors”ページ
まるでそのLores氏の就任を待っていたかのように勃発したのが、Xeroxによる買収提案である。連載539回の冒頭でも少し書いたが、Xeroxは2019年11月21日、HPを1株当たり22ドル(うち17ドルが現金で残りはXeroxの0.137株と交換)で買収するという提案を行なう。おおよその買収総額は330億ドルになる。
HPは直ちにこれを拒絶する。返答によれば「そもそも直近の12ヵ月の間にXeroxの売上は102億ドルから92億ドルに減ってるのに、330億ドルで買収したいって正気か?」(意訳)という、ある意味真っ当な意見である。
Xeroxはまったくあきらめず、今年1月には買収資金として240億ドルの借入を行ない、HPの株主総会で取締役の総入れ替えを狙うことを公言。
これに対抗してHPは150億ドル規模の自社株買収を含む、株主への配当強化を明らかにした。もうあからさまに敵対的買収の攻防戦になってしまった形で、Lores氏にはいきなり難しいビジネスの舵取りが求められることになった。
2月末に取締役会にRichard Clemmer氏(NXP Semiconductor B.V.のCEO)を招いたのは、企業買収に詳しい(Clemmer氏自身、Freescale Semiconductorを買収しており、その一方でQualcommにほぼ買収されかかったものの、中国からの買収承認が下りずに買収が破断になった)ことを買われてのことかもしれない。
このように、HPEに比べるとやや先行きが怪しいのがHP Inc.の現状である。ビジネス自身は順調なだけに、個人的にはこのままいってほしいところである。
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