3通りの見える化で年間5000件の問い合わせをさばく
100人100通りの要望が来るので、もちろん問い合わせは多くなる。サービスデスクには、年間5000件ほどの問い合わせが寄せられるという。そこで大切にしているのが、見える化。一般的なヘルプデスクでは電話やメールで依頼を受けているが、そうすると属人化が起きてしまう。メンバーの誰がどう対応しているのかわからなかったり、履歴が残らなかったり、と言うのはよくある話だ。
見える化にも3種類あり、誰にとって見えるようになるかが重要だと言う。1つ目が、チームにとっての見える化。サービスデスクの「IT窓口」アプリは全社公開されており、キーボードの購入依頼やモニターが映らないといった相談など、いろいろな依頼が寄せられる。IT窓口アプリにその内容が入力されると情シスに通知が飛んで、コメント欄で対応しながら問題を解決する。左側に問い合わせの内容を表示したまま、右側のコメント欄でコミュニケーションできるのがKintoneの便利なところ。さすが、サイボウズ、当たり前のようにその強みを活かしている。
「メンバーの対応状況がわかるので、過去の情報を参考に進めることもできるし、忙しい人が他の人にお願いするといったメンバーの交代が簡単にできます。絞り込み機能で未着手のレコードを出せば、対応漏れも防げます」(青木氏)
情報が全社で共有されることで、自ら判断して、助け合うチームになった。関係のない人から解決案が提示されることが増え、「横からすみません」が大流行しているそう。
2つ目の見える化は、依頼者にとっての見える化。よくある質問は「FAQ」アプリにまとめていまる。検索すればすぐに答えが出てきて、自己解決できるようになっている。IT窓口アプリにもFAQをリンクさせて、できる限り自己解決するように誘導しているそう。過去のFAQはデータベース化しているので、検索すれば似たような投稿が見つかるので、そこで解決することも多いという。
3つ目はリーダーにとっての見える化。通知欄にメンバーの対応の様子が流れてくるので、ツイッターのように状況を把握できる。メンバーの対応件数も自動集計してグラフ表示することもでき、作業負荷もすぐにわかる。
kintoneアプリで端末を管理したり要望を吸い上げている
メンバーに貸与している大量のPCやスマホもkintoneで管理している。特定の端末のレコードを開き、コメント欄で誰が使っているのかを確認することもできる。Excelで管理している企業も多そうだが、対応履歴を追えるのがkintoneの便利なところだ。また、リマインダー機能も備えているので、たとえばセキュリティーソフトを入れていないメンバーに自動で催促の通知を飛ばすこともできる。管理とコミュニケーションを同時に実現できるので、とても効率的だ。
要望の吸い上げにもkintoneアプリを活用している。ビデオ会議システムを全会議室に入れてほしいとか、PCの交換サイクルを3年から2年に短くしてほしいとか、在宅勤務用に自宅に置くPCを貸与してほしいといった内容を投稿するアプリが用意されているのだ。さらに、プラグインを利用して、そのレコードにいいね! を付けられるようにした。
メンバーが自分もほしいと思った要望にいいね! することで、手軽に同意を表明できるようになった。社内ニーズの高さが、数値で見える化され、上を説得しやすくなったそうだ。
「モンスターは実態のない思い込みです。高い端末を買いまくる悪い社員が出てくるんじゃないかとか、100人100通りの端末にしたら情シスの手間が増えるのではないか、と考えがちですが、やってみたら、意外とうまくいきました。情報システム部は守りの部署と言われますが、既存の概念に囚われず、攻めることによって組織が強くなって、ビジネスも成長していく、と思っています」と青木氏はまとめた。