業務を変えるkintoneユーザー事例 第66回
全国のkintone hiveで選ばれたファイナリストが頂上決戦
もっともインパクトのある業務改善は?「kintone AWARD 2019」開催
2019年11月12日 09時00分更新
使われなくなったkintoneを3種の神器で復活させた
5番手は、アソビュー プロ雑用 小林信也氏。アソビューは「ワクワクをすべてのひとに」をミッションを掲げて、全国の遊びを紹介するasoview.comというWebサイトを運営している。同社は、2016年にkintoneを導入したが、管理者がいなくなったり、誰が触ったのかがわからないアプリが発生したりして、社内でkintoneが嫌われてしまったという。そこで、小林氏になんとかすべし、と指令が下った。
小林氏は三種の神器を持って、モンスターと化したkintoneを討伐することになる。まずは、「頼みの鎧」。
「帳票アプリを見たら、アプリはカスタマイズされまくって、いろんなつながりをしていて、膨大なデータがテキストデータなんです。その間にもデータは増えていくので、頭を抱えてしまいました」(小林氏)
まず、kintoneについて知る必要があると考えた小林氏は、2017年のサイボウズデイズに来た。そこで学びを得て、その後もいろいろなイベントに参加するようになった。そこで、kintoneが役に立つと確認したので、会社のメンバーを説得することにした。
「実は、この仕事を受けるとき、kintoneを続けるか、別のツールに移るのかを含めて考えてくれと言われました。でも、確信を持ってkintoneで行きます、と話して取締役とカスタマーサービスの責任者にプッシュしてもらうことになり、ここで「頼みの鎧」を装備しました」(小林氏)
次に、kintoneを使って、何を実現するべきなのか、を考えたそう。そこで考えたのが「すべての業務のボトルネックをなくし、みんなが顧客に全力で向き合える環境を作る」ことだった。ここで、小林氏は「決断の盾」を装備した。従来のアプリを再利用したり改修するのではなく、すべてをゼロベースで再設計することにしたのだ。
アプリを作ったが、想定通りに行くのか? と「疑い」が頭をもたげた。
「疑いってネガティブな言葉だと思ってませんか? 違うんです。「疑う」は、探求というクエストというすごいポジティブなことなんです。そもそも興味がないと疑わないので、好奇心もあります。この好奇心をもって現場を観察しました」(小林氏)
現場の声を聞き、高速でPDCAを回すことで、なんと1.5ヶ月で生産性が290%改善した。その他にもメンバーから喜びの声が寄せられたという。
「目的にこだわることこそが、kintoneをうまく使いこなすコツだと目覚めました。ここにこだわれば、結果は自ずとついてきます。そして、見事kintoneが復活しました」と小林氏は語ってくれた。
ボロボロの状態からkintoneをインフラ化することでチームワークを実現した
最後に登壇したのは社ゆうぼく 代表取締役 岡崎晋也氏。ゆうぼくは「kintone×牧場」という珍しいプレゼンを行ってくれた。同社は1次産業から2次産業、3次産業すべてで事業展開を行っているのが特徴。牧場とその牛や豚の加工、販売、飲食などを手がけている。
岡崎氏は、2013年に入社したが、そこから50人の退職者を見送ったという。それまでメーカーで働いていた岡崎氏は、人の感情を気にせず、あらゆるものを合理的に是正していった。すると、1年後にはストライキ寸前の状況になってしまった。さらには、岡崎氏の靴の中に退職願を入れて去ってしまう人まで出たという。
さすがにまずいと思って、社員旅行や誕生日祝い、表彰、社員割引きなどの福利厚生を充実させた。しかし、次に問題が起きたときに一緒に解決していこう、となったときに「次は何くれますか?」と言われ、違和感を感じたそう。その違和感はすぐに具現化し、一斉退職によりレストランが休業に追い込まれたという。
「チームワークって何だと考えました。出した答えは、仕事そのものが楽しいことが一番大切で、まずは自分が自分らしく、そして一緒に楽しんでくれる仲間と仕事をすることだと思いました。それを実現するために必要だったのがkintoneだったんです」(岡崎氏)
紙やメールベースだった既存の作業をkintoneに置き換え、インフラとして活用した。さらに、kintoneがあるからこそ、実現できることに取り込み、付加価値を生み出すことに取り組んだ。このおかげで、全現場から全日報が流れ込んでくるようになった。数字はもちろんのこと、課題も把握できるようになり、管理の質が変わったという。
さらに、アプリを作っているときに気がついたことがあった。最初は、アプリに権限を設定し、それぞれが見られる情報を限定していた。一般常識でもあるし、会社の状況が筒抜けで恥ずかしいし、嫌なことは知らぬが仏、ということもある。しかし、そもそもコミュニケーション不足でトラブルが起きたことから、チームワークを改善することが目的だったことと矛盾することに気がついたのだ。そこですべての情報を解放することにした。
すると、部をまたいで情報の往来が起きた。「○店は客単価羨ましいですね、うちは客数では2倍勝っているのに・・・・・・」とか「○○の牛、結構いますね・・・・・・」といった声が上がってきたのだ。
牧場では牛の導入、肥育、販売、志望などの情報を扱うが、従来は紙やExcel、記憶で管理していた。しかしこれらすべてをkintoneの1画面に集約した。牛が死亡すると、すぐに岡崎氏のスマホに死亡の通知が届くようになった。従来は1ヶ月単位でしか把握していなかった情報がリアルタイムで届くようになったのだ。そのおかげで、問題を把握でき、危機感があるから改善が生まれたそう。
「私たちにとってのkintoneは、考えを表現し、伝える手段であり、様々な課題や情報を知る手段です。6次産業の私たちにとって、新たなチームのカタチになりました。これからkintoneで実現したいことは、情報の流れを加速して、チームワークをより強固にしていくことです」と岡崎氏は締めた。
全6社のプレゼンが終わった後、審査員である前年の「kintone AWARD 2018」のファイナリスト5人と、参加者の投票の結果が集計された。その結果、kintone AWARD 2019グランプリ獲得はゆうぼくとなった。
今年は、全参加者がプレゼンを大きくブラッシュアップしてきたのに驚いた。代表に選ばれたkintone hive以降の活動を報告してくれた人もいて、kintoneを有言実行で使い倒しているのだな、と感じた。経営者もしくはIT管理者なら頭を抱えてしまうような課題を、想いと行動力で解決してきた6社の事例は、これからkintoneを活用しようと考えている企業にとっては大きな助けとなる。
kintoneは決して万能ツールではないが、チームワークを強くし、業務効率を改善し、企業の課題を解決する一助になることは間違いない。グランプリを獲得したゆうぼくが、まさにその指針となることだろう。
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