ウルトラモバイルPC(UMPC)が8インチ時代に突入! 個人的には黒くて、小さくて、ボタンがいっぱいあるマシーンが大好物なので、むしろ6インチ、5インチと小型化していってほしいところだが、2019年8月以降にOne-Netbook、GPD、CHUWIなどが8型UMPCを相次いで発売する。いきなり大激戦区となったわけである。
今回レビューするOne-Netbook「OneMix3」は最も早くリリースされる8.4型2 in 1 UMPCで、すでに予約を開始しており、8月3日に発売される。今回は試作機を日本正規代理店のテックワンより借用したので、実機レビューをお届けしよう!
予算に応じて選べる
3モデルをラインナップ
One-Netbookが今回発売するのは、Core m3-8100Y/8GBメモリー/256GB SSDを搭載する「OneMix3」(8万9800円)、Core m3-8100Y/16GBメモリー/512GB SSDを搭載する「OneMix3S」(11万800円)、Core i7-8500Y/16GBメモリー/512GB SSDを搭載する「OneMix3Sプラチナエディション」(14万1000円)の3モデル。今回借用した「OneMix3」は最も安価なスタンダードモデルだ。
ストレージはすべてPCIe接続のSSDで、360度回転するディスプレーはゴリラガラス4でカバーされた8.4インチ液晶パネル(2560×1600ドット、358ppi)で統一。本体サイズ/重量も204×129×14.9mm/659gとまったく同じ。詳しくは後述するがインターフェースも差別化は図られていない。
外観上大きく異なるのは本体カラー。ボディー材質はすべてアルミニウム – マグネシウム合金だが、色はOneMix3がシルバー、OneMix3Sがブラック、OneMix3Sプラチナエディションがグレーを採用している。「3S」がブラックで、「3Sプラチナ」がグレーとややこしいので、購入時にはご注意いただきたい。
OneMix3シリーズを購入する際にひとつ注意点がある。全モデルがタッチ操作と、デジタイザーペンによる筆記操作に対応しているが、「OneMix3用2048段階デジタルスタイラスペン」(2800円)は別売りだ。またOneMix3シリーズ自体はMicrosoft Pen Protocol規格を採用しており、「Surfaceペン」との組み合わせで4096段階の筆圧感知機能を利用できるが、純正のデジタイザーペンは2048段階止まり。イラスト描画ソフトで繊細なタッチを表現したいのならSurfaceペンがオススメだ。
インターフェースは必要最低限
USB Type-Cは映像出力対応
OneMix3シリーズのインターフェースは、USB 3.0 Type-C(USB Power Delivery 2.0対応)×1、USB 3.0 Type-A×1、microHDMI×1、microSDメモリーカードスロット(SDXC対応)×1、3.5mmヘッドセットジャック×1が用意されている。単独で使うのなら必要最低限なインターフェースが揃っている。しかし個人的にはUSB PDに対応するUSB 3.0 Type-C端子は両側面にほしい。USB PD対応モバイルバッテリーなどで充電するときに、左右どちらにも置けたほうが便利だからだ。
なおテックワンの製品公式サイトにはUSB 3.0 Type-C端子が「DisplayPort Alternate Mode」に対応しているという記載はなかったが、対応ケーブルで外部ディスプレーと接続したら映像出力できた。販売元は保証していないが、PCに電源供給可能なUSB Type-Cディスプレーを用意すればケーブル1本で映像出力、電源供給できると思われる。
肝心カナメのキーボード
使い勝手はいかに?
UMPCといえどもキーボードの使い勝手は重要。そこで今回じっくり使ってみたのだが、正直慣れるのに数時間単位で苦労した。キーピッチは実測18.2mmが確保されており、キーとキーの間にすき間のあるアイソレーション仕様となっている。しかし、キーボードのホームポジションが中央に揃えられている点に強く違和感があったのだ。
一般的なノートPCのホームポジションは、記号キーのぶん左寄りになっているケースが多い。そのためOneMix3のホームポジションが中央揃えだとわかっていても、入力している内に列を間違えて押してしまうことがよくあった。この感覚のずれに慣れられるかどうかが、OneMix3で快適に文字入力できるかどうかの分かれ道になると思う。
一方、光学式ポインティングデバイスは予想していたよりも操作性がよかった。デフォルトではややマウスカーソルが敏感すぎるように感じたが、マウスの「ポインターオプション」で速度を遅くすれば、思い通りに操作できる。とは言え、せっかくタッチ対応ディスプレーを搭載しているので、基本は画面タッチで操作して、補助的に光学式ポインティングデバイスを活用したほうが快適だろう。
サブ機としてなら
十分なパフォーマンス
最後にOneMix3のベンチマークスコアを見てみよう。「CINEBENCH R15.0」のCPUスコアは226 cb、OpenGLスコアは31.71 fps。「CINEBENCH R20.060」のCPUスコアは551 pts。「3DMark」のTime Spyのスコアは306、Fire Strikeのスコアは766だった。
過去にレビューしたUMPCで比較すると、「Core m3-7Y30」を搭載する「GPD Pocket 2」は、CINEBENCH R15.0のCPUスコアが192 cbだったので、OneMix3は約1.18倍のパフォーマンスということになる。
性能向上が著しいのは「CrystalDiskMark」で計測したストレージ速度。eMMCを搭載するGPD Pocket 2はQ32T1シーケンシャルリードが211.3MB/s、Q32T1シーケンシャルライトが123.6MB/sだったところ、PCIe接続のSSDを搭載したOneMix3はQ32T1シーケンシャルリードが1419.9MB/s、Q32T1シーケンシャルライトが909.7MB/sと段違いの転送速度を記録した。体感速度に大きく寄与していることは間違いない。
バッテリー駆動時間については、ディスプレー輝度40%でバッテリー残量5%までの駆動時間を「BBench」で計測してみたが、5時間31分9秒と少々物足りない結果になった。長時間屋外で利用したいならUSB PD対応モバイルバッテリーを活用しよう。
最後にディスプレーの色域を、カラーキャリブレーションツール「i1 Display Pro」と色度図作成ソフト「Color AC」で計測してみたが、sRGBカバー率は92.1%、sRGB比は92.9%となった。モバイルノートPCとして平均的な色域を備えている。
スタンダードな「OneMix3」が
ベストバイなのだっ!
OneMix3シリーズのうちどれを選ぶかは本当に悩ましい。もちろん予算が許せば「OneMix3S」または「OneMix3Sプラチナエディション」を購入したいところだ。しかしUMPCで10万円超えは正直厳しい気がする。
できるだけ荷物を軽くしたいときに携行したり、飛行機や電車の狭い席などでPCワークをこなすための「サブ機」として検討しているのなら、今回レビューした「OneMix3」で十分事足りるはずだ!
と、理性では言い切りたいのだが、物欲をそそるブラック、グレーモデルを中・上位モデルに用意しているのだから、One-Netbookは商売がうまい。シルバー色のOneMix3も所有欲を満たすだけの高級感を備えているが、思い切ってカラーで選ぶのもアリなのである!!