業務を変えるkintoneユーザー事例 第61回
アソビューの“プロ雑用”が語ったのは事例ではなく方法論
使われなくなったkintoneを復活させるたった1つの冴えたやり方
2019年09月18日 09時00分更新
kintoneを復活させたたったひとつの視点と、3つの重要なポイント
目的にこだわる−−そんなの当たり前じゃないかと思う読者もいるかもしれない。確かに視点としては突飛なものではない。しかし、それを本当に徹底して行動に移せているだろうか。小林氏は「目的にこだわる」ために必要な行動にまでブレイクダウンして考え、実行していった。
「私が目的にこだわってkintoneを再生するために、実行したことは3つあります。1つは、アイコンとアプリ名を本気で考えること。2つめは、よく観察すること。3つめは、シンプルに作ることです」(小林氏)
アイコンとアプリ名は、そのアプリでどのようなことができるかを一瞬で理解してもらうための重要なパーツだと小林氏は言う。なんとなくでアイコンを選ぶのではなく、Webで公開されているフリー素材などをフル活用してわかりやすいアイコンづくりを心がけた。アイコンとアプリ名が一致するように工夫し、なおかつ類似のものと間違わないようわかりやすいアプリ名を選んだ。
「機能名を自由に設定できるサービスは珍しくありませんが、アイコンまで自由にできるサービスはkintoneしか知りません。これを活用しないのはもったいないと思います」(小林氏)
アプリ名やアイコンまで変えられるのはkintoneくらいしかない
kintoneを使ってもらう工夫は、こんなところにもあったのだと、これには筆者も反省。はじめから用意されているアイコンから適当に選んでいた。それでは伝わらないのだ。
2つめは、よく観察すること。ここでも小林氏は「観察」という単語をさらに分解して具体的行動に落とし込んでいる。観察とは見るだけではなく、現場の話に耳を傾け、集めたファクトを元に想像することだという。実際に小林氏は現場でアプリを使っている様子を見て、どのくらいの時間がかかっているか、使いにくそうな操作はないか探した。さらにヒアリングも行ない、改善要望を収集。定量データと定性データを集め、これらを元に改善された業務の姿を想像し、アプリを改善していったのだ。
観察とはなにか?掘り下げてみる
3つめは、シンプルにつくるということだが、これも「うちだってできるだけシンプルにしているよ」と思ってしまう読者が多いのではないだろうか。ところが小林氏の徹底ぶりはここでも発揮されている。まず、「シンプルとは、必要な要素をこれ以上削れない、というところまで絞りきること」と定義。アプリごとに「どのような人にどのように使ってもらい、どんな結果が欲しいのか」を突き詰めていった。このフィールドは本当に必要か? このデータは本当に収集すべきものか? ひとつずつ精査していった。
どう行動してほしいのか? どんな結果を得たいのか?
「単に数を少なくすればいいということでもありません。必要なものを必要なだけ置いてあげることが、本当にシンプルということだと考えています。項目数自体は問題ではないのです」(小林氏)
項目数が多くてもきちんと入力してもらえる実例として、小林氏はカスタマーサービスアプリを紹介した。カスタマーサービスでは電話を受け、履歴を確認し、新たな情報があれば入力してレコードを更新する。そのときの行動パターンに小林氏は注目。電話をしながら閲覧、入力する項目と、電話が終わったあとに入力する項目に大きく分けられることに気づいた。そこで、電話をしながら入力する項目をできるだけ画面の上部に集め、フィールドも数値やドロップダウンを多用した。電話が終わってから入力する項目は画面下方に集められ、フリーワード入力はこのエリアにしか置かれていない。行動パターンに合わせてアプリを作り込むことで、データをきちんと入力してもらえるようになった。意味のあるデータが集まるようになったので、データ活用も進んだという。
「kintoneは細かい調整ができないと言われることが多いのですが、そのおかげでシンプルで使いやすいアプリになります。また制限があるからこそアプリ制作の段階でロジカルに考えざるを得ないというのも、kintoneのいいところだと思います」(小林氏)
最後にポイントを振り返った小林氏は、何事にも目的があり、目的の先には実現したい理想があるはずだと語った。アプリが使われない、あのツールのせいで業務に時間がかかると言われるようなことがあれば、それはツールが悪いのではなく、目的がぶれているからだという。
そして、これだけ有用なことを語りきっておきながら、最後はこう締めくくられた。
「いろいろ言いましたが、今日の話はすべて忘れても構いません。アソビュー.comだけ覚えて帰ってください」(小林氏)
さすがは“プロ雑用”である。宣伝までそつなくこなしていった。

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