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スポーツとビジネスの距離を縮める意識改革が必要

2019年12月02日 06時30分更新

文● 萩原愛梨 編集● ガチ鈴木/ASCII 写真● 曽根田元

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スポーツ市場で新しいビジネスが生まれ育つには意識改革が必要

――テクノロジーによってスポーツ業界に変革を起こしていくわけですね。その実行のためにはどんなことが必要になるのでしょう?

 スポーツに携わる従事者、そしてスポーツを楽しむエンドユーザー、双方のスポーツビジネスの捉え方を変えていくことが必要だと思います。

 スポーツ業界では、”ビジネスに関わること=お金儲け”と捉えられてしまい、他の業界に比べ抵抗感が強いように感じます。具体的に言うと、ある学校の運動部を対象にSportipのツールの実証実験を検討したことがあったのですが、大変な交渉が必要になりました。相手には“学生スポーツがお金儲けに利用されてしまうのではないか”という懸念があったからです。

 これではスポーツ市場で新しいビジネスが生まれ育つことは難しい。また、一般消費者も “スポーツは無料で当たり前”と、サービスやビジネスとは違う捉え方をする方がほとんどです。スポーツビジネスの捉え方が変わっていかないと、スポーツ市場における資金の流れも鈍化してしまいます。

――Sportip社としても大変難しいフィールドで事業を展開していることになりますが、この状況を打破する策はどうお考えでしょうか?

 業界に向けての働きかけとしては大きく3つです。ひとつ目は、トップアスリート達に使ってもらい、AIによる動作解析の価値を体感してもらうこと。繰り返すようですが、やはりスポーツ業界ではトップの方が認めてくださることで、周囲も動き出すので、トップ層から働きかけていきます。

 2つ目に、スポーツ従事者を多く輩出し権威ある筑波大学と連携を取りながら、ネットワークを構築していくこと。

 3つ目には、成果を出せるプロダクトを作っていくこと。ただ分析の手間が省けるだけでなく、実際に選手のスコアが伸びたり技術が向上したりと、きちんと成果に貢献するプロダクトを作っていくことが受け入れられるためには必須だと感じています。

 また、エンドユーザーに向けては、改善する過程の可視化ですね。スポーツは結果や成果が現れるのが遅いものです。例えば運動中のフォームが悪かったとしても、自分ですぐに気付くことは難しく、しばらくして身体に痛みが出てきて初めて「フォームが悪かった」と分かる。また、スポーツクラブやフィットネスクラブでの運動でも、成果となる健康や理想のボティラインが手に入るまでは時間がかかってしまう。

 こうした問題も、解析ツールで動きを定量的に可視化することによって、ゴールの過程にある課題も見える化されます。目に見えるものを改善できるからこそ小さな達成を生み出すことができ、継続した喜びを提供していけるのでは考えています。仕掛けとしてゲーミフィケーションの要素を取り入れてもいいかもしれません。スポーツ中の新しい価値を創出することで、一般消費者もスポーツに投資する流れを作っていきたいですね。

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