最新パーツ性能チェック 第268回
NVIDIAのLow Latency Modeをハイスピード撮影で分析
SFVと鉄拳7でGeForceの超低遅延モードを地獄の100本ノック検証
2019年10月27日 20時15分更新
インプットラグの秒数ごとの分布でさらに分析
平均値だけではわかりにくいので、インプットラグの秒数ごとの度数分布を調べてみよう。つまり、100回小パンチを放った時のインプットラグで、どの値(単位ms)が最も出やすかった、あるいは出にくかったかを調べるのだ。最も背の高い山が左に寄っていれば、インプットラグが短く優秀な設定、ということになる。
デフォルト時に最も頻度の高かった(バーが長かった)のは95.83msだったが、V-SyncオンやNULL“Ultra”にすることで明らかに最頻値の山が左側にずれこんでいる。デフォルト時は85.42~89.57msもコンスタントに出ているので、デフォルト時でもそれほど悪い結果が出ているとは言えないが、V-SyncオンやNULL“Ultra”にすることで、より“短いインプットラグが出やすくなる”という傾向が「あるように見える」。
だが「あるように見える」レベルの結論では不十分だ。そこで「t検定」を用いてデフォルト時に比べて、「統計的に有意な差であるかどうか」を検証する。ここから先は小難しい理屈が出まくるがご容赦頂きたい。
今回有意水準pは5%(0.05)とした。つまり、帰無仮説を“デフォルト時とのインプットラグの差は存在しない”、対立仮説は“デフォルト時とのインプットラグの差(大小の方向は問わない)が有意に存在する”とした。下表の「p(T<=t)両側」の値が2.5%(0.025)より小さければ対立仮説が成立する。この辺は統計の教科書などを参照して頂きたい。
これによると有意水準5%の両側検定、即ち2.5%(0.025)より小さいp値を出せたのは、G-SYNCオン時とNULL“On”時のみ。つまり統計的に“違いが認められる”と認められたということだ。だがこれは“インプットラグ短縮効果あり”を意味するものではない。ここでもう一度インプットラグの平均値を見てみよう。
デフォルト時とV-Sync有効時とを比較すると、平均91.19ms 対 92.19msとなるようなデータは出たが、統計的に有意な差ではない。しかし、デフォルト時 対 G-SYNCやデフォルト時 対 NULL“On”で比較すると、その結果には統計的に“ほぼ間違いのない”差が出たと認められる。
つまり、インプットラグ平均値が91.19msから92.77msや93.38msへ長くなったのは偶然ではない。もっと言えば、V-SyncオンやG-SYNCオンでは「わずかだがデフォルト時に比べインプットラグが増えてしまった」ということだ。
ちなみにNULL“Ultra”は統計的にデフォルト時と差のある結果ではない、と判定はされたが、ヒストグラムを見る限りデフォルト時よりも頻度の偏りが強いように見える。これについて実際に箱ひげ図を起こして再考してみよう。
これを見るとNULL“Ultra”設定では、箱の縦の長さ(データの散らばり)がどの条件よりも短い。どの条件においても箱の中に全体の50%の値が入り、さらに言えば、仕切り線で2分割された箱の下の領域はどの条件よりも小さい。このことから、NULL“Ultra”ではより安定したインプットラグになる傾向がありそうだが、残念ながら統計的に満点のお墨付きは出せない感じ、といったところだろうか。
ただし、G-SYNCはインプットラグ的に逆効果であるという事実は新たな疑問を提示する。実はSFVはG-SYNCがドライバーレベルで無効化されており、グローバル設定でいくらオンにしようとも、アプリケーションのプロファイルで無効化されているのだ。
G-SYNCをグローバル設定で有効化し、SFVのプロファイルで無効にするとネガティブな結果を生んだのか、今回のサンプリング数でも足りないかのどちらかが考えられるが、今回はここまでとしたい。

この連載の記事
-
第471回
デジタル
8TBの大容量に爆速性能! Samsung「9100 PRO 8TB」で圧倒的なデータ処理能力を体感 -
第470回
デジタル
HEDTの王者Ryzen Threadripper 9980X/9970X、ついにゲーミング性能も大幅進化 -
第469回
デジタル
ワットパフォーマンスの大幅改善でHEDTの王者が完全体に、Zen 5世代CPU「Ryzen Threadripper 9000」シリーズをレビュー -
第467回
デジタル
Radeon RX 9060 XT 16GB、コスパの一点突破でRTX 5060 Tiに勝つ -
第466回
デジタル
Radeon RX 9060 XTは6.5万円でVRAM 16GBのお値打ちGPUになれたか? -
第465回
デジタル
遅れてやってきたPCIe5.0 SSDの大本命、リード14GB/秒超えのSamsung「9100 PRO」を実機レビュー -
第464回
デジタル
Radeon RX 9070シリーズの仕上がりは想像以上だったことがゲームベンチでわかった -
第463回
デジタル
Ryzen 9 9950X3Dは順当進化。3D V-Cache搭載Ryzenの最強モデルだがクセありな部分はそのまま -
第462回
デジタル
RTX 5070の足を止めた「Radeon RX 9070 XT/ 9070」レビュー -
第461回
自作PC
新たな鉄板M.2 SSD筆頭候補確実! 約2年半ぶりに登場したWD_BLACK SN7100がスゴい! -
第460回
自作PC
Arc B570でもRTX 4060/RX 7600は超えられるのか? ゲーム10本で検証 - この連載の一覧へ