東京リージョン開設から3カ月で500社が利用、エンタープライズのOracle DBクラウド移行を支援
Oracle Cloud、日本市場攻略の鍵は「データドリブン」と語る
2019年08月07日 07時00分更新
日本オラクルは2019年8月6日、7日の2日間、東京都品川区で「Modern Cloud Day Tokyo」を開催している。
1日目午後に開催されたプレス向けの事業戦略説明会では、今年5月の東京リージョン提供開始から3カ月間で利用社数が500社に達したことが明かされたほか、「エンタープライズフォーカス」「データドリブンビジネスの支援」といった、オラクルの強みを生かすクラウド戦略が語られた。Microsoft AzureとのパートナーシップによるAzureとの相互接続についても説明された。
東京リージョン提供開始、エンタープライズフォーカスのクラウド戦略
説明会冒頭、日本オラクル社長兼CEOのフランク・オーバーマイヤー氏は「本日のModern Cloud Dayは、日本オラクルにとってとても重要なイベントになった」と語った。およそ2年前から検討してきた日本国内へのクラウドデータセンター開設が5月に実現して以来初めての、「Oracle Cloud」を中心に据えたイベントだからだ。
同日の基調講演には、オーバーマイヤー氏だけでなく米オラクルのOracle Cloud担当幹部、さらにユーザー企業やパートナーであるトヨタ自動車、NTT西日本、リコーITソリューションズ、NTTデータ、野村総合研究所(NRI)の各社代表が登壇した。
オーバーマイヤー氏は、Oracle Cloudがエンタープライズ顧客にフォーカスしていること、その顧客の視点からクラウドを考えていること、顧客に“クラウドの選択肢”を提供していることなどをポイントとして挙げた。クラウドの選択肢については、パブリッククラウドサービスだけでなく「Oracle Cloud at Customer」などを活用したハイブリッドクラウド環境にも対応し、さらにIaaS/PaaS/SaaS/DaaS(Database-as-a-Service)をラインアップしていると強調する。
「できるだけ多くの顧客にクラウドを利用していただきたいと考えている。5月の東京リージョン提供開始以降、すでに500社にわれわれのサービスを使っていただいている」(オーバーマイヤー氏)
またエンタープライズにおいて重要視されるクラウド採用時の「非機能要件」について、米オラクル SVPのアンドリュー・サザーランド氏は、まずセキュリティ、次にコスト効率、パフォーマンス、可用性などを挙げた。オーバーマイヤー氏は、実際にOracle Cloud Infrastructure(OCI)を導入した顧客に聞いても同様であり、エンタープライズにおいてはセキュリティやパフォーマンス、スケーラビリティ、管理の容易さといったポイントがすべて確認できたうえで初めて、「クラウド導入によりビジネスをどう変えていくか」という議論に入るのが一般的だと説明する。
日本オラクル クラウド事業戦略統括の竹爪慎治氏によると、東京リージョンでは現在、IaaS、PaaSの基本的なサービスを含む35のサービスを提供開始している。またすでに発表されているとおり、2019年中に大阪リージョンも開設する。「これにより、日本国内でフルのDR(災害復旧)を担保できる体制になる」(オーバーマイヤー氏)。なおOracle CloudのSaaSについても、今後6カ月以内に東京/大阪リージョンから提供開始する計画であることが明らかにされた。
加えて竹爪氏は、他地域に先駆けて、東京リージョンで提供を開始しているサービスもあることを説明した。具体的には、国内で製造業顧客のニーズが強いHPC/GPUコンピューティングのサービスや、デジタルトランスフォーメーション(DX)を見据えたブロックチェーン基盤のサービスなどだという。
もうひとつの戦略は「データドリブン」、Oracle DBのインストールベースを狙う
先日開催された日本オラクルの「DX推進室」設立に関する記者説明会において、竹爪氏はOracle Cloudの成長戦略として「データドリブン」というキーワードを挙げていた。データを中心とした取り組みとなる企業のDXを支援するにあたり、データ利活用におけるオラクルとOracle Cloudの強みを生かしていくという考えだ。
