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中の人が語るさくらインターネット第14回

大幅リニューアルでますます導入しやすく、使いやすく

フルSSD化を実現したさくらのVPS、クラウド時代も進化し続ける

2019年11月29日 07時00分更新

文● 大谷イビサ 写真● 曽根田元

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 専用サーバーとレンタルサーバーのいいとこどりを実現する仮想専用サーバー「さくらのVPS」。2010年に産声を上げてもうすぐサービス開始10年になるが、その間クラウドブームを横目に着実な進化を遂げてきた。フルSSD化や初期費用の撤廃という大きなリニューアルを果たしたさくらのVPSについて、サービス担当の2人に聞いた。

さくらのVPSの誕生を振り返る

 さくらインターネットの荒井健祐氏は大学卒業後、SIerで派遣エンジニアとして働いていたが、個人でのスキルアップのために使っていたのが、さくらのVPSだった。メールサーバーやDNSサーバーを構築し、業務利用の確認を行なっていた。その後、さくらインターネットに転職し、データセンターや専用サーバでの業務を経て、現在はさくらのVPSの保守・運用を担当している。「メンテナンス計画の策定や周知、トラブルシューティング、新機能の展開などを担当しています。壊れてしまった機材の故障や交換などを担当しています」(荒井氏)。

さくらインターネット 技術本部 ミドルウェアグループ グループマネージャ荒井健祐氏

 中国出身の黄炎晟氏は、中国の日系企業で5年くらい働いた後に来日。日本の大学を卒業した後に、大学の教授にさくらインターネットは「技術力もあるからいいよ」と紹介してもらい、さくらインターネットに新卒で入社した。入社直後は専用サーバーの開発をやっていたが、2010年にさくらのVPSの立ち上げを手がけたという。

さくらインターネット 仮想化基盤チーム さくらのVPSグループ シニアプロデューサー 黄炎晟氏

 VPS(仮想専用サーバー)は、物理サーバーを占有する専用サーバーのような使い方を安価に利用できるホスティングサービス。仮想化の技術によってリソースをユーザーごとに共用しながら、専用サーバーと同じく管理者権限で利用できる。2010年当時、国内でもまだVPSサービスは少なく、価格的にも高いイメージがあったため、安価なVPSが求められていた。当時、仮想化に否定的だった田中社長が方針を変換し、開発がスタートしたのがさくらのVPSだ。

 さくらのVPSは、仮想化基盤として当時まだ珍しいKVMを採用した。「ほとんどはVMwareかXenをベースにしていましたし、仮想化技術もまだ黎明期。われわれも当初はXenを考えていましたが、お客様もさくら自身も(Xenが非対応の)FreeBSDユーザーが多かったので、出たばかりのKVMを採用することにしました」(黄氏)。初期のKVMは不具合も多かったが、現在では技術的にも安定しているという。

安定性と柔軟性に高い評価

 こうして2010年9月にスタートしたさくらのVPSは、スペックやインフラ面をどんどん底上げしつつ、魅力的な価格を実現した。現在のさくらのVPSは最小プランが512MBメモリ(仮想CPUコア1・20GBディスク)で月額698円からと低廉で、サービスラインナップも豊富だ。「当初は個人のお客様が勉強や研究、開発で使うというケースが多かったのですが、法人ユーザーが増えてきたので、どんどん上位プランを出していきました。アカウント数は個人のお客様が圧倒的に多いのですが、売り上げは法人が全体の2/3を占めています」と黄氏は語る。

 10年近くなるさくらのVPSだが、評価が高いのは安定性と柔軟性だという。「他社も安価な競合サービスを出していますが、安定性は負けてないと思います」(黄氏)、「共有リソースですけど、さくらのVPSは制限が少ない。だから、使えるリソースをあまさず使い切れるようにというのが設計思想です」(荒井氏)。また、2015年からは「さくらのVPS for Windows Server」を追加しており、企業での利用が多いWindowsの需要にも応えている。

