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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第552回

敵対的買収の攻防戦を繰り広げる現在のHP 業界に多大な影響を与えた現存メーカー

2020年03月02日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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プリンターの売上がPCの売上を上回る

 このHP Inc.の売上を2013年からの範囲でまとめてみたのが下表で、おおむね500億ドル台の売上をコンスタントに実現している。

HP Inc.の売上(単位:ドル)
年度 売上 営業利益 純利益 Personal System Printing
2013年 552億7300万 35億1600万 51億1300万 321億7900万 241億2800万
2014年 566億5100万 42億5600万 50億1300万 343億8700万 232億1100万
2015年 514億6300万 39億2000万 45億5400万 315億2000万 212億3200万
2016年 482億3800万 35億4900万 24億9600万 299億8700万 182億6000万
2017年 520億5600万 33億6800万 25億2600万 333億2100万 187億2800万
2018年 584億7200万 38億3100万 53億2700万 376億6100万 208億5800万
2019年 587億5600万 38億7700万 31億5200万 386億9400万 206億6600万

 2016年だけ少し落ち込んだが、昨今はまたリカバーしてきており、その意味でも順調と言える。内訳は、Personal Systemsが大体300億ドル、Printingが200億ドルといった比率になっており、割合としても悪くない。

 ちなみに2019年の数字であるが、営業利益を部門別にみると、Personal Systemsが18億9800万ドルで営業利益率は4.9%、一方Printingsは32億200万ドル16.0%と段違いである。

 もっともPersonal Systemの営業利益率は2018年は3.7%、2017年は3.6%とさらに低かったことを考えると、これでも大分改善されたことになる。いかにPCビジネスそのものが儲からないかという話ではあるが、その中でもいろいろ努力してきたことがわかる。

 そのPersonal Systemの売上の内訳が下表である。昔のデータだとこうした詳細が記されていないので、いつからかという話ははっきりしないのだが、2013年の時点でノートPCはデスクトップの売上を上回っており、2019年にはほぼ2倍近い売上比率となっている。

Personal Systemの売上(単位:ドル)
年度 ノート デスクトップ ワークステーション その他
2013年 160億2900万 128億4400万 21億4700万 11億5900万
2014年 175億4000万 131億9700万 22億1800万 13億4800万
2015年 172億7100万 109億4100万 20億1800万 12億9000万
2016年 169億8200万 99億5600万 18億7000万 11億7900万
2017年 197億8200万 102億9800万 20億4200万 11億9900万
2018年 225億4700万 115億6700万 22億4600万 13億100万
2019年 229億2800万 120億4600万 23億8900万 13億3100万

 デスクトップの売上そのものが下がったか? というとほぼ横ばいで、その一方でノートの売上が順調に増えていった結果、という感じになっているのがおもしろい。またワークステーションはこれも20億ドルほどの市場規模が常に存在するというのも興味深い。

 謎なのは「その他」で、年次報告を見ても“Others”で括られて詳細が不明なのだが、11~13億ドルという数字は「その他」でまとめるには小さくない金額な気がする。おそらくは周辺機器(ドッキングステーションやハブ、ケーブル、USBストレージの類)と思われる。

 同様にPrintingの内訳を示したのが下表である。こうしてみると改めて「プリンターというのはサプライビジネス」というのがわかるが、もうインクやトナー、プリンター用紙などが圧倒的に大きい比率になっており、これに比べるとプリンター本体のビジネスはずっと小さいことがわかる。

Printingの売上(単位:ドル)
年度 サプライ コンシューマー向けプリンター ビジネス向け向けプリンター
2013年 157億1600万 24億3600万 59億7600万
2014年 149億1700万 23億4500万 59億4900万
2015年 139億7900万 18億7500万 53億7800万
2016年 118億7500万 23億5000万 40億3500万
2017年 124億1600万 24億1200万 39億7300万
2018年 135億7500万 27億1600万 45億1400万
2019年 129億2100万 25億3300万 46億1200万

 プリンター本体にしても、コンシューマー向けプリンターは毎年20億ドル程度に過ぎず、ビジネス向けの方が倍以上の市場規模になっている。

 もっともHPのビジネス向けプリンターやプロッターは、筆者もかつてお世話になった(建築用のA2図面などは、コンシューマー向けプリンではどうにもならず、HPのプロッターが必須になる)からあまり悪くいうことはできないのだが。

 余談であるが、この収益構造がわかると、主要なプリンタメーカーが互換インクベンダーのビジネスを潰しにかかろうとするのも無理ないのがわかる。要するにプリンター本体を売っても売上はさして大きくなく、それよりもインクの売上の方がビジネスにつながるからだ。

 そもそもこの「サプライで儲ける」ビジネスをスタートしたのがHPだけに、こうした互換インク対策もある意味万全である。

 HPはインクやトナー、そのカートリッジなどに絡めて4000件以上もの特許を取得し、互換メーカーには特許侵害として訴訟を起こすという形でサプライビジネスを守っている。

 実際、2005年にはInkCycleとの訴訟が和解Cartridge Worldに特許侵害を通告といった話がコンスタントに出てきている。

 これは別にHPだけではなく、キヤノンやEPSON、Brotherなどでも同じような話は耳にされたことが多いかと思う。

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