●プログラミングの「二極分化」
── 親として、プログラミングについて知っておいたほうがいいことはありますか。
若い人を見ていると二極分化が進んでいる気がしますね。大学の同期に聞いた話だと、コンピューターサイエンス系の研究室に入ってくる学生のうち、プログラム経験者の割合が下がっているというんです。「コンピューターの経験はある」と言って入ってきても、「プレゼンテーションが作れます」とか「表集計ができます」とか、パソコンは使っていてもプログラミングではないことが増えていると。
── そうなんですか。深くコンピューターをいじってきたわけではないと。
1980年代はコンピューターとプログラミングの距離がすごく近かったので、わたしたちと同世代の人たちが入ったときは「プログラミングしたいからコンピューターサイエンスに入ってくる」という人が圧倒的に多かったんですよね。だけど今は「プログラミングは興味ないけど、パソコン使うのは好きだから来ました」という第三勢力の割合がかなり増えてきている。そのぶん相対的にプログラミングに興味があるという人口はかなり減っているんじゃないかと。
── プログラミング人口そのものが減ってきている。
そうなんです。でも、一方で、割合が減っている「プログラミングができる」という子たちの伸びはすごくてですね。ソフトウェアについての情報がすごく入手しやすくなっていて、オープンソースソフトウェアのコードも公開されている。いまならGitHubとかでコミュニティベースで開発が進んでいるところを目の当たりにできる。だから、できる子はものすごくできるようになってきた。たとえばU-22プログラミング・コンテストの審査員をしているんですが、最近レベルの上がり方がすごいんです。今年も中学3年生でプログラミング言語を作った子がいましたけど、ここ数年、かならず何人かプログラミング言語を作る子がいるんですよ。
── そんなに!
今年は一次審査を通ったものが40点あったんですが、そのうちの3つがプログラミング言語だったんですよ。経済産業大臣賞をとったBlawn(ブラウン)は、本人がすごく若くて目立ったということと、ネイティブコンパイルするという点があったんですけど、残りの2つの言語がダメかというとそうでもないんですね。で去年も2つプログラミング言語の応募があったし、その前も応募があって。
── そんなに怪物がゴロゴロいるのですか……
今年の応募は中学生、高校生、専門学校生で、去年の応募は2つとも高校生だったんです。2人とも「関数型言語の影響を受けました」と言っていて「まじかー」みたいな感じなんですよね。去年の子は「もともとロボットに興味があって片手間にプログラミング言語を作って応募したら通った」「まじかー」「今年は未踏にロボットで通った」「まじかー」……という感じで、ピークはすごく高いけど、全体の割合は減っている。山が急に高くなっている感じなんです※。
── 親にできることは教育よりも、子どもに過度な期待をかけすぎないことなんじゃないかと思えてきました。
上原くん(Blawnを開発した上原直人さん)を見てしまうと「うちの子もプログラミング言語!」と思ったりするかもしれないですけどね。あれはだいぶ上澄みなので、みんながみんなこうではないですよ、という感じはありますね。
※未踏:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)による人材育成事業。