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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情第528回

ワークステーションをRISC設計に移行させたHP 業界に多大な影響を与えた現存メーカー

2019年09月16日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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VisionとFOCUS-IIの開発は
独立して進められていた

 Spectrumの話をする前に、前回の補足をしたい。HPの話題を取り上げているサイト「3000 NewsWire」を掘っていたら、おもしろい話題が出てきた。

 ComputerWorldの1985年10月7日号に、John Young氏(連載521回で触れた、Hewlett氏の後を継いだCEOである)のインタビューが掲載されているのだが、このインタビュー記事に関してStan Sieler氏(HP 3000シリーズのMPE/iXというOSの開発者)がいろいろと補足説明している話が出てきた

 Sieler氏曰く、Young氏はインタビューの中で「FOCUSをベースとしたHP 9000シリーズでHP 3000のエミュレーションをある程度まで可能だったものの、これは完成しなかった」としているが、実際には世間でいうエミュレーションではなく、単にFOCUS風に作り替えられなかった、という意味だとしている。

 そしてあるタイミングで、FOCUSの後継としてFOCUS-IIの開発もスタートし、これにSieler氏も加わったらしい。ちなみに前回触れたVisionは、このFOCUS-IIとは独立してスタートしたものだったようだ。

 こうした動きとはまったく別に、HP LabはRISC CPUの開発をスタートしており、1980年にIBMから移籍してきたJoel Birnbaum氏が彼のアイディア(IBM時代に考えたものの、IBMでは却下されたもの)を現実のものにする作業に携わった。

 ただ早い段階でVisionがRISC CPUに適さないことが判明したらしい。VisionはCISC CPU向けに最適化されすぎていた模様だ。

 いくつかのSpectrumベースのマシンの上でVisionが(HP 3000のエミュレーター/シミュレーター上で)動作していたそうだが、最終的にHPはVisionを廃止することを決めたそうだ。

 もっと早くにこの決断をしていれば、ソフトウェアの遅れは多少改善したのではないか? という気もしなくはないが、大規模なシステム開発中にこうした混乱が生じるのは致し方ないことなのだろう。

遅れに遅れたSpectrumの開発

 話を1985年に戻すと、9月ごろにHPが出したプレスリリースでは「1985年4月より、社内的にはシステム開発のために100台のプロトタイプが稼働している」と発表していた。またこの頃はSpectrumの新しいHPEというソフトウェアの詳細も明らかになっている。

 HPEはMPEの後継(MPEの説明は連載520回参照)で、HP 3000(というかMPE)互換のExecute modeと、Spectrum独自のNative Modeの2つがあり、両モードはProcedure Callという、要するにAPIにリクエストを出すことで切り替え可能になっていた。

 詳細な情報がないので断言はできないが、普通に考えるとHPEはアプリケーションをデフォルトでExecutive modeで実行するので、既存のHP 3000用のアプリケーションはそのまま実行できる。

 一方で新しいアプリケーションはプログラムの冒頭でProcedure Callを行なってNative Modeに切り替えることでSpectrum(とHPE)のフル性能を利用できるようになる、といった形になっていたのではないかと思われる。

 ちなみにこの当時、噂としてSpectrumは32の汎用レジスターを持ち、アドレス空間は2B(=31bit)になるのではないかと言われていたそうだ。

 1985年末のニュースレターでは、Spectrumは「Spectrumという名前の商品にはならない」と発表された。これは当然で、Spectrumはあくまで開発コード名である。ただまだ正式名称は発表されなかった。

 またSpectrumはIEEE 754互換の浮動小数点形式と、HP 3000互換の浮動小数点形式をサポートしたことが明らかにされている。

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