このページの本文へ

エグゼクティブに聞いたネットアップのデジタルトランスフォーメーション

クラウドのアキレス腱を担うと決めたネットアップの覚悟

2018年11月16日 11時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 ラスベガスで開催されたネットアップの年次イベント「NetApp Insight 2018」では、Data Fabricの戦略を軸にクラウド、AI、フラッシュ、DevOpsなどの分野でいくつもの新発表が行なわれた。会場でのインタビューも踏まえ、同社の戦略やネットアップ自身のデジタルトランスフォーメーションについて見ていきたい。

パートナーとの連携強化 AI、フラッシュ、DevOpsにフォーカスした新発表続々

 4日間に渡って開催されたNetApp Insight 2018だが、デジタルトランスフォーメーションに必須となる「Be Data Driven」というテーマを主軸に据え、ネットアップはデータマネジメントカンパニーとしてさまざまな選択肢を提供するという立場を鮮明とした。キーワードとしては、クラウド、AI、フラッシュ、DevOpsなどが挙げられる。

 メインテーマはもちろんクラウド。「Support Every Cloud, Everywhere」のビジョンに基づき、あらゆるクラウド環境の利用を支援していく。基調講演にはMicrosoft AzureやIBM Cloud の担当者も登壇し、パートナーシップをアピールするとともに、オンプレミスとクラウドで統合的に利用できる重要さがアピールされた。

IBM Cloudとのパートナーシップも強化

 一方、虎の子であるストレージOS「ONTAP」は6ヶ月ごとにバージョンアップを続けており、新たに発表されたONTAP9.5でも数々の強化が施されている。パフォーマンスの強化はもちろん、データ圧縮の効率化、遠距離でのメトロクラスター、クラウドをまたいだデータの階層化管理、マルチサイトでのビジネス継続性強化、スナップミラーの同期、セキュリティ強化などだ。

 また、サーバー内の永続性メモリを用いることで高速化を実現する「Max Data」が提供されるほか、業界で初めてフラッシュのレイテンシ保証を提供する。これらはAI系のアプリケーションのデータ処理を高速化しつつ、オンプレミスやクラウドでも柔軟にAIを活用できる環境を実現するという。NVIDIAとの提携によって実現した「NetApp ONTAP AI」についても言及され、「シンプル」「統合」「パワフル」という点が強力にアピールされた。

NVIDIAとネットアップとの提携でAI向け基盤である「ONTAP AI」は実機も披露

 DevOpsに関しては、DockerやKubernetes、Red Hat OpenShift Container Platformに対応する自動プロビジョニングを実現する「Trident」を強化。クラウド上にONTAP環境を構築できるNetApp Cloud Volumes ONTAPがサポートされたほか、スナップショットを用いたバックアップとリストアも可能になり、マルチクラウド環境にも対応した。また、NetApp HCI上においてRed Hat OpenShift Container Platformの検証済みアーキテクチャが用意され、DevOpsに向けたプライベートクラウドにおけるコンテナ管理が容易になるという。

 さらに買収したStackPointCloudをベースとした「NetApp Kubernetes Service」の提供も開始し、業界初となるマルチクラウド対応のKubernetesプラットフォームを構築できるという。パブリッククラウド上でNFS/SMBサービスを提供する「NetApp Cloud Volumes for GCP」や「NetApp Cloud Volumes for AWS」も強化され、対応リージョンも拡大した。コンテナに関しても、さまざまな環境での利用を想定し、他者との連携を確実に構築している印象だ。

顧客はエンジニアリングパートナー 価値を毎日届けよ

 イネイブラーの立場であるネットアップ自体もデジタルトランスフォーメーションのさなかにいる。米ネットアップで営業組織をリードするヘンリ・リチャード氏は、「4年前にわれわれがData Fabricのコンセプトを披露し、AWSやAzureなどのハイパースケーラーはパートナーであると発表したとき、顧客は驚き、競合は震撼した」と振り返る。当初絵に描いた餅と思われた構想も、クラウドとの連携や管理を実現する製品が拡充され、パブリッククラウドとのパートナーシップを強化し、NetApp HCIのような新ジャンルにチャレンジすることで、いよいよ現実味を帯びてきた。

