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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第526回

HPを長く牽引したAT互換機Vectraシリーズ 業界に多大な影響を与えた現存メーカー

2019年09月02日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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Vectraシリーズは売上を伸ばしていくが
社内で存在感を示せるほどの業績ではなかった

 さすがにこれだけ製品が多いとPersonal Office Computer部門だけではまかないきれず、実際Vectra Portable CSはPortable Computer部門が、Vectra PC-308はCorvallis Workstation Operationがそれぞれ担当するということになった。

 しかし、これはより事態を複雑化させることにしかならなかったようで、1987年末にPersonal Office Computer部門はSunnyvale Personal Computer部門と改称され、これにあわせてPortable Computer部門やCorvallis Workstation OperationがあつかっていたVectra PCを全部引き受ける形になった。

 その後もVectraシリーズは次々と新製品を投入していく。1988年にはもう少しまともなノートが、1989年には80386SXベースのマシンと80486ベースのマシンも追加され、どんどんラインナップを増やしていった。

 1988年末におけるSunnyvale Personal Computer部門の売上は5億ドルほどだったそうで、この数字そのものはそう悪くはないのだが、1989・1990年の売上の成長率は5%未満とやや低迷しており、それもあってか1991年には部門の名前が“California Personal Computer Division”に変更され、次いですぐに“North American Personal Computer Division”に改称されたらしいのだが、名前を壮大にすればいいというものではないと思う。

 さて、このVectraシリーズの売上はどの程度HPの業績に貢献したか? という話であるが、まず下表は1981~1990年の売上と純利益をまとめたものである。

1981~1990年の売上と純利益(単位:ドル)

 10年で売上が4倍ほどになった一方で、純利益は倍になった程度なので、やや伸びが少ないという見方もあるが、これはおいておくとして、下表がその売上の内訳である。

1981~1990年の売上内訳(単位:ドル)

 年次報告では1984年までと1985年からで分類の仕方が変わってしまったので見にくくなっているが、1984年までは下の4つに分類されており、Computer Productsが順調に売上を伸ばしていたのがわかる。

  • Computer Products
  • Electronics test and measurement
  • Medical electronic equipment and service
  • Analytical instrumentation and service

 ところが1985年からこの最初の2つが以下の4つに分解されて示されることになった。

Computer ProductsとElectronics test and measurementの分解先
分類 備考
Measurement, design, information & manufacturing equipment and systems 計測機器(ハードウェアとソフトウェア)に加え、汎用機器やコンピューター、電卓などがここに含まれる
Peripherals and network products プリンターやプロッター、磁気ディスク/テープドライブ、ターミナルおよびネットワーク機器
Service for equipment, systems and peripherals サポート/メインテナンスサービス、パーツの供給、汎用機器やコンピューター/周辺機器、ネットワーク機器
Electrical components マイクロ波関連半導体やデバイスなど

 とくにコンピューターに関して言えば、最初のMesuarement....と、3つ目のService for equipment...の両方にまたがるので、トータルとしての売上がどの程度なのかがわかりにくくなっている。

 とはいえ、たとえば1988年で言えばこの2つをあわせると56億9400万ドルほどの売上で、うちSunnyvale Personal Computer部門が5億ドルということは、おおむね9%弱といったあたり。

 無視できるほどには小さくはないが、存在感を出すには少し足りない程度のビジネス規模である。もちろんHPはこの状態を良しとしたわけではなく、ここから猛烈なテコ入れを始め(部門の名前が頻繁に変わったのもその一環だろう)、1990年代後半には全世界のPCベンダーのトップ5入り常連となるが、それは少し先の話である。

 そしてHPは別にPC互換機を、コンピュータービジネスの主軸に据えたというわけではなかった(少なくともこの時点ではであるが)。

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