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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第526回

HPを長く牽引したAT互換機Vectraシリーズ 業界に多大な影響を与えた現存メーカー

2019年09月02日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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初のAT互換機HP Vectraを投入

 このあたりを踏まえてであろうか? 初のAT互換機となったHP Vectra(型番はHP 45945A)は、ずいぶんと競争力のある製品になった。

こちらのキーボードは、上の画像と似てはいるが、カーソルキー周りが独特の11キーになっている変わり者。ファンクションキーもなにか変

 PC Magazineが発売直後にレビューを掲載しているが、“30-30-30”(IBM-PC/ATと比較して30%高速で30%小型、及び30%軽量)であり、しかも同スペックのIBM-PC/ATと比較して20%ほど低価格としている。

これはFirst Lookということでベンチマークなどはまだ行なわれていない

 価格はエントリー構成で3199ドル、フルパッケージで7210ドルとなっているが、フルパッケージはメモリー640KBにSeagateの20MB HDD、1.2MBの5.25インチFDD×2、640×400ピクセルのカラーモニターなど当時としては高価な構成を全部込みにした場合の話なので少し価格が跳ね上がっているが、IBM-PC/ATはエントリー構成で6000ドル近かったので、明らかにHP Vectraの方が廉価であった。

 またHP-150では問題となった非互換性についても、HP VectraではPhoenixの互換BIOSを搭載したことで解決している。もっとも、IBM-PC/ATに比べて性能や価格面でメリットが出せたとはいえ、これだけでマーケットシェアを握るのは難しかった。

 というのは、他の互換機メーカーも似たような構成・似たような価格で製品を投入しているわけで、こうした互換機メーカー同士の激しい争いに巻き込まれることになった。

 VectraはHPとしては珍しく、設計そのものはPersonal Office Computer部門で行なったが、コンポーネントにはサードパーティー製のものを多用し、また製造そのものも1990年代後半からは外部に委託してコストを下げたものの、競合も当然同じ方法でコストを下げてきたため、なかなか苦しい争いであった。

 それもあり、初代Vectraも翌1986年5月には価格を下げる(20MB HDD搭載モデルを5473ドル→4893ドル)などで対抗するほか、1987年には8086ベースながら低価格(1195ドル)のVectra CS(HP D1120A)や、8MHz 80286+640KB RAMを搭載する初代Vectraと同じ構成ながら低価格化(5.25インチFDD×1のみで2395ドル)を図ったVectra ESを投入して低価格方面製品を充実する。

Vectra ES。机の横のものは無関係で、机の上の本体とCRTがセットとなる。どうでもいいが、これはPCを使ったe-Learningか何かを想定した風景だろうか?

 それとともに、16~25MHzの80386と4MB RAM、ESDI HDDなどを搭載したフルタワー方のVectra RS/20(HP D1601A)や、80286ベースながらより高速なVectra ES/12(HP D1326A)、さらにはVectra CSを可搬型にしたVectra Portable CS、Vectra CSをベースに産業機器向けコントローラーとしたVectra PC-308なども同年に発表されている。

Vectra RS/20。同社初のフルタワー型ケースを搭載したハイエンド製品。ESDI HDDは最大310MBまで用意された。価格は7995ドル~とそれなり

Vectra ES/12。Vectra ESの中身を12MHzの80286+640KB RAMに入れ替えたもの。FDD+40MB HDD+VGAカードの構成で3995ドルだった

Vectra Portable CS。なかなか斬新な形状というか、たたんだ時の厚みがすごいが、それを除くと使いやすそうではある。価格はFDD×1の構成で2495ドル

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