業務を変えるkintoneユーザー事例 第66回
全国のkintone hiveで選ばれたファイナリストが頂上決戦
もっともインパクトのある業務改善は?「kintone AWARD 2019」開催
2019年11月12日 09時00分更新
2019年11月7日、幕張メッセでサイボウズデイズ2019が開催された。kintone hive tokyoでは、全国で開催されたユーザー事例共有イベントで支持の多かった6社が集結し、kintone AWARDファイナリストによる事例講演が行なわれ、グランプリが選ばれた。今回は、その様子を紹介しよう。

例年以上に盛り上がりを見せた2019のkintone AWARD。グランプリは誰の手に?
自己満足のkintone導入からユーザー満足度の追求で浸透に成功した
今回、登壇したのは6社。今年の2月から順に、名古屋、仙台、福岡、大阪、松山、東京で開催されたkintone hiveにて、プレゼン後の投票で選ばれた代表が集まり、最新のプレゼンを披露してくれた。各社それぞれプレゼンをブラッシュアップしてきており、1時間半のプレゼンもあっという間に感じてしまった。
トップバッターは、京都リハビリテーション病院の瀧村孝一氏。「ノンプログラマーの人生を変えたグループウェアkintone!?」というお題でプレゼンを行なった。

京都リハビリテーション病院 瀧村孝一氏
京都リハビリテーション病院は、救急車が来るような病院ではなく、回復期の患者がリハビリテーションを受けるための病院となっている。瀧村氏の営業活動により申し込みの数は増えたのだが、そのおかげで申し込みから入所までにかかる日数がどんどん伸びているという課題があった。全国の平均日数も超えてしまい、これでは患者に迷惑がかかり、評判にも影響してしまう。
理由は、電話でのやりとりと、その内容を入力するExcelファイルにあった。情報の共有が非効率で、書類を作るために毎日残業しても追いつかなかったのだ。

申込数が増えるごとに受入れ所要日数も延びてしまった
そこで瀧村氏はkintoneを導入する。さらには、使いやすいように、各種プラグインでカスタマイズした。しかし半年後、標準の画面に戻してくれとか、Excelと違うとか、そもそもkintoneを使いたくない、という声が上がってきた。そこで、瀧村氏は「自己満足に浸っていただけだった」と反省した。

半年後に、みんなから現実を突きつけられた
そこで自分ではなくユーザーを満足させるため、TiSの「ログインユーザー連動各種設定プラグイン」を導入し、ユーザーごとに画面を使いやすいようにカスタマイズできるようにした。アールスリーの「gusuku Customine」も入れて、各種入力の手間も省いた。さらには、Web会議ツールを使って勉強会も実施し、手厚いサポートも行なった。
そのおかげで、受け入れまでの日数は以前の水準に戻しつつ、申込数も増やすことに成功した。現在は、瀧村氏の名刺には「ICT Project Manager」という肩書きも加わっているという。

結果的に、申込数が増えても受入れ日数を短くするという結果を実現できた
がんばるのは逆効果! 従業員の心のスイッチを探すことが重要
2番手に登壇したのはイエムラ 代表取締役 家村秀也氏。同社は、ステンレス鋼の加工を行ない、ビル建築などに必要なドアや手すりなどを作っている。家村氏は、子供の頃から野球部に所属し、45歳までユニフォームを着ていたそう。ばりばりの体育会系だ。
「僕の身体の中には、がんばる、努力、根性が染みついています。それがよかったり、悪かったりします」(家村氏)

イエムラ 代表取締役 家村秀也氏
若い頃、メーカーの工事部に配属され、現場監督になった。そこで死ぬ気で働いたことで、仕事ができるようになったそう。そして、仕事ができるようになったら、楽しくなった。楽しくなると、仕事が好きになった。そこで、家村氏は、がんばれば達成するんだ、と思い込んでしまうことになる。
数年後、家村氏は父親が経営していた同社に戻った。ここでも、とにかく寝ないでがんばったのだが、売り上げは右肩下がりになってしまったのだ。家村氏は部下にも頑張りを求めたが、それでも回復しなかった。
家村氏はずいぶん経ってから、実はこの下げ率は、東北地方の市場規模の下げ率とリンクしており、業界全体が落ちていただけということに気が付いた。

死ぬ気で努力したことで仕事ができるようになり、ドーベルマンというあだ名まで付いた

市場規模の縮小にリンクして売上高も落ちていった
そんな状況を打破すべく、2年前に情報を共有するためにkintoneを導入した。しかし、また家村氏はがんばって、kintoneアプリの開発に没頭してしまう。
「プロトタイプを公開したら、めんどくせぇな社長、と言われました。ショックです。まずい、またやっちゃったと思いました。開発の途中からスタッフを入れることにしました」(家村氏)
そこでできたのは、粗利率の数値によってkintoneのセルを赤くするだけの案件アプリだった。しかし、これがみんなの心を変えた。粗利率が悪く、赤くなっているセルを社長に見られたくない、という意識が芽生え、KPIを意識して動くようになったのだ。このおかげで、売上高も経常利益率も向上した。
「仕組みを変えただけでは誰も動けないんです。僕だけが気持ちいいことになって、会社がよくならない。しかし、心が変わると、行動が変わります。kintoneを導入してこのことに気がつきました。スタッフの心が変わるスイッチは必ずあると思います。そのスイッチを探すという努力を最初にやると、もっとよくなると思います」と家村氏は語った。

がんばってアプリを作ったがまたもや空回りしてしまう

スタッフにも入ってもらって、粗利率を赤くしただけのアプリを作成した

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