そして実際に、ユーザー企業の多くがOracle Cloudのデータ関連サービスを利用しており、「今はオラクルが市場に出していきたい戦略と、顧客が求めているオラクルへの期待値が一致している」と竹爪氏は語る。
「東京リージョンをおよそ500社が利用していると紹介したが、だいたい80%以上が、この『データドリブン』関連のサービス利用だ。具体的には『Oracle Autonomous Database(Autonomous DB)』サービスと『Exadata Cloud Service』『Autonomous DWH Cloud』、この3つのサービスで80%以上のコンサンプションが使われている」(竹爪氏)
もちろん、オンプレミスにあるOracle DBのクラウド移行も大きなターゲットである。オーバーマイヤー氏は、国内エンタープライズの半数以上にはオンプレミスのOracle DBが入っており、これをクラウドへ移行していく明確なステップバイステップのアプローチを提示していくと語る。
「データがすべての土台になる。データがクラウドに移行すれば、アプリケーションもそれに追従してクラウド移行していくことになるだろう。現在はOracle DBのインストールベースにフォーカスしており、安全なかたちでクラウドに移行できるようお手伝いしていく」(オーバーマイヤー氏)
竹爪氏も、まずはオンプレミスのOracle DB顧客におけるクラウドへの“リフト”が大きな焦点になっていると語る。それに加えてクラウド移行後に、顧客接点のモバイル化や既存システムとのインテグレーションといった“シフト”のビジネスにも拡大していると説明した。
「もしこれ(Oracle DB顧客のクラウド移行という戦略)がうまく行けば、オラクルは日本において最も大きなクラウドプロバイダーになれるだろう。50%以上というインストールベースは非常に大きい。したがって、そのクラウド移行が明確なゴールとなっている」(オーバーマイヤー氏)
Azureとの相互接続は顧客ニーズに応えたもの、「まだ始まりにすぎない」
今年6月に米国で発表された、Oracle CloudとMicrosoft Azureの提携についても話が及んだ。
両社ではデータセンター間の相互接続(現在は北米地域のみ)のほか、両クラウドにおけるActive DirecrotyベースのID連携(シングルサインオン化)、Oracle Cloud上のOracle DBとAzure上のアプリケーションを組み合わせたシステムのサポートなどを推進する。サザーランド氏は、両社によるこの取り組みは「顧客ドリブン、マーケットドリブン」の動きだと説明した。
「顧客によっては、アプリケーションをマイクロソフト環境で開発し、それがODBC経由でOracle DBにつながっているというケースもある。それらが現在、AzureやOracle Cloudに移行しつつある。それならば、われわれがそうした動きに対応するのは自然の流れだ」(サザーランド氏)
またオーバーマイヤー氏は、クラウドベンダー間のパートナーシップは「業界にとっても大切なこと」だと述べ、マイクロソフトとのパートナーシップも「まだ始まりにすぎない。両社の顧客であるエンタープライズのニーズにより最適化していく」方針だと説明した。
なお両社のデータセンター間相互接続は、現在のところ北米地域(Oracle Cloudのバージニア州アッシュバーン・データセンターとAzure US East)のみで実現している。オーバーマイヤー氏は、意味のあるかたちで相互接続を行うためにはデータセンター間の通信遅延が小さい、つまり物理的距離が近い必要があり、まずはその要件を満たす北米でスタートしたと説明した。この取り組みは今後グローバルに展開していく計画で、日本においても年内には何らかのアナウンスをしたいと考えているが、検討事項も残っているため「現時点で具体的に確約できることはない」としている。
説明会の最後に、オーバーマイヤー氏はあらためてOracle Cloudの日本市場に対するコミットメントを強調した。
「東京リージョンの開設は“始まり”にすぎない。もちろん日本にデータセンターを持つのはすばらしいことだが、それだけですべてが完璧になるわけではない。先ほどの基調講演でトヨタ、NTT西日本、NTTデータ、リコーといった皆さんが語ってくれたような導入事例を増やし、真の価値を追求していく。さらに次のステップへと進み、クラウドを通じて日本へ貢献していきたいと考えている」(オーバーマイヤー氏)