本当にそうなのか!? たゆまぬ研究の成果
去る10月、今年もノーベル賞の各部門が発表されましたね! 日本からは、『リチウムイオン電池』の開発を行った吉野彰さんがノーベル化学賞を受賞されました。おめでとうございます!
そしてこの連載でその中身をちょくちょく取り上げている“ノーベル物理学賞”ですが、今年は海外の3名の方が受賞されています。まず“太陽系外の惑星の発見”に対して、ミシェル・マイヨールさんとディディエ・ケローさんが、そして“物理学的な宇宙論における色々な理論的発見”に対して、ジェームズ・ピーブルズさんが受賞されました。おめでとうございます!
……が、受賞内容を改めて見ると、前者は「ほうほう、ふんふん、太陽系のほかにも惑星を見つけたんだね! なるほど」となりますが、後者は「……ほうほう、なんかすごいけど具体的に……なんなの!?」と、モヤっとなってしまった自分。以前のように、ニュートリノの発見や、ヒッグス粒子の発見であれば、固有名詞があって具体的に見つけたものが“すごい”ことがわかるのですが、今回は“宇宙論”とか“色々な”とか“理論的”とかでまとめられていて、すごくもやもや感が湧いてしまったのです! ここまで読み進めたみなさんもきっともやもやしますよね!? もうこれはもやもや感をなくさないと気が済みません!
と、いうわけで、まずは宇宙論から。宇宙論、というとなんだか壮大な難しい話のようなイメージがありますが、わかりやすくいうと“今の宇宙を語るうえのベース”のようなものです。みなさまご存じ、宇宙の始まり“ビッグバン”ですが、これも宇宙の始まりを述べるうえでの宇宙論です。そして神話や哲学など、様々な分野で宇宙論は語られるものなので、“物理学的”と頭についているんですね。
“色々な”、は最後に説明するとして、“理論的”とはなんでしょう。日常生活でも理論的に説明しなさい、と言われることがありますが、改めてこの理論的とはすなわちどんな感じ? と問われると「うっ……」となりますね。私は3歳児に対してよく言葉に詰まっています。これもわかりやすくいうと、理論的とは“個々の事実が体系化されて統一的に説明できるさま”です。つまり、ピーブルズさんは、今の宇宙を語る上で、そのお話が正しいと言える色々な事実を発見したんですね! 回りくどく説明してしまいましたが、よく考えるとこれってむちゃくちゃすごくないですか? 宇宙はビッグバンから始まった、という誰しもが知っている宇宙論に対して、理論的な観点からそれを確立できる発見をしたってことですから。もしこのような理論がなかったら、「ほんとにビッグバンで始まったの……? その証拠はどこにあるの……?」ってなっちゃいますからね。当たり前が当たり前でなかったころに、それを当たり前にするための研究をして事実を発見するとか、一般人の私には思いつきもしません。これが研究者としてノーベル賞を受賞する人間と、私たちの違いなんでしょうきっと。
さて、そんなピーブルズさんが発見した“色々な理論的なもの”を、わかりやすーく説明したいと思います。今では広く受け入れられている宇宙の始まりとなった大爆発『ビッグバン宇宙論』に対して、彼は理論的な観点からどのような発見をし、貢献したのでしょうか。138億年も前にあったことを、いろいろな研究や観測を用いて定説にするまでの中身をのぞいてみたいと思います。
まずは『宇宙マイクロ波背景放射(CMB)』の予言と、その理論的研究です。宇宙マイクロ波背景放射とは、空(天球)のあらゆる方向から飛んできているマイクロ波です。このマイクロ波が意味するもの、それが“ビッグバンの証拠”です。
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