その会社にはその会社ならではの働き方がある。みんなの働き方改革・業務改善を追う連載「私たちの働き方カタログ」の第41回はエネルギー業界向けのクラウドサービス開発を手がけるパネイル。経営者と社員同士の距離を縮める社内ラジオについてパネイル代表取締役CEOの名越達彦氏に聞いた。
社内ラジオなのに仕事の話がない
スタートアップのように会社が急速に拡大していくと、経営者と従業員との距離はどんどん離れていく。もちろん、Slackをはじめとしたビジネスチャットのような環境も重要だが、物理的な距離やオンラインでは埋められない溝は絶対に存在する。これに対し、社内ラジオで社内コミュニケーションを活性化させたのがパネイルだ。
「パネラジ」と題された20分の社内ラジオ番組は、2019年8月にスタート。毎週金曜日に社内サイトで配信されており、拠点によってはオフィス内でも流されているという。番組中に質問が飛ぶなどけっこう盛り上がっているようで、「就業中にみんなニヤニヤしながら聞いてます」(名越氏)とのことだ。
内容は思い出話、トレーニングのノウハウ、恋愛論、グルメ、カルチャーなど多岐に及んでおり、基本的には社員の質問に社長が答えたり、逆にゲストの社員に質問したりといった形式で番組が進んでいく。収録にお邪魔したときは、プロの麻雀棋士という異色の経歴を持つ社内メンバーが登場し、雀士になったきっかけやプロの麻雀の世界について社長が聞くといった内容だった。要は社内ラジオでありながら、仕事の話だけではない普通のラジオ番組。「なんか業務の話とか出てこないんですよ。唐揚げにレモンをかけたらなんで怒られるのか、元カレが私のことをあきらめてくれないとか、別に社長に聞くことじゃないでしょう(笑)」と名越氏は語るが、まんざらでもなさそうだ。
始めてすでに半年近くが経つが、一番大きいのは社員との話題が増えたことだという。「懇親会で話すと、『社長、ラジオ聞きましたよ!』と言われて、話が弾みます。やっぱり会社が大きくなると、社長のキャラクターを知らない社員が増えるので、ラジオで社長を知ってもらっています」と名越氏もうれしそうだ。普段知らない社長の姿を知ることができ、相互理解が促進されるというのは大きなメリットと言える。
拠点の異なる社員同士のコミュニケーションにも一役買っている。パネイルはスタートアップのわりには、東京、大阪、名古屋、福岡と拠点が多く、社員同士のコミュニケーションに難を抱えていた。「普段、チャットでタイムラグなしにコミュニケーションをとっているのに、福岡のメンバーが東京メンバーにものを頼むときは、やっぱり堅苦しくなるんですよね」(名越氏)という状態。しかし、いったんゲストでラジオに登場すると、キャラクターとして認知され、話しかけられるようになるという。
社長の中学・高校時代はいわゆるラジオのはがき職人
もともとパネラジは社内報の企画で、社長への質問を募集したのが誕生のきっかけだった。社員から大量に集まった質問に答えるべく、広報が名越社長に取材をしたら大いに盛り上がったのだが、紙面の制約でどうしても一部しか取り上げられなかった。「1時半30分くらい取材するんですけど、まあカットされるし、編集されるし(笑)。だったら、これそのまま撮って出しで流してしまおうと」ということで、社長への取材をそのままラジオ放送するというアイデアが生まれた。
とはいえ、実現に向けた大きなポイントになったのは、名越氏のラジオへの想いだ。「中学・高校のとき、ラジオがすごく好きで、いわゆるはがき職人でした。FMでやっていた嘉門達夫のトーク番組が好きで、授業中までネタを考えていました。だから、自分の会社でラジオのDJできたら、おいしいなあと(笑)」ということで、障壁はまったくなくなった。
毎月2時間を収録時間として確保し、4本分を撮りだめているという。ラジオ好きとして、もちろん機材にもこだわっており、“名越セレクト”のポップオーバーマイクやミキサーなどを用意して、収録に臨んでいる。名越氏も、「最初はマイクスタンドもなかったし、音質という点でも物足りなかった。だから高額なコストはかけず、自分のできる範囲でそろえました。YouTuberやPodCasterが増えてきたことで、配信セットもお手頃になっているんです」とのことだ。
配信側がラジオ好きで、顔の見えるリスナーもおり、番組の企画も固まってきているので、半年経ったいまも継続している。「しゃべるだけなので、無理していないんですよ。僕も今日の予定にラジオ収録って書いてあるとテンション上がります(笑)。やっぱり楽しいんですよね」とのことで、楽しむことが続ける原動力になっているようだ。
会社概要
次世代型エネルギー基幹システム「PanairCloud」を通じ、エネルギー業界のデジタル化支援を行う。2016年4月より参入し、新電力8位のグループ実績を獲得した電力小売事業で培った技術とノウハウを活かし、2018年には東京電力エナジーパートナー社、丸紅新電力社とともに共同事業を展開。「PanairCloud」を基盤とした独自システムの提供と共に、企画やオペレーション機能も提供することで事業設計、立ち上げ、成長まで、一気通貫でサポート(ゼロ100事業)。事業パートナーとの長期的なビジネス開発とその強化に取り組む。
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