東京/大阪データセンターも運用開始、パートナーと共に日本市場への取り組みを加速
ServiceNowが国内パートナー施策拡充、日本企業向けの布陣強化
2019年07月26日 07時00分更新
ServiceNow Japanは2019年7月25日、日本国内において「ISVプログラム」「サービスプロバイダープログラム」という2つのパートナープログラムを開始した。同時に東京/大阪データセンターからのサービス提供もスタートさせており、日本企業のニーズや商慣習に合ったサービス提供のためのエコシステム構築を進める。
同日の記者発表会にはServiceNow Japan 社長の村瀬将思氏のほか、米ServiceNowのアライアンス担当グローバルVPであるアヴァニッシュ・サハイ氏、日本でのISVプログラムに参加(または参加予定)するウイングアーク1st、ロココ、システムサポートのパートナー各社代表が出席し、国内市場におけるビジネス拡大への期待を語った。
独自開発モジュールの販売や再販方法の柔軟化など、パートナーエコシステム拡大施策
前述のとおり、今回は「ISVプログラム」「サービスプロバイダープログラム」という2つのパートナープログラムが追加された。
まずISVプログラムでは「Store」「OEM」という2つのモデルが用意されている。いずれもServiceNowが提供するクラウドプラットフォーム「Now Platform」の柔軟さを生かしたものと言える。
Storeモデルは、ISVがNow Platform上で独自開発したモジュール(アプリケーションや外部サービスとのアダプタなど)を、ServiceNowが提供するアプリストア「ServiceNow Store」で販売可能にするもの。ユーザー企業がすでに利用しているインスタンスに追加され、動作する形態となる。ISVにとっては比較的小さな開発規模(モジュール単位)で参画ができ、ServiceNowユーザー企業への販路が拡大するメリットがある。
もうひとつのOEMモデルは、ISVがNow Platformのインスタンス契約を行い、独自に開発したアプリケーションやサービスをそのインスタンス上で稼働させ、オリジナルブランドのSaaSとして販売(再販)可能にするプログラムだ。こちらでは、ISVがNow Platformを使ってオリジナルのSaaSをオリジナルブランドで提供することが可能になり、顧客企業もワンストップ窓口でサービスが受けられるメリットがある。
またサービスプロバイダープログラムは、プロバイダーがServiceNowのインスタンス契約を行い、その単一インスタンスをドメイン分割して、複数のユーザー企業にマルチテナント型でSaaSを販売(再販)可能にするプログラムだ。こちらも独自ブランドでの提供が可能だが、上述したOEMモデルとは異なり、ここでユーザー企業に再販するサービスはServiceNowがSaaS提供している各種サービスである(一部制限あり)。
これにより、サービスプロバイダーは特に小規模ユーザーへの販売加速が容易になる。またユーザー企業への対応窓口が一本化されるため、ユーザー企業にもメリットがある。村瀬氏は、日本市場ではIT運用をパートナーに任せている企業が多く、そうした企業ではなるべくワンストップでサービスを受けたいというニーズが強いため、「日本市場では一番このモデルが合っていると思う」と述べた。
なお同日には、ServiceNowとして国内初となる東京/大阪データセンターの運用開始も発表された。昨年(2018年)10月に発表していたとおり、NTTコミュニケーションズのデータセンターサービス「Nexcenter」を採用しており、データベースの遠隔レプリケーションを行うServiceNow独自のHAアーキテクチャ(AHA:Advanced High-Availability Architecture)によって、ユーザーのデータが保護される。
日本データセンター開設に伴い、ServiceNowのSaaS/PaaSユーザー企業は国内データセンターにデータを保管できるようになる。また、国内からのアクセスに対するレイテンシなども改善が期待できる。
従来から訴えてきた「パートナー戦略の重要性」をより強化していく
村瀬氏は、ServiceNowが日本市場に上陸してから5年強が経過し、日本市場の顧客やパートナーからは「日本独自の商慣習への対応」など多くの要望を受けてきたことを説明。村瀬氏が3年前の社長就任時から訴えてきた、日本市場における「パートナー戦略」の重要性について米本社の理解と支援を得ることができたため、今回のパートナープログラムや国内データセンターが実現したと述べた。
「ServiceNow Japanでは大手企業から中小企業まで、ハイタッチセールスによる直販やパートナー販売も展開してきたが、日本市場は(それだけでカバーするには)あまりに広い。今回の発表を通じてパートナーエコシステムをさらに拡大し、より広範なカバレッジとしていく」(村瀬氏)
またアライアンス担当幹部のサハイ氏は、グローバルでもパートナー戦略が順調に推移していることに触れ、たとえば2019年上期にはServiceNow Storeで552のアプリケーションが提供されており、Storeを利用するアカウント数はServiceNowユーザー全体(約6000アカウント)の3分の2以上を占める4344アカウント、インストール回数は1万2500回に及んでいると紹介した。
またサービスプロバイダー戦略についても、市場ではマネージドサービスや“as-a-Service”の利用モデルが普及しつつあり、グローバルの同市場が2023年までに約3000億ドル規模まで拡大すると見込まれていることから、その成長に大きな期待を持っていると語った。
またゲスト出席したISVパートナー3社は、今回のISVプログラムとNow Platformを活用して2019年内に提供開始予定の各社アプリケーション/ソリューションを紹介した。これらはServiceNowが10月に東京で開催するプライベートイベント「Now at Work Tokyo」でデモ展示される予定。
ウイングアーク1st 代表取締役社長の田中潤氏は、ServiceNowに独自帳票の出力機能を組み込む「SVF Cloud for ServiceNow」を紹介した。日本企業では自社独自の帳票開発を行うケースが多いが、このサービスを利用することで、ユーザー企業がSVFで開発した独自デザインの帳票をServiceNowのアプリケーションから出力できるようになるという。
自社開発のHRソリューションなどを展開するロココ 常務取締役の長谷川正人氏は、NowPlatformを活用して複数のHRソリューションを展開していく構想を明らかにした。第一弾は、ServiceNowが提供する「ServiceNow 人事サービスデリバリ(HRSD:HRSD)」に、日本市場向けのカスタマイズ機能を追加した「人事申請ワークフローパッケージ」を提供する。その後、自社開発の各種HRソリューション(目標管理、研修管理、タレントマネジメント、勤怠管理など)も順次展開していく計画だと説明した。
ServiceNowの機能を補完する“コンポーネントベンダー”のシステムサポート(STS) 専務取締役の能登満氏は、第一弾製品としてServiceNowのログを集約/分析するアプリケーションの提供を計画していると説明した。ServiceNowでは、標準機能としてシステムログ、メールログ、イベントログなどさまざまなログを保持する仕組みとなっているが、それぞれが分散しており、保持期間や保持方法も統一されていないため、それらを集約し分析可能にする。特に大規模企業のコンプライアンス/監査目的でのニーズがあると語った。