世界的にもトップクラスの規模を誇る格闘ゲームのeスポーツ大会「Evolution Championship Series(EVO)」。毎年ラスベガスで開催し、多くの格ゲープレイヤーがその頂点を賭けて競っている。
「EVO Japan」は、その日本版であるが、格ゲー大国日本で開催されるこの大会は、本家にも負けず劣らずなハイレベルな試合が見られる大きな大会だ。
今年度の「EVO Japan 2020」は、1月24日から26日にかけ、千葉・幕張メッセにて開催された。今大会の競技タイトルは、「BLAZBLUE CROSS TAG BATTLE」「SAMURAI SPIRITS」「SOULCALIBUR VI」「ストリートファイターV アーケードエディション」「大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL」「鉄拳7」の6タイトル。
今回、筆者はその中から「大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL(以下、スマブラSP)」の決勝トーナメントを取材してきたので、その様子をレポートしていく。
参加者約3000人の激戦を掻い潜った8人の猛者が激突
EVO Japan 2020は、参加費無料のオープントーナメントで、誰でも参加可能、そして当初は「参加人数の上限はない」としていた。
ところがその後、昨年11月29日に、公式サイトにて、会場キャパシティーを鑑みての安全確保の緊急措置として、スマブラSPのエントリー上限を3072人に設定するという記載が追記された。さらにその1週間後にはスマブラSPのエントリー数が上限に達したことが追記。もともと想定されていたエントリー人数を、スマブラSPが大きく上回ったのであろうことが伺える。
約3000人の参加者という今大会でも屈指の激戦区となったスマブラSPだが、そんなスマブラSPの、決勝トーナメントが開催されたのは、大会3日目・26日(日)の昼から。
3日目の決勝トーナメントは、勝ち残った上位8人によって行なわれる。今回、スマブラSPの頂上決戦を繰り広げたのは以下の8人だ。
選手名 | 使用ファイター | 所属 |
---|---|---|
Kome | シュルク | ー |
Tea | パックマン | ー |
Shuton | ピクミン&オリマー | SunSister(SST) |
Paseriman | フォックス | RayRoad Gaming(R2G) |
zackray | ロボット、ジョーカー、マリオ | GameWith(GW) |
KEN | ソニック | ー |
Raito | ダックハント、バンジョー&カズーイ | Thunder Gaming(TG) |
shky | ゼロスーツサムス | ー |
本試合は、EVO Japanの公式Twitchアカウントにて配信されている。実況・解説を務めたのは、Namataさんと9Bさんの2人だ。
それでは早速試合を……といきたいところだが、その前にまず、EVOのトーナメントルールについて一応解説しておきたい。
EVOは、格ゲー大会では一般的な「ダブルイリミネーション方式」を採っている。この方式は、平たく言えばすべての選手が“1回だけ負けてもまだ優勝するチャンスがある”ルールだ。
すべての選手は、ウィナーズブラケット(勝者側トーナメント)からスタートし、一度負けるとルーザーズブラケット(敗者側トーナメント)へと移動。そこで負けると敗退となる。
最後のグランドファイナルでは、1度も負けることなくウィナーズブラケットで勝ち進んだ選手と、トーナメント内でこれまで1度だけ負けたルーザーズブラケットの選手が対戦。しかしウィナーズブラケットの選手は、他選手と同じようにまだ1度だけ負けることが許されている。
つまり、ルーザーズブラケットの選手は、ウィナーズブラケットの選手にグランドファイナルで2回勝たなければならない。BO5(3本先取)の試合だった場合は、ルーザーズブラケットの選手が3本取ることで始めてお互いに1回負けた“リセット”の状態になる。ここから勝った方が優勝だ。逆にウィナーズブラケットの選手は、1試合だけ勝てば優勝になる。
