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放送業界を事例としてデータ基盤と管理のあるべき姿を語る

テレビ東京、スペクティ、ネットアップが語るデータ活用とDXの課題

2019年10月24日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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 9月26日、ASCIIは「忖度のないデータ基盤談義~データを味方に付けるDX時代の鍵~」のセミナーを開催した。登壇したテレビ東京、スペクティ、ネットアップはデータ活用に向かう市場とデジタルトランスフォーメーションへの課題を講演とパネルで語り合った。

IoTとAIが実用化され、第二次データブームが来たる

 今回テーマに掲げた「忖度のないデータ基盤談義」は、デジタルトランスフォーメーション(DX)で重要になるデータをどのように戦略的に扱っていくか議論するもの。動画配信事業者との競合・共創が加速し、大きなDXの波を迎えつつある放送業界をユースケースに、データ戦略やそれを支える基盤についてまさに忖度のない議論が交された。

 冒頭、登壇者について紹介したASCII大谷イビサは、IT業界は5年周期でデータブームが起こっている概論。ユビキタスからビッグデータに進んだ第一次データブームは、データサイエンティストやコンピューティングリソースの不足、ユーザー事例の欠如などにより大きなムーブメントにはならなかった。しかし、その後パブリッククラウドの本格的な普及と、IoTとAIの実用化が進んだことで、より実用的な第二次データブームが勃興していると指摘した。

角川アスキー総合研究所 アスキー編集部 大谷イビサ

 大谷は過去のアスキーの記事をひもときながら、SNSや決済、位置情報などのオルタナティブデータの市場拡大、グローバルでの利活用が進む衛星データ、IoTとデジタルマーケティングの融合、情報銀行という新しい業種の勃興などの具体例を挙げ、「データの活用が圧倒的にやりやすくなってきた」と指摘。一方で、ネットでの個人情報の扱い方を考える「デジタル倫理」の講演を引き合いに、無制限に進化するテクノロジーとのつきあい方にも警鐘を鳴らした。

とある放送局のエンジニアから見た放送業界のDXの課題

 続いて登壇したテレビ東京の段野祐一郎氏は、「とある放送局のエンジニア」「架空の放送局を舞台にした想像の出来事」という設定で、デジタルトランスフォーメーションとデータへの向き合い方を語った。

テレビ東京 IT推進局 配信技術部 兼 総務人事局 人事部 段野祐一郎氏

 2007年、テレビ東京に入社し、情報システム部門でGoogleAppsを導入し、全社DXの推進を進めた経験を持つ段野氏。その後、番組制作や動画配信などに関わった後、現在は視聴データのリアルタイムダッシュボードや社内教育、企画・推進、業務分析のためのBIの導入・運用まで幅広く手がけている。放送系やIT系、国内外問わず幅広くイベントに参加している段野氏は、「世界中のどの領域のコンベンション、カンファレンスでも最重要視されているテーマは『データ』であることは間違いない」と指摘。どのイベントでも個人の嗜好に最適化されたパーソナライズやデータ分析を行なわなければ、業界で生き残っていけないという危機感が見えたという。

 実際、段野氏が所属する放送業界においても、ネットの普及による視聴環境の変化、放送局自身のDX、そして第三者によるデータ提供など、さまざまな市場環境の変化により、放送局も扱うデータの種類も多種多様になってきた。番組や出演者、CM、編成などの放送局所有のコンテンツデータのほか、サードパーティからもさまざまな視聴データが得られるようになっている。昨今、急速に台頭しているAIやML(Machine Learning)を用いれば、こうしたデータから放送局が提供するサービスやコンテンツにさらに付加価値を生み出すことが可能になると段野氏は指摘する。

 たとえば、AI/MLで動画にデータを付与し、視聴データと組み合わせれば、「なぜこのシーンで視聴者が離脱したのか」など、より深い番組分析が可能になる。「今までの視聴率データを使った分析は1分単位での分析しかできなかったが、今では1秒単位で分析できる。そのシーンでなにが起こったかがダッシュボード上で確認できる」(段野氏)。こうした価値検証のみならず、動画内の広告視聴を計測するブランドモニタリングや動画内ショッピングなど新しい価値の創造も可能になる。つまり、利用可能なデータが存在し、AI/MLという利活用可能なツールがあり、分析や価値創造の事例もあるというのが放送業界の現状だ。

 であれば、すぐにデータ活用できるのでは?と思うが、それをブロックする要因はいくつも存在する。確実に起こるのは、目的や所管が部門ごとにさまざまななので「サイロ化」するという問題だ。「各部署のオーナーは全体最適ではなく、個別最適に走りがち。『分散化』というと聞こえはいいが、どこに何のデータがあるかわからない。全社的にデータが管理・統合(ガバナンス)されてない状況」と段野氏は指摘する。また、データがサイロ化すると、移動コストやツールが異なるため移動や運用のコストは上がるし、独自ID体系とデータ定義で運用されているので、連携や統合的な分析が難しい。「データベースのgenderという項目が日本語の「男性」だったり、「1」だったり、「M」だったりする。こういったことが多くなると連携に手間がかかり、活用も難しい」(段野氏)。

 全社的なデータ管理やガバナンス、明確な目的が欠如していると、分析や活用に必要なデータが取れていないという自体を生み出す。「映像分析では1試合まるごとの全体の俯瞰映像がほしかったのに、実際はヨリも含めたスイッチングされた映像しか残ってないケースはままある」(段野氏)。さらに情報漏えいやセキュリティインシデントも起こる可能性があり、第三者企業への提供時もデータを暗号化・匿名化しなかったり、誤送信するリスクもありうる。

 もちろん、これらの課題は放送業界に限らず、多くの日本企業で起こっていることだ。「ビジネスはスピードが命というのは事実だが、闇雲に走っても目的地に最速で行けるとは限らない。ようやく全体的な観点や統制が必要ということに行き着きました」と語る段野氏は、いったん立ち止まってデータアセスメントを実施してみることを提案する。

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