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放送業界を事例としてデータ基盤と管理のあるべき姿を語る

テレビ東京、スペクティ、ネットアップが語るデータ活用とDXの課題

2019年10月24日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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ストレージ会社もSREや開発者に価値を与えなければ生き残れない

 4番手は、今回のイベントの共催であるネットアップ常務執行役員 CTO 近藤 正孝氏になる。20年に渡ってストレージを専業で手がけてきたネットアップの近藤氏は、DXに向かうユーザー企業、組織、ストレージの課題などを順繰りに解説した。

ネットアップ常務執行役員 CTO 近藤 正孝氏

 2017年、ネットアップとIDCは「DXに向けた企業の成熟度分布」という調査を実施した。これはDXに向けた成熟度にあわせて企業を5段階に分類したものだが、創造的破壊を実現すべく、データに関する定常的なフィードバックを持つ「THRIVERS」というレベルは11%に過ぎないという。経産省のDXレポートも成熟度レベルで組織を分類しているという点は同じだが、こちらはDXが実現できなければ、2025年以降最大12兆円の経済的な損失が見込まれるという脅し付きだ。「いずれにせよ、全社戦略に基づく部門横断的な取り組みがないと高いレベルにならない」と近藤氏は指摘する。

 ユーザー企業は既存システムの運用で手一杯で、カスタマイズでブラックボックス化しており、PoCから先に進まないといった課題を持っているという。また、ユーザー企業とベンダーでITエンジニアの比率も異なっており、米国ではユーザー7割、SIer・ベンダーが3割だが、日本ではまったく逆になる。受託開発が多く、システムを内製化していないので、そもそもDevOpsやアジャイル開発などがやりにくいのも課題だ。

 DX時代はITの組織も大きく異なっており、従来はアプリチームと運用チームといった具合にレイヤーごとに水平分割されてきたチームがインフラ領域を担っていたが、昨今はアプリやシステム単位でチーム分けされており、インフラチームはいわゆるSRE(Site Reliabirity Engineer)に変化しており、1つのDevOpsのベストプラクティスにもなっている。「Webサービス事業者にSREは登場しているが、エンタープライズにはまだまだ少ない。とはいえ、ストレージ会社のわれわれとしても、こうしたSREやアプリ開発チームに価値を提案していかなければ、生き残っていけないと感じている」と近藤氏は語る。

 DX時代にはデータライフサイクルも考えて直していかなければならない。最近はエッジと呼ばれるデータの発生源があり、データの用途にあわせてユーザーの所有するハードウェアやプライベートクラウドなどのコア、さらにクラウドなど必要に応じて可搬させる必要がある。特にオンプレミスのHadoop/Sparkをベースにしたデータ分析アーキテクチャは柔軟性に乏しく、クラウドにもつながっておらず、組織にあわせてデータ基盤もサイロ化しやすいという。

クラウドでも、オンプレミスでも、同じデータ管理を実現する

 DXに向かうに際してのさまざま課題に語った近藤氏は、ネットアップ自身のデジタルトランスフォーメーションについて解説を進める。

 グローバル企業である同社には350近いアプリがあるが、IT部門はこれらをビジネス上の価値、技術的な運用リスクで4つに分類した。いわゆる棚卸しである。戦略的に価値が高く運用リスクも低いものを優先で開発するという。「究極的にはITをすべてas-a-Service化していく。7割くらいはSaaSくらいで、残りは落ちても別のリージョンから起動するクラウドネイティブなアプリにしていく」とのことで、競争優位性のない分野は基本ありものを使い、価値が出せるシステムはクラウドアウェア・アジャイルな方式で開発していくという方針だ。

 また、同社が得意とするデータパイプラインに関しては、サイロ化を防ぐべく、柔軟性の高いデータレイク基盤を構築し、さまざまなパブリッククラウドとの連携を図る。ビッグデータに関しては、たとえばエクイニクスのようなデータセンターに設置されたストレージをコロケーションしておけば、必要に応じてクラウド上に転送することが可能だ。さらにAIを利活用するのであれば、NVIDIAの「ONTAP AI」のような製品もある。

 そして、こうした適材適所のデータ管理を実現するのが、ネットアップの「データ ファブリック」のアーキテクチャになる。4年間に渡ってAWSやAzure、GCPなど幅広いサービスに向けて拡充を続け、NetApp HCIのような製品でオンプレミスとも連携できる環境を構築している。選手にセンサーを取り付け、データドリブンなゲームを展開するラグビーチームのプロモーションビデオを披露した近藤氏は、「クラウドやオンプレミスのようにITスタックが異なる環境でも、データ管理だけは同じように扱える世界を目指している」(近藤氏)とアピール。クラウドバックアップやセキュリティ、データの階層化管理などもいわゆるSaaSとして展開するほか、Kubernetesクラスターをクラウドとオンプレミスで相互運用できるコンテナ管理サービスなどを紹介した。

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