今回、ウィナーズブラケットを勝ち進んできた選手は、Kome選手、Tea選手、Shuton選手、Paseriman選手の4人。彼らは1回負けてもまだチャンスがある。
対してルーザーズブラケットの選手はzackray選手、KEN選手、Raito選手、shky選手の4人だ。彼らは1回負けるとそこで敗退となる。
以上を踏まえたうえで、いよいよ試合を見ていこう。第1試合は、Kome選手とTea選手の試合だ。
Kome選手が使うのはシュルク、対するTea選手が使うのはパックマンだ。セミファイナルまでの試合は、BO3(2本先取)の形式で行なわれる。この試合では、1本目をKome選手、2本目をTea選手が取り、3本目に突入する展開に。
シュルクは、通常必殺ワザの「モナドアーツ」で、ファイターの性能を変化させることができる。「撃」にすると吹っ飛ばし力が強化されるが自分も吹っ飛びやすくなる、「斬」にすると攻撃のダメージ量が増えるが受けるダメージも増すなどだ。
高速で戦いながら切り替えるのは難しいのだが、見事なモナドアーツ捌きで一瞬の隙を逃さず撃墜まで持っていくKome選手。対するTea選手はパックマンの独特な飛び道具や消火栓の設置などを活かした立ち回りで追い詰めていく。
1本目、2本目序盤とも互角の展開に思えたが、2本目の中盤辺りから、パックマンの飛び道具が刺さる展開が多く見られるように。2本目の最終局面では、Tea選手の場外でのかなりアグレッシブな復帰阻止が決まり、2ストック残しでTea選手が勝利。
3本目では、Tea選手が1ストック先取したあと、Kome選手が反撃を焦ってしまったのか、復帰のミスで2ストック目も早期に落とし、1ストック対3ストックの展開に。Kome選手は1ストック取り返したものの、有利になったTea選手がそのまま勝利する結果になった。
2試合目は、Shuton選手とPaseriman選手の試合。使用ファイターは、Shuton選手がピクミン&オリマー、Paseriman選手がフォックスだ。
1本目序盤からの展開は、Shuton選手がピクミン&オリマーのコンボ火力を活かし、一気にダメージを稼いで1ストックを撃墜。2ストック目もコンボが入りShuton選手ペースかと思われたが、Paseriman選手がフォックスのスピードを活かした速攻でストックを取り返す。お互い攻撃性能の高いファイターだけあって、試合の展開が非常に速い。
1本目はお互いに2ストックずつ取り合い、ラストストックはShuton選手が勝利。続いて2試合目では、こちらも同様に速い展開の試合が展開される。
結果としては、Shuton選手が2ストック残しで勝利したものの、一瞬の隙を見逃さないPaseriman選手の思い切りのいい攻撃も確実に機能しており、瞬きした瞬間にどちらかが吹っ飛んでいてもおかしくないような、観客的にはハラハラドキドキな試合だった。
なお、ここまでの試合はウィナーズブラケットのセミファイナル。なので負けてしまったKome選手、Paseriman選手はルーザーズブラケットに落ちるが、まだ優勝のチャンスは残っている。
3試合目は、zackray選手とKEN選手の試合。zackray選手は、18歳という若さにもかかわらず、日本最強プレイヤーの候補として名前が上がることも多い、スマブラ界隈でも人気の選手。対するKEN選手も国内屈指の実力者として名が知れており、また両者は交友が深く対戦経験が豊富であることも知られている。
zackray選手は複数のファイターを使用するプレイヤーだが、今回はロボットを使用。対するKEN選手はソニックを使用する。
KEN選手は、高いコンボ精度やここぞという瞬間に決めるスマッシュ攻撃など、取れる場面はしっかり取る、といった感じでストックこそあまり離されなかったが、ロボットのロボビームやジャイロが機能し、ソニックのスピードを活かした差し込みが難しそうに見えた。zackray選手のファイターピックがうまくハマった形だろう。
zackray選手が試合の展開を握り続け、2本先取で勝利。詰将棋のような緻密な攻めや、ジャイロを駆使したコンボなどが印象的だった。
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