 利用用途は多彩だ。ルート権限をユーザー側に付与するVPSや専用サーバーは事業者側からも利用用途は見えないが、WordPressのようなCMS、Mastodonサーバー、Kubernetesのようなコンテナ、マイニングなどの利用が(お客様からの要望、問い合わせの傾向から)多いという。特にWeb制作会社やサービス事業者が顧客単位に仮想サーバーを立てる場合などは規模的には数百台になり、最大で数千台規模のユーザーもいるという。

 もともとさくらのVPSはレンタルサーバーに比べて、インフラの管理を意識した初学者や社内検証等での利用を考えているユーザーの利用を想定していたが、最近はユーザーの裾野が広がってきたため、使い勝手も追求しているという。「たとえば、スタートアップスクリプトを使えば、OSをインストールした後、アプリケーションが自動的に立ち上がるように設定できます。あと、コンパネ上からファイアウォールのパケットフィルタリングを設定できるようにしたり、外部ストレージとしてNFSストレージを使えるようになっています」(黄氏)。

 また、クラウドライクな拡張性も合わせ持つ。スケールアップ機能はホストサーバーを変更し、CPUやメモリ、容量などを増やすことができる。また、さくらのクラウドで提供している一部機能もVPSで利用できるようになっており、クラウドへの移行も対応している。「機能追加は年に1つか、2つくらい。監視機能、OSのバージョンアップ、使い勝手の向上などは毎月のように行なっています」(黄氏)。

フルSSD化、初期費用撤廃、ストレージも増量

 進化を続けるさくらのVPSだが、10月に大きなリニューアルを発表した。シンプルに言えば、初期費用がすべて無料になり、ストレージはすべてSSD化された。しかもストレージ容量は従来より増量され、既存ユーザーも同容量のままHDDがSSD化される。たとえば、もっとも低廉なメモリ512MBのプランの場合、ストレージ容量は20GBから25GBに増量。メモリ2GBのプランでは50GBから100GBに増量されている。

さくらのVPSのサービスサイト

 複数の仮想マシンが同じホストを共用するVPSの場合、HDDからSSDへの移行は大きなアドバンテージだという。「さくらのVPSでは、複数のお客様でなるべく公平にI/0を分配していますが、HDDの場合はアクセスが集中するとどうしてもスループットが低くなりますが、SSDはこうした課題がかなり解消されます」と黄氏は語る。

 背景には一昨年から進めてきたインフラの刷新がある。「昨年の末から老朽化したハードウェアを変更しているので、実は新しいハードウェアではすべてSSD化されています」(荒井氏)とのこと。新しいハードウェアになり、大容量や高速化が実現されたため、この恩恵をユーザーに還元したいというねらいだ。SSD化に関しては、コストが低廉になってきたのに加え、そもそもHDDの調達が難しくなってきたという事情もあるという。

 もちろん、HDDに比べた障害率もSSDは低いので、メンテナンスコストの低減にもつながる。「OSの不具合やCPUの脆弱性に対応する場合は、ホストサーバーの再起動を要求されます。その場合でも、SSDだとOSの起動やユーザーイメージの書き戻しが速いので、迅速に対応できます」(荒井氏)。

 あわせてさくらのVPS for Windows Serverも全プランで初期費用が不要になり、利用料金自体も値下げされた。OSの肥大化にともない、ストレージ容量も増量され、新たに32GBメモリのプランも追加された。今後、Windows Serverのサポート期限切れを見越して、利用も増えていきそうだ。

 サービスの性格上、VPSは差別化が難しいサービスだ。レンタルサーバーほど安くないし、専用サーバーほど占有できるわけではなく、クラウドサービスほど柔軟性が高いわけではない。その一方で、低廉な価格、柔軟性の高さなどをメリットに感じるユーザーからは強い支持を受けているのも事実だ。「VPSは個人から法人まで本当にユーザー層が幅広いサービス。今回、ハードウェアの基盤がリフレッシュされ、開発もしやすくなったので、機能拡充と使いやすさを追求していきたいと思います」(黄氏)とのことで、10年目を控えたさくらのVPSは着実にサービスを強化していくという。

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(提供:さくらインターネット)

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