米ネットアップ ワールドワイドフィールド&カスタマーオペレーションズ エグゼクティブ バイスプレジデント ヘンリ・リチャード氏

 1990年台、エンタープライズストレージの営業は大企業の大型案件を獲得し、高価なストレージ機器を導入すればインセンティブが払われるというものだった。しかし、営業現場は大きく変わったという。「カスタマーサクセスを実現するためには、必ずしもハードウェアを売る必要はない。顧客の消費モデルを作り、テクノロジーで顧客をハッピーにしていくのがなにより重要だ。4年に1回の大型案件を狙うのではなく、顧客に価値を届けるべく、毎日売れと言っている」とリチャード氏は語る。

 ネットアップCIOのビル・ミラー氏は、IT部門のトップとしてデジタルトランスフォーメーションを実現するツールやインフラを整える責務を担う。「現在、展開している次世代データセンターのプロジェクトではオンプレミスのネットアップ製品とハイパースケーラーのクラウドを連携させ、自動化を推進し、エンジニアが自ら検証環境をプロビジョニングできるように設計している」と語る。

米ネットアップ CIO ビル・ミラー氏

 クラウド、オンプレミスにこだわることなく、データの可搬性を高めつつ、統一したセキュリティや管理性を確保していく環境を実現できるのが、ネットアップが提唱する「Data Fablic」の真の価値だ。「多くのワークロードはいまだにオンプレミスにあるし、プライベートクラウドも動いている。一方で、季節や時期で変動のあるモダンなワークロード、AIやデータ分析などはクラウドで処理されることも多い。このようにワークロードがどこにあっても、同じデータを利用できるようにするのが、ネットアップの役割だ」とミラー氏は語る。

 Data Fabricを現実化すべく、顧客との関係もパートナーへと変わった。今回発表されたドリームワークスとの戦略的な協業はまさにその好例であろう。「プロダクトの価値を市場でテストし、アクティブなフィードバックをもらうべく、お客様と共同でエンジニアリングしている。お客様とはある意味新しいカルチャーを作っていくためのパートナーになっている」とミラー氏のコメントは印象的だ。

 コラム等でたびたび主張していることだが、クラウドサービスの品質はストレージによって決まると言ってよい。クラウドというと拡張性や機能、コストに目が行きがちだが、可用性や性能とが安定したストレージ基盤を提供できる事業者こそユーザーの支持を得ることができる。基本機能であり、差別化要素でもあるのが、ストレージだ。今回、米国で開催されたNetApp Insightに参加して感じたのは、そんなクラウドのアキレス腱を業界唯一のストレージ専業ベンダーとしてきちんと担っていこうというネットアップの覚悟だ。

■関連サイト

カテゴリートップへ

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

アクセスランキング

  1. 1位

    ITトピック

    実用化が楽しみすぎるスマート技術たち 「長距離ワイヤレス給電」から「室内向け太陽電池」「超音波センサー」まで

  2. 2位

    ITトピック

    IT技術者の約半数が「AIの進化で転職を意識」/これから起きるのは「SaaSの死ではなく変容」/バックアップ市場は堅調に成長、ほか

  3. 3位

    sponsored

    AIインフラ市場“一強体制”を崩せるか AMDが「Helios」で体現するオープン戦略とフィジカルAIのラストマイル

  4. 4位

    デジタル

    kintone MCP Server とは?現在提供されている3つの選択肢をフラットに比較

  5. 5位

    データセンター

    IOWNによるGPU分散インフラ「GPU over APN」実証環境を開放 NTTドコビジが全国8拠点をつなぎ提供

  6. 6位

    デジタル

    買い切り型クラウド「pCloud」がDX総合EXPOへ CEO来日で日本展開を加速

  7. 7位

    sponsored

    「IT機器が高すぎる」「熟練メンバー不在で分からない」… 情シスさんの“現場の悩み”をエンジニア3人に聞いてみた

  8. 8位

    Team Leaders

    「SaaSの死」現場の8割が実感も、半数が“年間10%以上成長”と危機感先行

  9. 9位

    Team Leaders

    AIエージェントが顧客対応から“恋愛相談”まで マッチングアプリwithのCSを変えたチャネルトーク

  10. 10位

    クラウド

    顧客企業のビジネスを動かす「基幹系AI」を実現する 日本オラクルの2027年度戦略

集計期間:
2026年07月11日~2026年07月17日
  • 角川アスキー総合研究所