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業務を変えるkintoneユーザー事例 第60回

現場からの声で業務改善を進め、アプリ数はすでに90超え

kintoneファーストでデータ地獄・メール地獄から生還した第一法規

2019年09月09日 10時00分更新

文● 重森大

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 地獄。それは案外身近なところに、とても日常的にあったりする。手書きの紙に埋もれる業務環境脱却を目指してデータ化を進めた結果、大量のデータに溺れてもがくデータ地獄。メールのやりとりに忙殺される、メール地獄。いずれも業務現場では珍しくない光景だが、第一法規はkintoneを使ってこれらの地獄から脱却を果たした。

大量の紙に埋もれる地獄から、データ地獄、メール地獄にはまった人事部

 「データ地獄メール地獄に一筋のくもの糸 ~kintoneで解決する採用活動の課題~」というタイトルで事例発表をしてくれたのは、第一法規 業務改善推進部の杉浦 沙織氏。第一法規は法律系に特化した出版社で、全国10都市に拠点を持つ。kintoneとのつきあいは長く、発売から間もない頃に、営業日報管理のために導入している。現在は1万2000社以上が利用しているkintoneだが、第一法規が導入した当時、まだユーザーは100社程度だったという。この数字からも、いかに初期から利用していたかをうかがい知ることができる。

第一法規 業務改善推進部 杉浦 沙織氏

 さまざまな業務改善にkintoneを活用してきた同社だが、今回発表してくれたのは、採用活動におけるデータ地獄やメール地獄からの脱却だ。同社の人事部はかつて、手書きのエントリーシートを使っていた。大量の紙の管理は容易ではなく、必要な書類がすぐに見つからないなどエントリーシート地獄が広がっていた。2006年、採用活動に関する情報をデータ化して管理することになり、エントリーシート地獄から抜け出した人事部。しかし今度はデータ化作業や大量のデータに埋もれるデータ地獄へとはまりこんでいった。エントリーフォームに入力された情報を打ち直してデータ化する作業に多くの時間を奪われた。またせっかくデータ化したものの、メール送信は相変わらず1件ずつOutlookで送信していた。こちらはメールアドレスをコピー&ペーストできるようになったものの、選考結果の通知など間違いの許されない作業であり、神経を使うことには変わりなかった。

2006年、紙のエントリシートから脱却したが

「これらの手作業がなくならない限り、学生に向き合い、自社にマッチする人材を見つける時間を作れないと気づいた人事部から、業務改善推進部に相談がありました。要望は2点。点在しているエントリー情報の一元管理と、学生達へのメール配信効率化でした」(杉浦氏)

 業務改善推進部の部長はすでにkintoneの汎用性の高さを理解しており、「いずれもkintoneで改善可能」と判断、杉浦氏たちは採用活動改革に着手した。

kintoneアプリと関連サービスを連携させて地獄からの脱出に成功

 まずデータ地獄から脱却するため、学生がエントリーフォームに入力した情報をそのままkintoneアプリに読み込んでレコードを作成するようにした。Web上のエントリーフォームとkintoneとの連携に使われたのは、セゾン情報システムズ社のDataSpider Servista。データ成形などの機能を持ち、異なるシステム同士を連携させるEAIツールで、kintoneとの連携実績も多い製品だ。

DataSpider Servistaとkintoneでエントリシートを自動作成

「エントリーフォームに入力された文字データを流し込むだけではなく、顔写真も画像ファイルとして添付、印刷用のPDFも作成して添付するようにしました。Excelで管理されていたエントリー情報や顔写真のファイルなど、点在していた情報を一元化して、現在の選考段階もわかるようになりました」(杉浦氏)

 kintone化を機に手順を変更した部分もある。以前はすべての項目を入力しなければエントリーできないようになっていたが、必要最低限の情報だけでエントリーを受け付けるようにした。選考が進むに従って必要な人だけに必要なデータを追記してもらうように変更することで、エントリーのハードルを下げたのだ。選考段階が進むたびに、DataSpider Servistaを通して新たな情報を読み込み、出力用エントリーシート再出力ボタンをクリックするだけで、添付のPDFも再作成される仕組みだ。データの一元化と編集性の向上により、人事部、就活生双方の手間を省くことに成功している。

アプリ内にエントリシートボタンを埋め込んだ

 kintoneはメール地獄からの脱却にも活躍している。本文をメール送信アプリに本文を記入し、Excelに送信先のメールアドレス、氏名、送信日付などをまとめておけば、DataSpider Servistaが必要な情報を読み込んで確実にメールを送信してくれる。送信結果もレポートとして出力されるようになっており、就活生とのコミュニケーション履歴を人事部内で共有できるようになった。

「データ化、メール送信を手作業で行なっていた当時に比べて、作業時間はほぼ半減したうえ、人的ミスも大幅に削減。以前に比べて学生と向き合う時間を作れるようになったと、人事部の担当者からも喜んでもらえました」(杉浦氏)

 こうして人事部はデータ地獄、メール地獄からの脱却を果たしたのだった。どちらにもkintoneとDataSpider Servistaが活用されている。そう、セッションタイトルにある「一筋のくもの糸」とは、クラウド(雲)であるkintoneと、DataSpider(蜘蛛)をかけていたのだ。杉浦氏に座布団1枚!

蜘蛛の糸はkintoneとDataSpiderのことだった!

課題たくさん夢もたくさん、kintoneファーストで業務改善を続ける

 人事部を例に成果を発表してくれた杉浦氏だが、これは業務改善推進部が手がけた取り組みの一端に過ぎない。すでに90を超えるアプリがあり、今後も現場から業務改善の依頼があればkintoneファーストで課題解決に取り組んでいくという。また、現場でのkintoneアプリ作成を進めていきたいと杉浦氏は語った。

「社内にkintoneマスターを増やして、アプリの作成や運用、管理を現場のユーザーに委譲していきたいと考えています。そのためのkintoneアプリ作成ノウハウ講座も、社内で企画予定です」(杉浦氏)

 kintone hiveなどの勉強会に出席するたびに新しいアイデアを得られると杉浦氏は言う。課題もさくさん見つかるが、それを解決するアイデアも得られて、夢もたくさん持ち帰れると。杉浦氏が締めくくりに語ったこの言葉は、まだkintone hiveやkintone Caféに参加したことのないkintoneファンの方にぜひ伝えたい。

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