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働く人のパフォーマンスと幸せ、顧客満足度のすべてを高め「世界最高峰のSOC」を目指すために

「つまらないSOC業務」からの脱却、NTTセキュリティ“5つのSOC改革”を聞く

2019年08月02日 07時00分更新

文● 谷崎朋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp 写真● 曽根田元

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勤務形態改革:業務シフトを完全自由化、個々人の好きな働き方を尊重

 勤務形態改革では、個々人の業務シフトを「完全に」自由化した。24時間365日稼働するSOCはシフト制勤務であり、深夜や休日の勤務も必要だが、機密性の高い情報を扱うためリモートワークは難しい。そこで、せめて勤務日や時間帯は個々人が自由に設定できるように、メンバーからリーダーにシフト希望を提出するかたちとした。

 家族に合わせたスケジュールで働きたい人、人の少ない平日に休むために土日に働きたい人、夜のほうが仕事がはかどる人、ふつうに朝から出社して夕方には仕事を終えたい人と、希望する働き方は人それぞれだ。メンバーそれぞれが思いどおりに働き、休むことで、最高のパフォーマンスを発揮できるよう工夫したという。

働き方、休み方は人それぞれ。個々人が自由にシフト勤務できるようにした

 「急な都合でシフトを変えてほしい、旅行のため連休を取りたいといった場合は、リーダーに相談する前にメンバーどうしで調整、交換することも歓迎しています。メンバー全員が夜型だったりすれば問題も起きるでしょうが(笑)、SOCの人員数もかなり増えたので、今のところは100%、要望どおりにシフト調整できています」(阿部氏)

業務設計改革:個々人の「やりたいこと」をチームで実行する“Wants”

 業務設計ではかなりユニークな手法をとっている。「モチベーション駆動型チームビルディング」、通称“Wants”というもので、メンバーそれぞれのやりたいこと(=Wants)を軸に業務を設計している。勤務日数の2~3割はこのWants活動にあててよい。

 東京SOCでは半期に一度、阿部氏と羽田氏がメンバー全員と1対1の面談を行っている。ここで、そのメンバーが業務上やりたいと思っていること、反対につまらないと感じていることを聞き出す。そうして集めた各人のやりたいことを組織目標にひも付け、SOC全体として今期取り組んでいく「やりたいことリスト」を作成し、メンバーに公開する。各メンバーは、リストアップされたものの中で自分の興味があるWantsの活動に参加すればよい。

メンバーのやりたいこと=“Wants”を軸に業務を設計することで、モチベーション向上を図っている

 ただし、個々のメンバーがやりたい“Wants”を引き出す作業は、実はなかなか難しいのだと阿部氏は語る。

 「たいていの人は『今日1日自由だったら何をする?』と聞くと、目の前にある仕事の“Must(やらなければならないこと)”を答えます。『来週1週間自由だったら?』と聞くと、今度はふだん忙しくて手が回っていない“Should(やるべきこと)”をやると言います。でも、それらは組織としてやるべきことがほとんどで、その人が『本当にやりたいこと(Wants)』とは違うんですよね」(阿部氏)

 個人としてのWantsが出てくるのは「来月1カ月間自由だったら?」を考えるあたりからだという。そして「MustやShouldではなく、その先にある大きな何かを達成するためにはWantsが必要だと思います」と阿部氏は語る。

 Wantsのリストは全員に公開され、各チームにメンバーが集まったあとは、自発的に実行リーダー(Hub)、補佐役(Sub)、手伝うメンバー(Member)を決めて取り組みを進めていく。複数のWantsチームに所属し、自分の詳しい領域ではリーダーを務め、これから勉強したい領域ではメンバーとして参加するといったこともできる。

 阿部氏によると、「会社が定める所属部署のほうがむしろバーチャルな存在で、ふだんはWantsのチーム単位で動いています」という。それぞれが自分の「やりたいこと」を軸としてアメーバのように柔軟な組織体を構成しており、だからこそチームの一体感も生まれ、互いを尊敬し合える良好な人間関係が出来ていると語る。

自分の「やりたいこと」を軸として自発的にチームに参加する。自分の役割もチームごとに変わるので、固定化しがちな縦/横の関係も柔軟になるメリットもあるという

 ちなみにWantsのリストは毎年70件ほどになるが、個々人が本当に参加したいWantsに参加するので人数には偏りが出るという。また、すべてのチームが必ず成果を出せるわけではない。「最終的に成果が出るWantsは3分の2くらいですね。でも、それでいいんです。すべてに『成果を出せ』と言ってしまうと、それはもうWantsではなくMustですから」(阿部氏)。

 とはいえ、個々人が本当にやりたいことに取り組んでいれば成果も生まれやすい。たとえば社内用の脅威分析システムや運用改善ツールの開発、対外的な研究結果の発表など、毎年「とんでもない数の成果」(阿部氏)が上がっているという。「組織的にどうしてもやらなくてはいけないMustのものは、むしろリーダーが頭を下げてメンバーにお願いするかたちですね。そこはわざと逆転させています。そうしないと、楽しく仕事できないですよ(笑)」(阿部氏)。

 羽田氏は2017年のBlack Hat USAに参加し、独自開発のツールを発表したが、これもWantsの一環だという。「まさにモチベーション駆動の環境」だと羽田氏は言い、やりたいことをやっているので「残業するな、無理するなと言っても、気になりすぎて終わるまで帰りたくない人もいる」と笑う。

Wantsの成果(一般公開されているものの一部)。SOCアナリストとして社外に発表/情報発信するのも重要な取り組みだ

評価制度改革:独自の等級制度を構築、キャリアパスを明確に

 このWantsは、独自に設けた評価制度である「変則ミッショングレード(役割等級)制度」と連動している。この等級制度は、日本で一般的な「職能給」と米国などの「職務給」の中間的な制度だと阿部氏は説明する。SOCの組織運営に必要な「技術」と「運用」という2つの評価軸をベースに、Wantsの取り組みにおけるリーダーや補佐役といった「役割レベル」も加味される。

 Wantsにおける役割は公開されているので、誰がどの評価に該当するのかは明確だ。メンバーにとっても、将来に向けた自分のキャリアパスが設計しやすくなるという。

「年功序列になりがちな職能給はなるべく排除しようと考えた結果、こうなりました。給与は、世の中を良くしたいと頑張る人たちに報いる額を提示しています」(阿部氏)

 阿部氏は、独自制度の採用でほかの評価制度や等級制度を否定したいのではなく、同じセキュリティの仕事でも制度や働き方、キャリアパスにさまざまな選択肢があることを示したかったのだと強調する。たとえば阿部氏がNTTコミュニケーションズを退職してNTTセキュリティに転職した一方、羽田氏はNTTコミュニケーションズに籍を置きながら出向し、NTTコミュニケーションズの制度に則って働いている。これもキャリアプランの多様性を知ってもらいたいからだと語った。

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