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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情第520回

多数の部門を抱える大規模組織に成長したHP 業界に多大な影響を与えた現存メーカー

2019年07月22日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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 業界に多大な影響を与えた現存メーカーのHP編。前回の続きとして、HP 3000シリーズを再建するところから話をする。

大不評のHP 3000シリーズを改修
OSのクラッシュが1日あたり48回から2回に減少

 派遣されたPackard氏はクパチーノのデータ部門を立て直すことに奔走する。まず最初にやったことは、最初のHP 3000を受け取ったユーザーから一旦製品を回収するとともに、HP 3000を初期発注したユーザーに対して(改良作業が終わるまでの間)無償でHP 2000シリーズを提供したことである。

 要するに時間稼ぎではあるが、初期発注したユーザーがHPに見切りをつけて他のベンダーに流れるのを防止したわけだ。

 次いで行なわれたのが、HP 3000シリーズの改修である。といってもハードウェアに手を付けるのは時間的に間に合わないため、まずはMPE(Multi-Programming Executive:OSの名称)の改修に全力を注ぐことになった。

 なにしろ売上が立っていない状態なので、HP 3000シリーズ向けのトレーニングやサポートの大部隊を抱えていても仕方がないわけで、こうした間接部門は直ちに削減された。当時70人からのメンバーがいたトレーニング部門は20人以下に減らされたらしい。

 また組み立て部門の統制を厳しくするといった対策もこの時期に取られている。従来は、組み立てラインの脇にコーヒースペースがあり、そこに集まった人々が組み立てラインにいろいろ口を出すということが普通だったそうだ。

 最終的にMPEのクラッシュは1日あたり48回(!)から2回にまで減り(これもどうかと思うが48回よりははるかに良い)、同時利用ユーザー数も最大8人まで強化した。

 その一方でマーケティング部門は、HP 3000シリーズの新たな売り方をやっと見出した。HP 2000シリーズの上位製品ではなく、IBMが1965年に発表したIBM 1130という低価格の科学技術計算用システムの対抗馬、という売り方に切り替えたことで、やっと性能/価格に見合う製品として評価されるようになった。

IBMの16bitマシン「IBM 1130」。性能はそれなりだが、リースで月額1000ドル未満、買い取りでも3万2280ドルという低価格マシンであり、それもあって広く利用された

 ちなみにHP 3000シリーズ、当初は9万5000ドルの価格を付けて発売されており、MPEを改良して1974年に発表されたHP 3000 model 100/200はそれぞれ12万9500ドル/18万5000ドルという結構なお値段だったので、その値段に見合うだけの性能はあった、ということだと思われる。

 このHP 3000シリーズのメモリーをコアメモリーに切り替えて低価格化(9万9500ドル)したHP 3000 CXシリーズも好評だったそうだ。

 もっとも、リリース後もまだいろいろ問題は残っていた。有名なところでは、“24-day time bomb”なる問題があった。これは内部のタイムカウンター(μsオーダー)が32bitで保持されており、約24日(231ミリ秒≒24.85日)でカウンターが一杯になってしまう。

 当然25日前にカウンターが0に戻るのだが、これをMPEでは正しくハンドリングできず、シャットダウンあるいはシステムクラッシュが発生。そして再起動すると日付が24日前に戻っている、という問題である。

 最終的にこの問題はMPEの大規模な修正が必要になるため、とりあえず顧客には週に一度マシンを再起動(Cold Start)するように指示をだして回避したらしいが、なかなか牧歌的な話ではある。

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